
食材費が高止まりしているいま、貴重な食材は少しも無駄にしたくないもの。「野菜の皮や芯、茎、しいたけの軸などには、栄養や旨みがたっぷり含まれています」とは、料理研究家の大友育美さん。料理上手が知るそれら“隠れ食材”を活用すれば、節約につながるだけでなくゴミも減る。しかし、普段は捨てている部分だけにどう活用すればいいかわからない――。そんな人こそ必読のテク満載で紹介する。
- 食材の端は捨てればゴミ、食べたら栄養
- 野菜・果物の皮
- 【玉ねぎの皮】煮出せばだしによし、飲んでよし、掃除にも
- 【大根の皮】厚めにむいて漬けものにすれば食感が楽しめる
- 【にんじんの皮】栄養価が高いので捨てず、丸ごと調理を定番に!
- 【みかんの皮】リラックス効果も!
- 【りんご&柿の皮】香りも楽しめる!
- 【長いもの皮】濃厚な風味がクセに!
- 【里いもの皮】食物繊維がたっぷり!
- 芯・ひげ
- 【キャベツの芯】歯応えと甘みを生かしたサラダに
- 【とうもろこしのひげ】むくみ改善や胃腸の機能を高める効果が!
- だしがら
- 【すべてのだし素材(乾物)】あらかじめ粉末にしておくと無駄がない
- 【昆布】だしがらでも栄養は豊富で旨みもしっかり出る!
- 【かつお節】水気をしっかり切ってから使うのがおいしくなるコツ
食材の端は捨てればゴミ、食べたら栄養
「野菜の皮や種、葉、茎、芯などの“食材の端っこ”部分は調理次第でおいしく食べられます」
大友さんはこう太鼓判を押す。じゃがいもやにんじん、大根の皮には栄養が豊富ということは知られており、皮をむかずそのまま食べる人が増えているが、枝豆やそら豆のさや、里いもの皮、なすのへたなど、舌触りが悪そうな部分も、調理方法を工夫すればおいしく食べられるという。
「いまは、食費も資源も無駄がないよう見直す必要がある時代。食材は“捨てる前に一度考える”ことが大切です」とは、省エネ生活研究家のアズマカナコさん。捨てる前にほかにも使えないかを考える癖がつけば、食材だけでなく、すべての日用品をいまよりもっと効率よく使いこなせるようになるという。
物価高騰のいまこそ節約に意識が向き合いやすいチャンス。本企画を参考に、始めやすい部分から挑戦してみてほしい。
※以下のレシピ内で電子レンジは600W。特記がない場合は、作りやすい分量。めんつゆは3倍濃縮を使用。
野菜・果物の皮
まずは、野菜・果物の皮の活用法を紹介する。
【玉ねぎの皮】煮出せばだしによし、飲んでよし、掃除にも
●玉ねぎ茶(アズマさん)
玉ねぎの茶色い皮適量を水に入れ、色が出るまで煮出す。
「皮には血液サラサラ効果や抗酸化作用が。味やにおいが弱いため、ほかのお茶やスープ、みそ汁に加えたりするのもおすすめ」
POINT「外側の茶色い皮は長期保存ができるので取っておき、量がたまってから活用を。底の焦げた鍋に水と玉ねぎの皮を入れて煮出し、少し置いてからこすると焦げが落ちやすくなります」
●ベジブロス(大友さん)
【1】玉ねぎの皮1個分、くず野菜(キャベツの芯、にんじんの皮、ブロッコリーの茎など)ひとつかみ、水3カップ、塩ひとつまみを鍋に入れて火にかける。
【2】煮立ったら弱火で20分煮て、こす。和洋中さまざまな料理のだしに利用できる。

【大根の皮】厚めにむいて漬けものにすれば食感が楽しめる
●大根の皮の甘酢漬け(2人前) (料理家・佐々木麻衣さん)
【1】大根の皮を1cm幅に切り、保存容器に入れる。
【2】【1】が半分浸る程度の甘酢(酢2:砂糖1で混ぜ、好みで塩少量を足す)を入れ、ふたをして冷蔵庫で半日置く。
【にんじんの皮】栄養価が高いので捨てず、丸ごと調理を定番に!
●巣ごもり目玉焼き(2人前) (佐々木さん)
【1】洗ったにんじん1本は皮ごとスライサーでスライスする。
【2】フライパンにサラダ油適量を熱し、【1】と塩ひとつまみを入れてにんじんがしんなりするまで中火で炒める。
【3】【2】を中央にまとめて卵2個を落とし、水大さじ2を加えてふたをする。中火で1~2分蒸し焼きにする。
POINT「皮をむかずに調理できますが、スライスして冷凍すれば1か月は保存できます。冷凍するとバリバリと崩れるため、凍ったままスープに入れられるなど、使い勝手がよくなりますよ」
【みかんの皮】リラックス効果も!
●干しみかんの皮(大友さん)
【1】みかんの皮は3cmほどにちぎってザルに入れ、パリッとなるまで乾燥させたら、冷蔵庫で保存。
【2】お茶に入れたり、煮込み料理のアクセントに加えたりして活用する。「みかんの皮には、胃腸の調子を整える効果も」。
【りんご&柿の皮】香りも楽しめる!
●りんご(柿)のホットワイン(大友さん)
【1】耐熱性のカップにりんごや柿の皮1個分、赤ワイン150ml、はちみつ小さじ2を入れて電子レンジで1分30秒加熱する。
【2】お好みでシナモンパウダーを加える。
【長いもの皮】濃厚な風味がクセに!
●長いもの皮のピザ(大友さん)
【1】ピザチーズ(長いもの皮と同量)をフライパンに広げ、食べやすく切った長いもの皮、塩・こしょう各適量をかけ、弱火できつね色になるまで焼く。
【2】裏返して焼く。
【里いもの皮】食物繊維がたっぷり!
●里いもの皮チップス(大友さん)
【1】里いも2個は金タワシなどで洗い、厚めに皮をむきザルに上げ、水気が切れるまで乾かす(ペーパータオルで拭いてもよい)。
【2】フライパンに5㎜ほどサラダ油を入れて中火にかけ、里いもの皮を入れたら表裏を返しながら3分ほど揚げ焼きにし、塩2つまみ、青のり小さじ1をまぶす。
芯・ひげ
次は芯・ひげの活用法を伝授。
【キャベツの芯】歯応えと甘みを生かしたサラダに
●キャベツの芯のコールスロー(2人前)(佐々木さん)
【1】キャベツ1/4個分の葉と芯を、それぞれせん切りにする。ハム2枚は1cm幅に切る。
【2】マヨネーズ大さじ3、酢小さじ2、砂糖小さじ1、塩少量をボウルに入れて混ぜ、【1】と水気を切ったホールコーン大さじ2を加えて全体を和える。
【3】塩・こしょう各少量で味を調える。「芯は水分が少ないので、シュウマイや餃子の具材にも最適。旨みが増すので活用してみてください」。
POINT「芯は硬いため、口当たりが気になりますが、細かくせん切りにするなど、切り方を工夫すればおいしく食べられます」
【とうもろこしのひげ】むくみ改善や胃腸の機能を高める効果が!
●むくみ取り茶(大友さん)
とうもろこしのひげ(緑の部分)・芯各1本分、水3カップを鍋に入れて火にかけ、煮立ったら弱火にして5分煮る。「ひげはフライパンできつね色になるまで乾煎りしてから煮出すと香ばしい味わいに」。
POINT「緑のひげはおいしく、繊維が口に残ることもありません。芯からは旨みや香りが出るので、一緒に調理をするのがおすすめ。芯は食べられないので、だしをとったら捨てましょう」
●炊き込みご飯(大友さん)
【1】とうもろこし1本は半分に切って実をはずし、ひげは茶色い部分を取り除き、緑の部分は刻む。
【2】炊飯器に洗った米2合、白だし大さじ3を入れ、目盛まで水を入れる。
【3】実・芯・ひげ各適量をのせて炊飯。炊き上がったら芯を除いて混ぜ合わせる。

だしがら
ここからはだしからの活用法を紹介する。
【すべてのだし素材(乾物)】あらかじめ粉末にしておくと無駄がない
「昆布・かつお節・いりこなどの乾物は、だしをとった後、しょうゆとみりんで甘辛く味つけして佃煮などにしてもいいですが、乾物のまま、はさみで小さく切ってからミルやフードプロセッサーで粉砕し、粉末だしとして使うと便利です。
みそ汁やスープに入れて丸ごと食べてしまえるので、だしがらが出ることもありません。しかも粉末にすることで味わいが濃くなり、栄養分も余すことなく摂れます。1回に使う量も節約できてお得。この粉末だしに、ごまや青のりなどを加えて塩で調味すれば、ふりかけにアレンジもできます」(アズマさん)

【昆布】だしがらでも栄養は豊富で旨みもしっかり出る!
●昆布炊きごはん(佐々木さん)
【1】米2合は洗い、だしをとった後の昆布1/2枚は細切りにする。
【2】炊飯器に【1】、米2合分の水、塩適量を入れ、普通炊飯で炊く。
【3】器に盛り、煎りごま少量をふる。
POINT「だしをとった後の昆布やかつお節をすぐに調理できない場合、刻んでから冷凍しておけば、必要なときに使えて便利です」
【かつお節】水気をしっかり切ってから使うのがおいしくなるコツ
●だしがら入りおにぎり(2人前)(佐々木さん)
【1】かつお節のだしがら20~30gは水気をしっかり切り、調理ばさみで細かく切る。
【2】ボウルに【1】、茶碗2杯分のご飯、しょうゆ小さじ2、天かす小さじ1を入れて混ぜ合わせ、おにぎりにする。

◆教えてくれたのは:国際中医・薬膳師・大友育美さん
料理研究家、フードコーディネーター。著書に『いたわり発酵ごはん 不調しらずの体をつくるおいしい薬膳の知恵』(マイナビ出版)など。
◆教えてくれたのは:料理家・佐々木麻衣さん
食品ロス削減コンサルタント・冷蔵庫収納スペシャリストとして、食材保存、冷蔵庫収納、冷凍貯金の講座・講演、親子で楽しめる畑の収穫体験の運営などを行う。
◆教えてくれたのは:省エネ生活研究家・アズマカナコさん
エネルギーや環境負荷の少ない暮らしを追求し実践。著書に『電気代500円。贅沢な毎日』(CEメディアハウス)、『捨てない贅沢』(けやき出版)など。
取材・文/番匠郁
※女性セブン2025年5月22日号