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【お金持ちなら知っている銀行の選び方】富裕層の多くがメガバンクを選ぶ理由、「金利」と「使いやすさ」で評価 対面営業がないネット銀行は避ける傾向 

大切なお金の預ける際に選んではいけない銀行がある(写真/PIXTA)
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ほんの数百円でも、ATMに行けば行くほど手数料が家計を圧迫し、わずか1%未満でも、金利が高いほど資産は増える。未曽有の増税・値上がりが続くいま、「銀行」には命を預けているに等しい。信頼できない銀行、損する銀行はどこか、お金持ちは当たり前に知り尽くしている。

アメリカのトランプ大統領が各国への関税引き上げを発表してから1か月あまり。経済への影響を鑑みて欧州中央銀行が6回連続の金利引き下げを行うなど、世界中に激震が走っている。

家計の見直し相談センター代表でファイナンシャルプランナーの藤川太さんは、「日本の銀行も例外ではないはず」と警鐘を鳴らす。

「銀行の経営は景気の影響をじかに受けるため、今後日本にも“お金を預けてはいけない銀行”が増える可能性はゼロではありません。

トランプ関税によって景気が悪化すれば、銀行が融資している不動産の価値が下がって不良債権化したり、貸出先の企業が倒産するなどで銀行の財務内容が悪化する可能性があります。また銀行は株式を保有しているので、株価が下がれば財務を毀損することも考えられます」(藤川さん)

経済の先行きが不透明なだけではなく、銀行に対する信頼そのものを揺るがす問題も頻発している。

昨年には三菱UFJ銀行やみずほ銀行などで行員が貸金庫から顧客の財産を盗み出す事件が発覚し、メガバンクや地銀ではシステム障害が繰り返されている。大切なお金の預け先としてどこを選べばいいのか──そのためには「選んではいけない銀行」を知っておく必要がある。

お金持ちが評価するのは「安定性」よりも「金利」と「使いやすさ」

前述の通り、近年、メガバンクや都市銀行では「システムトラブル」が相次いでいる。今年1月には三菱UFJ銀行、4月17日には八十二銀行など9つの地銀でシステムに不具合が発生した。大手銀行員が話す。

「メガバンクでもっともシステムトラブルが目立つのは、みずほ銀行じゃないでしょうか。2021年にはATMが使えなくなるなど計8回の大規模トラブルで、親会社の社長と銀行の頭取が辞任する騒ぎになりました。過去には振込や出入金ができなくなっただけでなく、二重引き落としが発生したケースもあり、システムの複雑性や担当部門と経営層で情報共有が充分されていなかったことなどが問題視されました」

それでも、トップクラスの富裕層は多くがみずほ銀行を含むメガバンクを選んでいる。その理由について、藤川さんが分析する。

富裕層の多くはメガバンクを選んでいる(写真/PIXTA)
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「ある程度の資産を持ち、マネーリテラシーが高く、きちんとお金を管理できる『お金持ち』はこまめに資産を管理するので『金利』と『使いやすさ』で銀行を評価しているのです」

各社の金利を比較すると、メガバンクは五十歩百歩。普通預金金利はいずれも0.2%、定期預金金利(1年もの)は0.275%で横並びだ。ゆうちょ銀行や地銀も、水準はほとんど変わらない。

一方、店舗を持たないネット銀行は総じて金利が高く、1年もの定期ではソニー銀行が0.45%、オリックス銀行は0.85%、さらにUI銀行は1%などと、メガバンクの3倍近い。

だが風向きはすでに変わりつつあると、ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんが言う。

「日本はマイナス金利の時代が長く、店舗の維持費や人件費がかからないネット銀行の金利の高さが光っていましたが、『金利のある時代』に突入したタイミングでは、メガバンクの金利も意外と速やかに上がり、“ネット銀行が圧倒的”とまでは言いづらくなりました」(風呂内さん)

富裕層はあまりネット銀行を好まないと指摘するのは大手銀行関係者だ。

「ネット銀行には実店舗がないため、対面営業がない。営業を通じて情報を得る富裕層は“資産に好影響を与える情報に触れたい”と、営業を好む傾向にあります」

ファイナンシャルプランナーの深野康彦さんも言う。

「トップクラスの富裕層ともなると、銀行側から営業することが多い。代々長く使ってもらうため、至れり尽くせりのサービスで囲い込んでいるのです。ただしそのサービスは、資産の多くない一般人は受けられないようなものでしょう」

ネット銀行はシニアにはデメリットが多い

また、多くの資産を持っているからこそ「手数料が高い銀行は選ばない」のもお金持ちの特徴だ。

前述の「ネット銀行を避ける」ことと併せて、たとえ資産が多くない庶民だとしても、年を重ねたら重要なポイントになる。

「シニアは『自宅の近くにATMがない銀行』『ATM手数料が高い銀行』は選んではいけません。

65才を過ぎると、銀行は主に年金の受け取りで使うことがメインとなり、死ぬまでのつきあいになる。年金の引き出しの際に使い勝手が悪かったり、いちいち手数料がかかる銀行は避けるべき。近くに自社ATMがないなら、メガバンクであっても選ばない方がいいでしょう」(深野さん)

自宅の近くにATMがない銀行や手数料が高い銀行は選んではいけない(写真/PIXTA)
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キャッシュレス化が進む中、維持管理コスト削減の観点などから、メガバンクを中心に銀行ATMの数は減少している。2021年度末の国内のATM設置台数は約18万台と、2017年に比べて約1万台が姿を消したという報道もある。

一方で、セブン銀行に代表されるコンビニ銀行のATMは増加しており、24時間、365日使えるため、現金の引き出しや振込において以前にも増して欠かせなくなった。それゆえ、コンビニATMの手数料は利便性を考える上では見落とせない。一律ではないため、掲載の表をぜひ参考にしてほしい。

110円から220円の範囲で設定されていることが多い中、三菱UFJ銀行と三井住友銀行は毎月25日と土日が、ゆうちょ銀行は土日が300円台と、条件によっては他行より高い。

ネット銀行ならコンビニのATMを使わずスマホのアプリで出入金ができ、家から出ずにお金を受け取ることができるが、シニアにとってはデメリットの方が大きい。

「ネット銀行には紙の通帳やカードがないことが多く、履歴をアプリで確認する必要があります。明細もスマホにメールで届くため、もし家族に知らせずに亡くなったら、口座情報がわからないまま、口座が凍結されてしまうこともありえます」(風呂内さん・以下同)

ネット銀行は、問い合わせに手間や時間がかかることもデメリットの1つ。

「通帳やカードの紛失、不正引き落としなどがあった際、すぐに連絡がつくことが重要です。ネット銀行は窓口がない・少ないため、緊急時用の連絡先やアプリですぐに機能を止められるかなど、トラブルを想定した手続きフローを確認しておきたい。これは実店舗のある銀行でも同様です」

「融資」の面では地方銀行にメリットも

銀行はお金を預けるだけではなく、借りる場所でもある。「ローン」や「融資」の面からみると、メガバンクやネット銀行を選ぶと損しやすい。メガバンクでは、“一般庶民”は融資を門前払いされることも多いからだ。

「メガバンクのメイン取引先は大企業を中心とした法人であるのに対し、地銀や信用金庫は中小零細企業や自営業者など、“地元”に力を入れている。そうした姿勢を好んで、日常の資金管理は地銀にしているという富裕層は少なくない」(前出・大手銀行関係者)

藤川さんが続ける。

「ネット銀行は、住宅ローンなどの金利が低い半面、審査に通るまでに時間がかかったり、設計や着工の段階で複数回に分けた支払いが発生した場合、柔軟な対応は期待できません」

その点、地方銀行や信用金庫といった規模の小さい金融機関の方がきめ細かく対応してもらえる傾向にある。地銀は営業区域外だと利用できないデメリットがある分、“地域密着型”の対応が望めるのだ。

ただし地銀は合併などによって“銀行がなくなるリスク”があるため、人によってはメガバンクよりメリットが大きい一方、その地域に住んでいなければメリットはほぼゼロに等しいため、選ばない方がいいケースもある。検討する際は全国に支店があるかどうかや、地域へのかかわり方などを調べた上で比較しよう。

住宅購入や定年後に事業を始めるなどでローンや融資を考えている場合、ゆうちょ銀行は避けた方がいいかもしれない。

「定期貯金を担保にした自動貸付サービスなどはありますが、住宅ローンの取り扱いがなく、お金を借りる可能性を考えると、メインバンクにするには使い勝手がよくない。

ゆうちょ銀行の最大のメリットは店舗数が圧倒的に多いことですが、そもそもあちこちに銀行ATMがある都市部に住んでいるなら、ゆうちょを選ぶメリットはそれほどないと言えます」(深野さん)

コンビニATM手数料一覧
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※女性セブン2025年5月8・15日号

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