
野菜や果物の中で、食物繊維やビタミンCがずば抜けて豊富なキウイフルーツ。ニュージーランド産が世界最大のシェアを占め、中国に次ぎ第2位の輸出国である日本には、年間約11万トンが輸入されている。1904年、1人の女性校長が中国から持ち帰った種から始まった、ニュージーランドのキウイ栽培。いまでは国を挙げての一大産業にまで成長した理由は何なのか。その秘密を探るべく、現地に飛んだ。【前後編の後編。前編を読む】
いまから約120年前、中国からニュージーランドに種が渡り、現在の形に品種改良されたキウイフルーツ。マタタビ属の果実で、日本にもサルナシという名のサイズの小さい同属が原生する。キウイの仲間には複数の種類があり、色もサイズも味も多種多様。ところがニュージーランドから世界に輸出されるのは、おもに3種類。というのも、新品種の誕生に莫大な手間と時間が費やされるのだ。
ニュージーランド国営研究機関と、生産者が100%株主のゼスプリの合同出資で設立された「キウイフルーツブリーディングセンター」では、キウイの近縁種が多数栽培され、次なるニュージーランド産キウイとして売り出すべく、品種の研究が行われている。

キウイの仲間は多種多様 日本にも原生
品種改良のもととなるキウイの近縁種をいくつか見せてもらったところ、皮の表面に毛があったりなかったり。果肉の色もグリーンだったり鮮やかなオレンジだったりといろいろ。
キウイ研究の第一人者で駒沢女子大学人間健康学部の元教授・西山一朗さんが説明する。
「キウイの近縁種には、サルナシやコクワと呼ばれるものがあり、日本でも各地に自生しています。大きさは親指ほどで皮ごと食べられるものもあります。切ってみるとキウイフルーツにとてもよく似ていることから、“ベビーキウイ”や“キウイベリー”といった名前で呼ばれることもありますが、これはマタタビ属ではあっても、正確にはキウイとはまた別ものです」

おなじみの緑色の種類が多いが、中にはよく熟して甘そうなオレンジ色の品種も。それをほんの少しだけ口に入れてみたところ、予想外にもかなり辛い!! 唐辛子のハバネロ顔負けの辛さだった。

新品種誕生までに25年も
ここでは、年間3万~4万種類の新しい苗木が栽培されており、最近、店頭でよく目にするようになったルビーレッドも、もちろんここで開発された。聞けば、このルビーレッドの開発に着手したのは、いまから32年前の1993年のことだったという。
同センターの科学者エリザベス・ポポンスキーさんが、新品種開発の苦労を教えてくれた。
「種から新たな品種を作って販売が開始されるまで、約25年を要します。第一段階で23ある遺伝資源から種を作るのに5年かかり、第二段階として、その種から苗木を作るのに5年かかります。その後、実ができるまで2年かかり、さらに3年テストを行います」

そうして15年たった時点でゼスプリに詳細が送られ、消費者に受け入れられそうかや、生産者が育てられそうか、配送がうまくいくかなどのリサーチが行われる。
「その後、ゼスプリからゴーサインが出たら、品種のライセンスを取ります。そこからさらに5~7年かけて(育成の)トライアルを行うのです」(ポポンスキーさん)

第一段階で育て得た3万~4万本の苗木から次のステップに進めるのは、わずか1%。残りはすべて廃棄される。
ルビーレッドが2011年に正式に誕生するまで、3世代にわたって育てたというから、なんとも手間も時間もかかる、気の長い作業。一過性の商品では終わらせず、世界中の消費者に継続的に受け入れられ、栽培が続くことを見越して、初めて市場に出回るのだ。
なんだか毎朝のキウイが愛おしく感じられる!