
日本の国民食でありインバウンドでも大人気のラーメンだが、近年は原料や人件費の高騰から1杯1000円を超えるものが増え、気軽に食べられなくなってきた。そんな中、ここ数年売り上げを伸ばしてきたのが、自宅で手軽に食べられて、安いだけでなく劇的に味が進化したと評判の「チルド麺」だ。
コロナ禍以降チルド麺の市場はなんと2400億円に!
家庭で食べる「ラーメン」といえば、カップ麺や袋麺といったインスタント麺が定番だが、近年「チルド麺」を利用する人が増え、じわりじわりと売上を伸ばして存在感を増してきている。きっかけとなったのは、やはりコロナ禍での内食需要。
「チルド麺全体の市場では、長らく縮小傾向が続いていたものの、コロナ禍の2020年で内食の習慣がつき、大きく売り上げを伸ばしました」(日清食品チルド・商品開発担当の佐野正作さん)。
同社によると、その後はコロナ禍明けの反動でいったん市場が縮小したが、2023年、2024年では再び増加に転じ、現在の市場規模は2400億円に迫ると推定されている。

有名店とのコラボ商品には厳しい声も
チルド麺の中でもラーメン好きの間で注目されているのが、日清食品チルド「行列のできる店のラーメン」シリーズだ。これまでメーカーやコンビニ各社がこぞって有名店とのコラボ商品を発売してきたが、「やはり本家には勝てない」「おいしくても、店とはまったくの別物」などと、厳しい声が聞かれることも少なくなかった。ところが、このチルド麺に限っては、そうした評判を見事に払拭したようだ。
商品化に3年を費やした「天下一品」のチルド麺

このほど、全国に200店舗以上を展開する京都発祥の人気ラーメン店「天下一品」の看板メニューを再現した「天下一品 濃厚鶏白湯 2人前」が発売された。これまで「天下一品」監修の鍋つゆやインスタント麺は存在していたが、意外にもチルド麺で商品化されるのは初めて。
「お声がけしてから、3年越しで発売にこぎつけました」と前出・佐野さん(以下・同)。店の麺に極力近づけるため、新開発した中細ストレート麺を使用するなど、その再現性にとことんこだわって、ようやく商品化が実現したという。
そうして出来上がったのが、もっちりとして食べ応えのある本格的な「生麺」。このこだわりの麺こそが、インスタント麺との明らかな違いだ。さらに、その麺と合わせるのが、「天下一品」の看板メニューである「こってり」を再現したスープ。液体スープと粉末スープの2種類を組み合わせたWスープを使用することで、鶏がらや野菜などの旨味が詰まった、まるでポタージュスープのような独特な味わいを忠実に再現している。
おいしく食べるためには、店と同様、「たっぷりのお湯でゆでることが欠かせないポイント」だという。カップ麺などに比べて調理に手間がかかるという印象もあるが、そのぶん、おいしいと評判なのだ。
チャーシューやゆで卵といった具材は入っていないものの、1袋(2人分)定価650円(税別)という高いコストパフォーマンスも魅力。“具なしの素ラーメン”がブームのいま、麺とスープだけでじっくり楽しむのもアリだろう。物価高騰の時代、1食を300円台で済ませられるのは、家計にとってもありがたい。
気になる賞味期限は…
チルド麺が置かれているのは、焼きそばの麺と同じ冷蔵コーナー。生麺ゆえに賞味期限が短いと思い込んでいる人が多いようだが、日清食品チルドでは、以前は20日だったものが60日に延長されるなど、かなり日持ちするようになってきている。長期間冷蔵庫に常備できるので、保存食としても活用でき、非常時や急な食事にも対応できそうだ。
冷やし中華とも違う「冷たい」エスニックチルド麺
そのほか、これから暖かくなる季節に向けて注目のチルド麺もご紹介しよう。タイ料理の有名店「mango tree(マンゴーツリー)」監修で、ココナッツミルクのコクが感じられる「冷たいトムヤムクンのラーメン 2人前」も新登場。冷製で食べる麺といえば冷やし中華が代表格。それ以外にはあまり種類がなかったが、開発段階で社内の評判がよく、発売につながった一品だ。レモングラスの風味がきいていて、エスニック系の味わいが好きな人も納得の味になっている。

名店ならぬ銘菓「カラムーチョ」とのコラボ焼きそば
1984年に登場し、発売から40周年を迎えた湖池屋の人気スナック菓子「カラムーチョ」味の焼きそばも新たに発売された。コシのある中華麺を使用し、野菜やチキンの旨みをベースに、ローストした唐辛子やガーリックが味わい深い特製粉末ソースは、まさにカラムーチョの“辛旨い”おいしさをそのまま楽しめる。

タイパ需要!「フライパン1つ」でできるチルド麺
ラーメンなのに“フライパンひとつでできるチルド麺”も登場。カップ麺に比べればひと手間かかるチルド麺も、これなら敷居が低く感じられるほか、「洗い物が減らせる」というエコの観点からも、消費者に受け入れられやすそうだ。

“生”の麺だからこその味わいをいつでも気軽に楽しめる「チルド麺」。「お湯を注ぐだけ」「チンするだけ」の麺にはない、その本格的なおいしさをぜひ味わってみてほしい。
取材・文/堀内雅江