
ゴールデンウイークが明けた5月11日は母の日。最近は「コト」を贈るのも人気とあって、旅をプレゼントするのはどうだろうか? 知的な女性にぴったりな好奇心くすぐるおすすめの旅プランを、旅行ジャーナリストの村田和子さんが紹介する。旅先は、北陸新幹線開業から10年を迎えた北陸。米国の『ナショナルジオグラフィック』で2025年に行くべき場所として金沢が選出されるなど、世界的にも注目されている。
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首都圏、関西、そして中部(名古屋)からもアクセスがよく、伝統・歴史・アートの魅力満載の「北陸」。北陸新幹線開業10年を迎え、福井敦賀へ延伸し1年が経ち、JR西日本ではお得なきっぷ(北陸新幹線フリーパス)も発売されます。今回は、延伸地域「金沢~敦賀」間で知的好奇心をくすぐる女性にぴったりの旅を紹介。久しぶりに母娘ででかけるもよし、両親にプレゼントをするのもよし。もちろんひとり旅で訪れるのも「あり」ですよ。
2度目の金沢は穴場スポット「石川県立図書館」へ
まずは、伝統・歴史・アートの魅力が満載の金沢で下車。『ナショナルジオグラフィック』で紹介されたこともあり、定番スポットは混雑するところも増えてきました。そこで今回は趣向を変えて穴場スポット「石川県立図書館」へ。「なぜ図書館?」という方も見れば納得。

「思いもよらない本との出会いや体験によって、自分の人生の1ページをめくることができる場所」がコンセプトの図書館は、どこを切り取っても素晴らしく、蔵書はなんと約110万冊!「好奇心を抱く」「生き方に学ぶ」など身近でなじみ深い12テーマを切り口に、選りすぐった本をディスプレーする本棚、伝統文化や里山里海に触れられる展示、本が浮かび上がるデジタルアート「ブックリウム」など、ミュージアムのように楽しめる図書館なのです。


金沢駅からはバスで約30分、館内の見どころや地図が掲載された「見学者用ガイド」があるので、受付でもらってから見学するといいですよ。
■石川県立図書館 https://www.library.pref.ishikawa.lg.jp/
宿泊は山代温泉「界 加賀」で。五感に響く体験を
宿泊は、金沢駅から北陸新幹線で18分の加賀温泉駅で下車し、山代温泉「界 加賀」へ。かつて北大路魯山人が通った宿「白銀屋」の建物を受け継いでおり、紅殻格子が特徴的な建物は国の有形文化財です。

太い大黒柱に、水引のアートが印象的なフロント、館内には、色鮮やかな九谷焼の器や加賀友禅などがさりげなく展示され、まるで美術館のよう。

「加賀伝統工芸の間」と名付けられた客室は、九谷焼、加賀友禅、山中塗、水引など、地元金沢の4つの伝統工芸があしらわれたデザインが素敵です。茶器も九谷焼の作家が手掛けた界 加賀オリジナルのもの。



「器は料理の着物」という魯山人の哲学にならった「器と料理のマリアージュ」がテーマの食事は、加賀野菜や日本海の海の幸など、旬の食材を丁寧に調理した料理を九谷焼で提供し、舌はもちろん目にも華やか。

器の中には欠けや割れを金継ぎし、大切に使われているものも。実はスタッフが自ら金継ぎで修復してきたといい、修復の様子を見学できる「金継ぎ工房」も館内に併設されています。



九谷焼のアートパネルが華やかな温泉大浴場、毎晩スタッフの手により上演される無形民俗文化財登録の「加賀獅子」など、館内に居ながら土地の伝統や美しいものをたっぷり感じることができます。



中でも筆者が気に入ったのが、九谷焼や山中塗などの伝統工芸品の器を自分で選び、お酒とおつまみを合わせていただく「べんがらラウンジ」。

たくさんの器が並んだ様子は圧巻で、自分好みに器やおつまみを選ぶ体験はワクワクします。目の前にある「古総湯」や「総湯」など山代温泉の町並みを眺めながら、好きなものに囲まれてのんびり語らうひとときはプレイスレスな時間になります。

大人の学び旅~職人の想いに触れる体験「手業のひととき」
温泉旅館ブランド「界」では、職人の想いに触れるプログラム「手業のひととき」を各施設で実施しており、界 加賀では石川県で唯一の加賀獅子頭(かがししがしら)専門工房「知田工房(ちだこうぼう)」へ訪れる「加賀獅子頭の400年の伝統に浸り、職人と語らう工房ツアー」を開催中(2025年8月31日まで)。

工房へ訪れて職人と語らいながら作業風景を見学、自らも小さな加賀獅子頭ねつけの絵付けを体験できるというもの。全国から知田工房には、製作や修理の依頼がくるそうですが「地域によって加賀獅子頭の特長もさまざま」だといい、実際に動かし方などを説明も頂けました。界 加賀で毎晩披露される「加賀獅子舞」で使用している加賀獅子頭もこの知田工房の作品。ツアー参加者は「加賀獅子舞」の演舞を最前列で見られる特典もあります。




■界 加賀 https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaikaga/
北陸新幹線延伸1周年、終点「敦賀」って何がある?
北陸新幹線が金沢駅から福井県の敦賀駅まで延伸されて1年。「敦賀って何があるの?」という方も多いのでは? 実は明治15(1882)年には、日本海側初の線路が敷かれ、鉄道と港を有する国際的にも重要な役割を担い栄えた場所なのです。海辺にはボードウォークが設置されて、歴史に思いを馳せつつ散策もいいですし、無料公開されている「敦賀鉄道資料館」の展示は鉄道好きならずとも圧巻。「敦賀赤レンガ倉庫」は歴史を感じる建物で食事も楽しめます。




また1920年代にはポーランド孤児を、1940年代には杉原千畝の発行した「命のビザ」を持ったユダヤ難民が上陸するなど、古くから日本とヨーロッパを結ぶ玄関口だったこともあり、当時の建物を復元した資料館「人道の港 敦賀ムゼウム」では、そんな敦賀の歴史を体感できます。

日本三大木造鳥居があり、古事記にも名が記されている氣比神宮や、陰陽師の安倍晴明が修行した晴明神社などパワースポットを訪れたり、時間があれば、気比の松原へ足を伸ばすのもいいでしょう。いずれも、「宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道999」など、松本零士氏のアニメが車体に描かれた「敦賀周遊バス」が運行しているのでアクセスも便利です。

北陸新幹線延伸を機に駅前も整備され、中でも「知育・啓発施設TSURUGA BOOKS & COMMONS ちえなみき」は、カフェを備えたおしゃれな公の書店。電車の時刻まで、お茶を頂きながらのんびりとするのにもおすすめです。

■敦賀観光公式サイト~旅する港町つるが https://tsuruga-kanko.jp/
いかがでしたか? 敦賀は、北陸の金沢や福井に訪れる際に足を伸ばしてみるのもいいですし、関西からはサンダーバードと北陸新幹線の乗り換え時に立ち寄ってから向かうのもいいですよ。

◆教えてくれたのは:旅行ジャーナリスト・村田和子さん

旅行ジャーナリスト。「旅を通じて人・地域・社会が元気になる」をモットーに、旅の魅力を媒体で発信。宿のアドバイザー・講演なども行う。子どもと47都道府県を踏破した経験から「旅育メソッド(R)」を提唱、著書に「旅育BOOK~家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ(日本実業出版社・2018)」。現在は50歳を迎え、子どもも大学生となり、人生100年時代を楽しむ旅を研究中。資格に総合旅行業務取扱管理者、1級販売士、クルーズアドバイザーなど。2016年より7年間、NHKラジオ『Nらじ』月一レギュラーを
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