社会

《ひどいケロイドが見えました》杉良太郎が後悔「被爆者のおかみさん」との対話、そして長崎で誓った「平和のために闘って死ぬ」

厚生労働省の特別健康対策監を務める杉
写真6枚

健康と命を守るために来た

長崎は杉にとって大きな意味を持つ街だと言う。

「被爆地を訪れて、自分は平和のために闘って死ぬんだと生涯の誓いを立てた」戦争や平和を考えた25才の時の長崎訪問が、その後も社会福祉に人生を捧げる揺るぎない原動力となった。だが一方で、気がかりなことも残った。

「県民性の違いなのでしょうが、広島と比べると、長崎では被爆について対外的なアピールが弱かったように感じました。ややもすると被害が軽かったような誤解を招く雰囲気があって未だに引っかかっている。奥ゆかしさがあっても、言うべきところは言わないと」

この日、杉はもう一つの“誓い”を胸に秘めていた。

「今日は長崎の人たちの健康と命を守るために来た」厚生労働省の特別健康対策監を務める杉は、2012年より肝炎予防の広報・啓発活動に従事し、近年は健康全般に関する対策活動をしている。今回はその一環として「国立病院機構 長崎医療センター」を訪問。県や医療関係者らと集まり、県民の健康意識向上を図るべく意見交換を行った。

冒頭から杉は、長崎県民の健康意識に警鐘を鳴らした。約3年前、警察庁の特別防犯対策監としての特殊詐欺対策活動で県警本部を訪問した後、県民の運動不足に衝撃を受けたという。

歩かない長崎県民

「その日は名物のちゃんぽんを食べに出かけて食後に歩いたところ、道中の坂がまぁきつくて。これだけの坂道を日常から歩いている長崎の人はどれだけ足腰が健康なのだろうと思ったんです。ところが、長崎の人は車で移動するから外を歩きたがらないというじゃないですか。なんて、もったいない! 体を動かす大切さを強く啓発すべきです」

杉の言葉を受け、県の担当者からも「都道府県別の1日あたりの歩数で長崎は男性がワースト13位、女性は33位」と、歩かない県民の実態が明かされた。また肝炎検査の伸び悩み、医療の現場からは非アルコール性脂肪肝の増加も、喫緊の課題として挙げられた。

「脂肪肝は肝硬変や肝がんの予備軍。すぐに対策しないと命を危険にさらすことになる。正しく危機意識をもってもらうためには皆さんが砦となって、強く伝えないと。全国で健康対策会議をしていますが長崎がいちばん寛容というか、甘さを感じる。もっと厳しく対処しなければ、大切な県民の命は守れません」

80才でダンス

長崎の優れた点として杉は「坂の街は天然のアスレチック。足腰を鍛えられる無料のジム」と絶賛し、歩く習慣を定着させる施策が何より必要と提言。健康長寿を実現する活動としてダンスの有効性にも触れた。

杉はダンスを通じた高齢者の健康促進にも取り組んでおり、当日は共にプロジェクトを推進する東京大学先端科学技術研究センターの宮﨑敦子特任研究員からダンスによる下肢の筋力や歩行速度向上、認知機能のアップなどが研究成果として共有された。ウイルス性肝炎治療のエキスパートで健康対策プロジェクト実行委員会・委員の八橋弘さんは、「C型肝炎の患者さんはウイルス排除後に明らかに元気を取り戻しますが、特に元気なかたに理由を聞くと、80才でダンスをされていたんです。筋肉は“第二の肝臓”ともされ、肝臓が弱ると委縮します。歩く+ダンスで筋肉を鍛えることは認知機能のみならず、肝臓にも好循環を生みますね」
とし、県として施策も考えたいと語った。

会議には県内でシニア世代にダンスを教える神田法子さんも参加し、「ダンスで体を動かすと皆さん、笑顔が弾けます。日頃から笑って免疫力を上げることは認知症予防にもなる健康習慣です」と実感を込めた。

杉は47都道府県に高齢者のダンスチームを作ることを掲げ、現在34組まで広がったが、長崎にはまだない。杉は長崎のチームが全国大会で活躍する未来図を思い描きつつ、県民全体の健康増進に期待を寄せた。