【学び直しで取得する“稼げる資格”】人気の「士業」は中高年から目指しても遅くない 最低限のITリテラシーがある証明となる「ITパスポート」は“比較的取得しやすい”

体力も、記憶力も衰えてはいるけれど、積み上げてきた経験は一生もの。そこに新たな「学び」を合わせれば、大きな武器になる。では、“学び直し”を実践するシニアに人気の資格は何なのか。そして、稼げる資格は何なのか──。【全3回の第2回。第1回から読む】
高年齢者雇用安定法の改正により、この4月1日から、「65才までの雇用確保」が完全義務化された。同じく4月1日から「自己都合退職者の給付制限」が見直されている。社会保険労務士の井戸美枝さんが解説する。
「これまでは、自己都合での退職の場合は“ペナルティー”として、いわゆる失業手当(雇用保険の基本手当)には、給付まで2か月かかる給付制限がありました。これが、1か月に短縮されたのです。
さらに、厚生労働省が指定する『教育訓練講座』を受けた場合は、給付制限が解除され、失業手当を受け取れるようになった。教育訓練講座には給付金もあるため、学び直しでキャリアアップしたい人にとって、大きなメリットです」
指定されている教育訓練講座は現在約1万7000種もある。難易度が低い順に「一般教育訓練」「特定一般教育訓練」「専門実践教育訓練」の3区分に分かれており、受講費用の一部が給付金として返ってくるのだ。
稼げる定番資格は「士業」と「IT」
教育訓練給付の対象になる講座は幅広い。例えば「一般」では簿記や英検、TOEICなどのほか、大型自動車の運転免許や修士、博士課程などもある。
「特定一般」では、税理士や社会保険労務士といった士業や、ファイナンシャルプランナーなどの講座も。
もっとも難易度が高いとされる「専門実践」では、介護福祉士や保育士、看護師、美容師などの専門職がある。男性には中小企業診断士など、女性には医療事務、キャリアコンサルタント、簿記が人気を集めている。
550以上の資格を持つ資格ソムリエの林雄次さんは、男女問わずシニアに特に人気が高いのは「士業」だと話す。
「社労士や行政書士などは難易度が高い分、年収は一般的に500万円ほど。ある程度の社会経験が求められるため、50〜60代が多く、40代では若すぎるくらい。中高年から目指しても、まったく遅くない職業なのです」
中でも社労士は“息の長い仕事”だと、井戸さんも言う。
「資格取得までの平均的な勉強時間は100時間以上と、“誰でもなれる”わけではありませんが、こうした人事労務系の仕事は将来的にもAIに取って代わられるものではありませんから、焦らず時間をかけて勉強してもいいでしょう」(井戸さん)
宅地建物取引士は幅広い年代の人が取得しており、最近はオンラインでできる仕事が増えているという。
「“家から出ずにできる仕事”として、副業やアルバイトにする中高年が増えている印象です」(林さん・以下同)
林さんが注目するのは、中高年からは敬遠されがちな「IT系資格」だ。“シニアはパソコンが苦手”というイメージがあるからこそ、IT系資格を持っているだけでも目を引く。
「ITに関する基礎的な知識を証明する『ITパスポート』は、経済産業省認定の国家資格ながら、多くの企業で入社前に取得をすすめられるような基本的なもので、比較的取得しやすい。どんな仕事に就く場合でも、最低限のITリテラシーがある証明になります。
また『特定一般』の対象である『基本情報技術者』『シスコ技術者認定』は、IT系企業への就職を目指すなら持っておきたい、心強い資格です」
あえて、人気の資格ではなく、人手不足の業界を狙う手もある。プレ定年専門ファイナンシャルプランナーの三原由紀さんが説明する。
「資格取得後すぐに仕事に結びつけるためには、介護ヘルパーなどにも注目。“好き”を伸ばす学びで仕事につなげるか、稼げそうと目星をつけてゼロから学ぶか、戦略も大切です」

(第3回に続く)
※女性セブン2025年4月24日号