社会

【自分の財産をみすみす盗られたいの?】杉良太郎「721億円という過去最高の被害額」を嘆く“終わらない”特殊詐欺との闘い

左から伊藤、伍代、吉原
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私は実力行使をしております

寄席では、二ツ目の桃月庵こはく、9月に真打昇進が内定している金原亭馬久、芸歴43年の橘家圓太郎、女性音曲師の柳家小春、そして、警察庁特別防犯支援官でもある吉原朝馬がトリで高座に上がった。最後の締めのあいさつは、冒頭のように席亭の杉が務めた。

杉の啓発活動は、この日の寄席だけにとどまらない。翌日は、さらなる“草の根活動”に精を出すと明かした。

「いつも対策や啓発をしているんですが『皆さん特殊詐欺に気を付けてくださいね』という、そんな言葉だけじゃ、最近はもう誰も聞いてくれないんです。だから、私は実力行使をしております。明日は、神奈川県横須賀南警察署管内の住宅を戸別訪問いたします」

大ベテランの杉が、自ら高齢者たちの自宅をアポなしの戸別訪問で回り、特殊詐欺対策を呼び掛ける。そんな驚きの事実を聞かされた観客たちは、思わず「えぇ~っ!」と、声を上げた。

「戸別訪問ってのは、並大抵のものじゃないんですよ。私がピンポンを押して、突然に現れるもんだから、『本物が我が家に来るわけない』って感じで、誰も信じてくれやしない」

そんな反応に説明を尽くして本物だと理解してもらえても、今度は「サインを50枚ぐらい頼まれちゃう。それに、特殊詐欺に気を付けてって呼び掛けると、逆に私こそが詐欺師じゃないかって怪しまれちゃうこともある。大変な活動ですよ」と、杉は冗談とも本音ともいえない口調で、とうとうと語った。

誰かがやらなきゃ

ただ、65年前。まだ歌手デビュー前の修業時代の15才のときに、盲目の歌謡学院の先生に刑務所への慰問に誘われてから、65年間も福祉活動に従事してきた。そんな杉にとっては、4年連続で特殊詐欺被害件数が増え続けて、一向に終わりが見えない深刻な社会問題を放っておくことはできない。

「私だって、好き好んで人に変な目で見られながら戸別訪問なんてしたくはないですよ。でも、誰かがやらなきゃ。今は厚労省と警察庁の対策・啓発活動をしているけど、ほかにも法務省の活動とか、まだまだ伝えなきゃいけないことがたくさんある。だから、この啓発を促す寄席も、また次の第五回もやります」(杉)

こぶしを力強く握って、そう意気込んだ。

翌日の戸別訪問では、強い風が吹く中、民家34軒と集会場を回り、36件の申込みがあった。

今年の杉は、2月に公開したアニメ映画『親鸞 人生の目的』の主人公・親鸞役で、人生初の声優も経験した。

人はなぜ生きるのか──そんな人間の根源的な問いの答えを追い求めた親鸞上人を演じた杉は、傘寿にたどり着いた今も、同様の大きなテーマを携えて、日本国民のためにと、今後も汗を流し続ける。

圧巻の話術で落語家以上に会場を盛り上げた杉
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21才ながら落語にも詳しいAKB48の伊藤
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会場では多くの観客が申込書を書いた
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落語を通じて特殊詐欺の防止も訴える杉友寄席は「第五回」へと続く
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