《感情的にならず事実のみを伝えて》【嫌われない怒り方】を専門家が“ケース毎”に指南「頼んだ品が出てこないとき」「何度言ってもルールを守れない夫や家族に対して」

ほめたつもりがなぜか相手を不快にさせ、丁寧に注意したつもりが“文句言い”扱いされたといった経験はないだろうか? 年を重ねるうちに価値観は変化するもの。時代に取り残されず、いつまでも人に好かれるための令和版コミュニケーションスキルとは? 「嫌われない怒り方」を専門家がレクチャーする。
感情的にならず事実のみを伝える
非礼に対して叱りたい、理不尽なことをされて怒りたい、という思いは誰にでも生じる。しかし言い方次第では、こちらが責められたり、要望を聞いてもらえなかったりすることも。どう伝えればいいのか。日本メンタルアップ支援機構代表理事の大野萌子さんはこう明かす。
「感情任せに怒ったり、『私はちゃんと伝えた』などと、自分に非がないことをことさら強調するようなことはせず、商品を交換してほしいなど“要望だけを淡々と伝える”ことが、結局は問題解決のための近道になります」
長年、百貨店のお客様相談室でクレーム対応をしてきた、クレーム対応コンサルタントの川合健三さんもこう続ける。
「消費者(客)と事業者(店舗など)の関係においては、消費者の方が立場が上になりやすい。だからといって何を言ってもいいわけではありません。頭ごなしに怒鳴られるより、『××だったので調べてもらえますか?』と言われた方が『すぐにお調べいたします』と話がスムーズに進みます。これはどんな人間関係にも共通すると思います」
知らない人や子供には注意しない方が無難!?
ひと昔前までは、子供が悪さをしていたら親だけでなく、周りの大人が怒ったり叱ったりして社会のマナーを教えていたが、いまは他人の子供を叱る際、かなり注意をしなければならないという。
「たとえ悪いことをしている子供を叱っても、子供やその親に逆ギレされたり、動画に撮られて悪意ある編集をされ、SNSで拡散されたりといったことも起こりえます。明らかに自分に危害が加わりそうなら『ぶつかりそうだから気をつけてね』ぐらいなら言ってもいいと思いますが、『こら! よそ見しない』などと頭ごなしに叱るのはおすすめしません」(大野さん)
レストランなどの店舗内でマナー違反をする子供を見かけたら、直接本人や親に声掛けせずに、スタッフに告げて店側から注意してもらうのもいいだろう。
昨今は不用意な発言が思わぬトラブルを生むこともある。こちらが正しくても怒ったり叱ったりするには冷静さが必要だ。
こんなときどう叱る?《CASE1》通販で届いた品が間違っていた
【NG】「どういうこと?」「なんで?」「私、○○なんて頼んでいないわ」
【OK】「Aを注文したのですが、Bが届いたので、確認してもらえますか?」
穏やかな口調でこちらの要望を伝える

「問題点を伝えるとき、『なぜ』から入ると、どうしてもけんか腰になるのでやめた方がいい。事実を伝えつつ『教えていただけますか?』『調べてもらえますか?』と相手を思いやる言い方を心がけると◎」 (川合さん)
こんなときどう叱る?《CASE2》頼んだ品がなかなか出てこないとき
【NG】「いつまで待たせるの?」「私より遅く来たあの人は先に出ているのに」
【OK】「デザートはまだですか?」「あと何分ぐらいかかりそうですか?」
怒りをぶつけるのは逆効果。状況を告げて!

怒りを相手にぶつけても問題は解決しないばかりか、こちらに非がなくてもクレーマー扱いされることも。「『○○はまだですか?』『注文してから15分ぐらい経つのですが』など、状況を淡々と伝えるのが◎」 (大野さん)。
こんなときどう叱る?《CASE3》マウントをとる、遅刻を繰り返すなど無礼な友人に
【NG】「なんでそんなことばかり言うのよ!」「遅れるなら連絡くらいして!」
【OK】「私はこういう話、苦手だな」「時間を守ってもらえるとうれしい」
気持ちを伝えつつも同じ土俵に立たない

遅刻などの問題行動に対しては冷静に「時間を守ってほしい」と気持ちを伝え、だめなら関係性を考え直そう。「マウントをとる、悪口を言う人は無意識でやっていることが多いので、責めても不快に思われるだけ。話に乗らないことが大切」(大野さん・「」内、以下同)。
こんなときどう叱る?《CASE4》しつこいセールスや勧誘をされたとき
【NG「結構です」「う~ん…」「どこから電話番号を入手したの?」
【OK】「いりません」「娘が帰ってきたら相談します」
あいまいな回答は×!こちらの意思を明確に

「『結構です』は、イエスとノー、どちらにも解釈できます。このようなあいまいな言葉を使うと利用されるので意思を明確に示しましょう」 。逆に、相手を攻撃するようなことを言っても埒が明かないので、「いりません」とはっきり断ること。
こんなときどう叱る?《CASE5》何度言ってもルールを守れない夫や家族に
【NG】「何度言ったらわかるの?」「ちゃんとして」
【OK】「脱いだ服は表に返してから洗濯機に入れてもらえると助かるわ」
怒りをぶつけても無意味。人を動かす言い方を!

「他者に何かしてほしいときは、責めたり強要したりするのではなく、“~してもらえると助かる”と言うのがおすすめ。これなら、相手に配慮しつつ自分の意見も主張できます」(川合さん)。怒りをぶつけるのではなく、相手を動かす言い方をしよう。
こんなときどう叱る?《CASE6》悪いことをした子供や孫を叱るとき
【NG】「そこは入っちゃだめ」「ママに怒られるからやめなさい」
【OK】「そこは入っちゃいけないところだよ。こっち側を歩こうね」
だめな理由を説明し、正しい行動を教える

「子供には叱った理由を正しく伝え、どうしたらよかったのかを教えることが大切です。『ママに怒られるから』『恥ずかしいからやめなさい』などと言うと、叱られた意味をはき違え、何がいけなかったのかわからずじまいになります」 (大野さん)
◆日本メンタルアップ支援機構 代表理事・大野萌子さん
公認心理師・メンタルアップマネージャ(R)。著書『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)は51万部突破のベストセラーに。そのほか著書多数。
◆クレーム対応コンサルタント・川合健三さん
K.コム.トレード代表。34年間で2000件以上のクレーム対応に携わった元髙島屋お客様相談室長。主な著書に『クレーム対応以前の「お客様対応」 お怒り対応マニュアル』(ダイヤモンド社)など。
取材・文/鳥居優美
※女性セブン2025年6月26日号