
オリジナルすぎる教訓に到達
「まともに会社勤めもしたことのない僕ですから、これをアドバイスなどというのは、おこがましいと思っています。ただ、僕が試行錯誤するなかで感じたこと、失敗したことをシェアすることはできるのではないか、というのがこの本です。あきらめたら、そこで終わりです。とにかく動いて、何かをつかみましょう、というメッセージを込めたつもりです」
騒動後、入江は清掃会社でアルバイトを始めた。その会社の面接で「2か月で独立する」と大風呂敷を広げたのも、入江なりの信念の表れだった。
「言葉にして相手に伝えることで明確な目標になり、必要な努力が何なのかもはっきりした。芸人時代には後輩に『ただ生活のためにバイトするな。時間があるならネタを考えたり先輩と遊ぶ時間を作った方が芸人として役に立つ』と言っていたことも脳裏にありました。もう少し伝え方を工夫すべきでしたが、結果としては言ってよかったと思っています。いまは『ピカピカ』を大きくし、全国展開するのが目標です。『根拠のない自信』も重要だと思っているんですよ」
異業種のステージに立ったカラテカ入江
もはや芸人への未練は断ち切ったのかと尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「戻りたいと思っているわけではないですが、未練がないと言ったらウソになるかもしれません。ふだん、ほとんどテレビは観ないのですが、お正月はお笑い番組をたくさんやっていて、キツかったですね。でも、芸人時代に持っていた『冠番組を持つ』とか『単独ライブを毎年やる』という目標みたいなものを、『会社の成長』に置き換えて邁進するしかないなと思っています」
そして入江は、芸能界を離れ、心穏やかになった面もあると言い添える。
「芸人の仕事は良くも悪くも嫉妬の世界。自分がヒマなのに、あいつがテレビ番組に呼ばれてる、とか考えてしまい、心が安らぐことがなかった。いまも経営で心を砕くことがたくさんありますが、嫉妬とかとは縁遠くなりました」

騒動から契約解除に至ったことは不運だったが、再起で人に恵まれたことは間違いない。入江に「あなたは運がいい」というと、自虐のツッコミが入った。
「令和元年5月1日、新しい元号が始まった日。芸能の神様を祀る神社にスーツ着て『売れますように』って参拝に行った1か月後にクビになったんですよ? 運がいいわけないじゃないですか!」