料理・レシピ

《キウイの生産地探訪》徹底してこだわる安全でおいしいキウイの作り方 

彩りも美しいドライキウイをあしらったスイーツ
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野菜や果物の中で、食物繊維やビタミンCがずば抜けて豊富なキウイフルーツ。ニュージーランド産が世界最大のシェアを占め、中国に次ぎ第2位の輸出国である日本には、年間約11万トンが輸入されている。1904年、1人の女性校長が中国から持ち帰った種から始まった、ニュージーランドのキウイ栽培。いまでは国を挙げての一大産業にまで成長した理由は何なのか。その秘密を探るべく、現地に飛んだ。【前後編の前編】

日本からニュージーランドの北島にあるオークランドまでは飛行機で約11時間。そこからさらに国内線で1時間ほど北上したベイ・オブ・プレンティ周辺はキウイ栽培の中心地。ニュージーランドのキウイの81%は、ここで生産されている。この地域の土壌は火山性で水はけが良く、キウイフルーツの栽培に適しているのだ。

訪れたのは、リンダさんとティムさん夫妻が経営する『リリー・バンク園地』。到着するや、園地に隣接する自宅でキウイを使った料理を振る舞ってくれた。その中には、キウイのサンゴールドやルビーレッドを皮ごとスライスし乾燥させてケーキにあしらったものもあり、華やかさが食欲をそそる。

グリーンキウイに含まれる酵素がたんばく質を分解する効果も
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地形や雨の恵みをいかしたエコでサステナブルなキウイ栽培

ここでは、日本でもよく見かけるヘイワードと呼ばれるグリーンキウイのほか、果肉が黄色いサンゴールドの2種類を栽培している。園地の広さは6ha(ヘクタール)にもおよび、ニュージーランドの平均的なキウイ園地が東京ドームと同等の4haというから、いかに広大かがわかる。

ニュージーランドの北部タウランガでキウイ栽培を手掛けるリンダさんとティムさん。6haの園地に大きな実がたわわに実っている!
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訪問した日はあいにく小雨だったが、リンダさんとティムさんの園地を見下ろすように建てられた邸宅のベランダから広がる風景は、息を呑むほど美しい。夫妻はこの園地以外にも、別の地域にキウイ園地を所有しているそうだ。

自宅の眼前に防風林が立ち並び、その先にキウイ園地が広がる
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園地の周りを囲むように植えられた背の高い樹木は、キウイが傷つかないようにと防風林の役目を負っている。広大な敷地ゆえに、さぞかし散水が大変だろうと思ったが、自然の雨だけでまかなわれているそうだ。

自然の力をフル活用したエコでサステナブルな栽培法にこだわるのも、環境保全先進国のニュージーランドらしい。

キウイ園地を防風林が取り囲む。土地にゆるやかな傾斜がついていて日当たりや水はけは抜群
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キウイ生産者同士で助け合う

「病害虫が蔓延しないように細心の注意を払っていて、本当に必要な時以外、薬剤は使わない」とティムさん。残留農薬については、ニュージーランド農業省の厳密な抜き打ち検査をパスする必要があり、「定められた安全基準を満たしたものしか出荷されない」と胸を張る様子を見て、消費者としては非常に好感が持てる。

大学時代に園芸を学んだティムさんは、豊富な知識をいかして、他の生産者に育成のアドバイスを行うことも。

「いい栽培法があれば、生産者同士がお互いに教え合うんですよ」とリンダさん。

というのも、ニュージーランドで収穫されたキウイはゼスプリを通して世界中に出荷されるのだが、同社は一般的な会社とは運営が大きく異なり、リンダさんやティムさんら生産者が100%株主。ここでは生産者同士がライバル関係ではなく、“同士”なのだ。

ニュージーランドのキウイづくりでは独自のシステムとネットワークが構築されており、新品種の研究や開発、収穫前後の検査や出荷に至るまで、非常に考えられた効率的な運営がされている。栽培に関するサポートも手厚く、生産者同士が助け合って良いものを育てるという意識も、こうした運営方針から生まれるようだ。

リンダさん(左)は自ら育てたキウイをジャムにし、コンテストで何度も優勝。ティムさん(右)も味に太鼓判を押す
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“75年もの”の原木に接ぎ木しながら育てる

「キウイは原木に若い苗木を接ぎ木して、丈夫なツルを伸ばしながら育てていきます。原木は75年前に植えられたものもあり、オス木の周りに7、8本のメス木を張り巡らせ、受粉させます」(ティムさん)

ニュージーランドでは、ゴールドキウイという品種を育てていた時期があったが、2013年にPSAと呼ばれる細菌性の「かいよう病」が蔓延し、収穫が大きく落ち込んだ時があった。この出来事を機に、ニュージーランドでは病気に強くビタミンCなどの栄養価も高いサンゴールドの苗を接ぎ木して、ゴールドキウイから生産を切り替えたそうだ。

キウイは太い原木に元気な若い木を接ぎ木して育てられる
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検査にパスしたキウイだけが収穫・出荷される

たわわに実ったキウイが、いまかいまかと収穫を待っていたが、出荷のタイミングは生産者が決めるのではなく、1つの畑につき無作為に採取された96個のキウイが厳密な検査を受けてからになる。

スライスして乾かし、残った重量から糖度を測る。検査に使用したキウイは捨てることなく家畜の飼料に
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3mmの厚さにスライスされ、60℃以上の温度で6時間半かけて乾燥させたキウイの重さから糖度を測るほか、硬さや種の状態もチェック。基準に達したと判断されたらようやく収穫が許可され、出荷できる。

キウイを削り、色合いをチェック
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収穫作業はたった1日で行われる。前出のリンダさんとティムさんの園地の場合、60人が5~6チームに分かれて一気に採り入れを行う。

キウイ1個につき120~150枚の画像でチェック

収穫されたキウイは選果場へ。ベルトコンベアにのせられたキウイを、日本製の高性能カメラ4台で、1秒間に各30枚の画像を撮る。そうして撮影された計120~150枚の画像から瞬時にして大きさや状態を判断してクラス分けされ、等級ごとに色の違うシールが貼られていく。最後に熟練したスタッフのチェックも行われ、機械では判断できなかった微細なサイズ違いも見逃さない。

日本に輸出されるのは、最上級の「クラス1」に認定されたものだけ。おなじみのゼスプリシールが貼られたキウイなら、店頭でどれを手にしても、大きさや品質にほとんどばらつきがないのはそのためだ。

キウイは厳しい検査をいくつもくぐり抜け、世界中に出荷されていく
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【後編】では厳選に厳選を重ねた、キウイ新品種誕生までの25年の奮闘をお伝えします!

(後編に続く)

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