
誰よりも先に、お母さんに報告したかった
早見「……ところで、エースさんは、僕の本を読んだことがないですよね?」
エース「文字が多そうだなあと思って」
寺家「文字は多いかもな、小説やからな」
エース「これまで長い小説を読んだことが一回もないです。でもこれ(『アルプス席の母』)野球の話なんすよね?」
早見「高校野球が舞台になっているんですが、主人公は球児のお母さんなんですよ。大阪の高校で甲子園出場を目指す息子に、ついていく母親の話。僕のおふくろは13年前に亡くなっているんですが、そのおふくろに『こういう時、あなたならどうします?』と心の中で対話しながら書きました」

エース「ああ、それはやばいかも。僕もずっと野球をやってきましたけど、一番支えてくれていたのは、やっぱりお母さんだったんですよね。
中学時代はヤングリーグに所属していたので、いろいろとお金がかかる場面もあったんだろうと思うんですけど、僕が野球を続けられるようにと、お母さんが頑張って働いてくれていました。試合もよく見にきてくれていましたよ。2年前に亡くなったから伝えられなかったけど、本当はM-1準優勝を誰よりも先に報告したかったのは、お母さんやったな」
早見「僕も小説が売れるようになったのは、おふくろが亡くなってからでした」
エース「マジで今、読んでみたいと思いました。ちょっと買いに行きます」
早見「この対談の裏テーマは『エースさんに“小説を読んでみたい”と思ってもらうこと』だったので、ひとまず成功です(笑)」
取材・文/塚田智恵美
撮影/玉井美世子
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■バッテリィズ
エース(1994年11月生まれ、大阪府出身)と寺家(じけ/1990年8月生まれ、三重県出身)によるお笑いコンビ。NSC大阪36期。2017年10月15日結成。エースがピッチャー、寺家がキャッチャーとして、同じ草野球チームでバッテリーを組んでいたことからバッテリィズというコンビ名に。『M-1グランプリ2024』で決勝に初進出し、準優勝。
■早見和真(はやみ・かずまさ)
1977年7月生まれ、神奈川県出身。桐蔭学園高校時代に硬式野球部に所属。大学在学中からライターとして活躍し、2008年『ひゃくはち』で小説デビュー。2014年刊行の『イノセント・デイズ』で日本推理作家協会賞、2019年の『ザ・ロイヤルファミリー』でJRA賞馬事文化賞と山本周五郎賞を受賞。
『アルプス席の母』早見和真・著/小学館/1870円
本屋大賞2位! 神奈川で看護師をしながら一人息子の航太郎を育てる秋山菜々子。湘南のシニアリーグで活躍する航太郎には関東一円からスカウトが来ていたが、選び取ったのはとある大阪の新興校だった。不慣れな土地での暮らし、厳しい父母会の掟、激痩せしていく息子……。果たしてふたりの夢は叶うのか!? 補欠球児の青春を描いたデビュー作『ひゃくはち』から15年、著者渾身の高校野球小説。