
高校3年生の5月、ミュージカルスタジオの卒業公演に加藤は主演ではない役で出演した。見に来てくれた岩堀先生に同級生が「センターの子はすごかったでしょ?」と尋ねると、岩堀先生はこう言った。
「いちばん華があったのは諒だった」
この一言がいまも支えになっていると加藤は語る。
「コンテストは常に2番手グループで卒業公演もメインではなかったので、イワッホーの言葉が心に刺さりました。地味でイケメンでも1番手でもなく、スタジオの先生に“主役をやりたいの?”と聞かれるくらいだったぼくに、『華』という美しい言葉をつけてくれたことがすごくうれしかった。自分なりにすごくがんばってきたつもりでしたので、イワッホーの一言でそれまでの苦労が報われました」

卒業後の進路について、両親は系列大学で保育士の資格を取ることを希望した。加藤自身も芸能活動を続けられるか迷いがあった。
「それでもエンタメをあきらめきれない気持ちがあり、イワッホーの言葉に背中を押されて美術・芸術系の大学を志望し、多摩美術大学に合格できました。無事に受かって、真っ先にイワッホーに連絡しましたね」
大学でエンタメを学んだのちも端役で努力を続け、2016年の舞台『パタリロ!』で主役を任され、現在も第一線で活躍を続ける。大輪の花を咲かせた加藤をいまも勇気づけているのは恩師のあの言葉だ。
「おととし、高校の60周年記念式典を訪れたとき、イワッホーがぼくのことを“ブルーノ・マーズみたいだった”としきりに言ってくれました(笑い)。ぼくはいろんなことに自信がなく劣等感もありますが、ネガティブな気持ちが強くなったら“いちばん華があった”というイワッホーの言葉を思い出します。あの一言がぼくの鎧となっているんです」
【プロフィール】
加藤諒/1990年、静岡県生まれ。2000年、『あっぱれさんま大先生』(フジテレビ系)で芸能界デビューすると、多くのドラマや映画などに出演。初主演した2016年の舞台『パタリロ!』の再現度の高さが絶賛され、代表作に。
※女性セブン2025年4月24日号