
2月1日、ドナルド・トランプ米大統領がカナダなどに新たに25%もの関税を課す大統領令に署名すると、週明け3日には日経平均株価が一時1100円以上も下落するなど、激震が走った。だが“トランプ経済”は悪いことばかりではなさそうだ。むしろ、これを逆手に取ることができれば、いまこそ老後資金を倍増するチャンスかもしれない。
「トランプ関税」による日本へのダメージは
こころトレード研究所所長の坂本慎太郎さんは、アメリカの関税政策が日本に悪影響を与える可能性は低いと語る。
「トランプ大統領が他国に関税をかけようとしているのは、貿易赤字を減らしたいから。現状、日本はアメリカにとって貿易赤字国ではありますが、一方でアメリカからも大量にモノを輸入し、グーグルやアマゾンといったアメリカを代表する大企業のサービスを多く利用している、いわば“お得意さま”。そんな日本への関税がただちに厳しくなるとは考えにくく、株価にもそこまでの影響はないとみています。
日本では欧米型の株主還元を意識して配当金を増やすなど、利益追求をする大企業は来年度にかけて10%ずつほど業績が伸びることが予想される。それに伴い株価の上昇も期待できます」
一方で、日本からアメリカへ輸出する基幹産業は「自動車」。トランプ大統領は自動車への関税も現在の10倍の「25%前後に引き上げる」ことを示唆しているが、不安視する必要はない。

「ホンダなど日本のメーカーは、アメリカ国内でも生産しているため、たとえ関税が強化されても影響は少ないはず」(坂本さん・以下同)
コロナ禍で落ち込んだ自動車の挽回生産のほか、何より日本の自動車メーカーの持つ世界的なブランド力が劣ることはないのだ。
「今後10年ほどは毎年6~9%ほどの成長が続きそうです。中でも、すでに成長分が織り込み済みの自動車メーカー本体よりも、これから成長するであろう部品メーカーが期待できる。具体的には、自動車のワイパー部品をつくる『ミツバ』やホンダ系の車体骨格部品を手がける『エイチワン』などが注目銘柄です」
日銀が利上げに踏み切ろうとしているいま、金利上昇が追い風になる「銀行株」にも注目したい。
「アメリカの金利が高く、日本の金利が低ければ、その金利差で日本の銀行は利益を得ます。当面は1ドル140~160円で推移しそうで、かつ急激に円高に振れることもないはず。
金利上昇でもっとも利益を上げやすいメガバンクのほか、設備や機械を企業に賃貸して利益を得るリース業界にも注目したい。メガバンク系のリース企業の方が顧客の業種も幅広く、安定しています。メガバンクはすでに上がり調子になっているので、株価が下がったタイミングで買うのがよりお得です」
一方、メガバンクに引っ張られて地方銀行も上昇基調だが、事業内容が限られる地銀はメガバンクと比べてリスクが大きいことを覚えておこう。
需要が高まる可能性がある暗号資産
トランプ再登板で賑わっているのが、ビットコインをはじめとする「暗号資産(仮想通貨)」。「アメリカをビットコインの超大国にする」というトランプ大統領の発言を受け、日本でも自民党が昨年末に「暗号資産を国民経済に資する資産とするための緊急提言」を発表。今後、日本でもさらに需要が高まる可能性がある。
「暗号資産とは、実物がなく、インターネット上でデータが取引される資産のこと。『ビットコイン』『イーサリアム』『リップル』などの種類があり、その代表格がビットコイン。

実物のない“データの資産”ながら、現在ビットコインは発行枚数の上限に近づきつつある。供給が限られることで価値が上がる可能性が高いうえ、アメリカが米国債を大量発行する向きもあり、それによってドルの信用が低下すれば、“有事の金”のように、現金ではない資産のひとつとして、さらに暗号資産の価値が高まる要因になります」
ただし、暗号資産は株式以上に値動きの激しいハイリスク・ハイリターンな商品。値上がりが見込めるからといって、一度に大量投資しては、下落時に大損する可能性も高い。
「暗号資産はあくまでも分散投資の一環として、せいぜい資産の5%ほどにしておくべきです。海外の取引所もありますが、日本の大手証券会社などで相談し、ごく少額から始めるのが無難でしょう」

※女性セブン2025年3月13日号