著名人でなくとも、慎ましく暮らす人々にこそ「幸せの法則」がある。
「やっぱり家がいちばん安らぎます」
そう語るのは、静岡県在住のAさん(54才)。定年退職した夫とともに自宅の「庭いじり」に勤しむ毎日だ。
「子供が独立したので遊び道具などを入れていた物置を撤去し、そのスペースにホームセンターで購入した椅子やテーブルを置き、花壇などを手づくりしました。
天気がいい日は庭で食事やお茶を楽しめて、お出かけしないから交通費や外食代もかかりません。家にいるのがいちばん楽しくて、庭で食べるものがいちばんおいしいです」(Aさん)

幸せになるにはモノではなく「コト(経験)」にお金を使えとはよくいわれることだ。都内で母親と2人暮らしをする事務員のBさん(55才)は、10年ほど前に登山サークルに入って、月1〜2回の山登りを楽しむ。
「年収は320万円ほどで生活は楽ではないですが、生活費をやりくりして登山にかかる費用を捻出しています。高齢の母との2人暮らしは時々息が詰まることもありますが、山に登ると見たことのない景色を堪能できて、これまでで味わったことのない爽快感が得られます。登山を通して新たな人間関係も広がり、私にとってかけがえのないものになりました」(Bさん)
夫と子供2人で埼玉県の社宅に暮らすCさん(38才)は、1年前に思い切って中古のワンボックスカーを購入した。
「社宅では常にご近所の目にさらされ、“○○さんの旦那さんが出世するみたい”といった噂話で気が休まりません。
楽しみだった家族旅行も子供たちが大人料金になり、インバウンドでどこに行っても値段が高くなった。“だったら車を動くホテルにしよう”と考えてワンボックスカーを購入しました」(Cさん・以下同)
家族が眠れるように車内を改造し、宿泊代がかからない車中泊の旅を始めた。
「道の駅や高速道路のサービスエリアで地元の名物を食べて日帰り温泉を利用すれば、気分は温泉旅館に泊まったも同然です。費用はそれまで使っていた家族旅行やレジャー代を回してやりくりしていますが、満足度は桁違いに高い。
私は免許を持っていないので長時間運転する夫は疲れた様子ですが、“パパのおかげですてきな旅ができて幸せだよ”と子供たちに言わせて、がんばってもらっています(笑い)」

いま夢中になる人が多い「推し活」で幸福度を上げるケースもある。都内在住のDさん(46才)は、子供たちがファンだったロックバンドに夢中になった。
「テレビによく出るメジャーなバンドではないのでチケット代が安く、応援しやすいんです。以前は思春期の子供たちとわだかまりもありましたが、同じバンドを応援することでより仲よくなれたし、ファンの子たちとの交流で自分が若返った気がします。
私はそれまでコンサバな服装が好きでしたが、推しのバンドのロック調のTシャツを日常でも着るようになり、夫には“雰囲気が変わったね”と言われました」(Dさん)
自分だけの「好き」を見つけてお金をかける——これこそが幸せを買うということ。一方で、決してやってはいけないことがある。『精神科医が見つけた3つの幸福 最新科学から最高の人生をつくる方法』の著者で、精神科医の樺沢紫苑さんが語る。
「それは物欲に支配されることです。そういう人は買った瞬間に目的を達成するので、無駄な買い物が多くなります。ものを買うことで幸せは増えますが、“もの”に支配される買い物依存的になると、むしろ不幸になります」
(第3回に続く)

※女性セブン2025年5月22日号