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“安いから危険”とは限らない食品価格のからくり 「国産の鶏肉」より「タイ産の鶏肉」の安全性が評価できるケースも “高い赤卵”と“安い白卵”に品質の差はない 

食品表示の「食塩相当量」はしっかり確認しよう
スーパーに並ぶ食品は高ければ安心とも限らない(写真/PIXTA)
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終わらない値上げラッシュのなか、スーパーで買い物をする際に1円でも安いものを……と考える一方で、「安かろう悪かろう」という言葉が頭をよぎることも多いだろう。しかし、「高ければ安心」とも限らない現実もある。スーパーに並ぶ食品の価格のからくりを専門家が解き明かす。【前後編の後編。前編から読む

国産よりもタイ産鶏肉を選ぶ理由

食品は産地によっても価格が異なる。つい「国産なら安心」と考えがちだが、それが”安すぎる”なら“落とし穴”があるかもしれない。

国産鶏肉100g129円と輸入鶏肉100g89円であれば、「産地によっては輸入肉の方が安全」と加工食品ジャーナリストの中戸川貢さんは話す。

「ひとことで輸入と言っても、安全なものもあれば安全面に不安なものもあります。たとえばタイ産の鶏肉は、食品安全の基準が厳しいEUへ輸出ができるよう抗生物質や合成抗菌剤を使っていないものが多く、国産のブロイラーよりも評価できるケースも。一方で、ブラジル産や中国産はどんな薬を使って飼育しているか不透明なことが多く、品質が保証できません」

鶏肉と同様、国産豚肉100g199円と輸入豚肉100g149円、国産牛肉100g399円と輸入牛肉100g249円もどこの国からの輸入なのかが大きな鍵を握る。立命館大学生命科学部教授の久保幹さんはこう話す。

「EUの食品安全の基準は日本よりも厳しくなっているため、ほとんど同じ価格帯の牛肉であれば、実は輸入肉の方が残留農薬が少ないということもあります」

タイ産の鶏肉は抗生物質や合成抗菌剤を使っていないものが多い(写真/PIXTA)
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一方で、危険な輸入肉も存在する。食ジャーナリストの小倉正行さんが言う。

「アメリカ産の牛肉は、餌が少なくてすむように、日本では使用が禁止されている成長を早めるホルモン剤を使って育てられているものもあります。このホルモン剤は肉に残留し、健康被害を及ぼすリスクがあります」

頻繁に食べるとなると少しでも安いものを選びたくなるが、日常的に摂取するからこそ慎重に選びたい。

「国産小麦使用食パン204円と輸入小麦使用食パン157円で迷ったら、安全性で言えば国産を選びましょう。アメリカ産の小麦は発がん性リスクの恐れがある除草剤が使われることが多いと指摘されています。『国内製造』と書かれていても、これは国産小麦を使用しているわけではなく、製粉を国内で行っているというだけのことです。外国産の小麦が使用されていることも大いに想定されます」(小倉さん)

一方、同じ北海道産でも牛乳322円と牛乳215円については「はっきり違いが出るので、ここはお金のかけどころです」と中戸川さんは断言する。

「高い牛乳は、時間をかけて低温殺菌しているものが多く、これは生乳からの成分の変化が少なく口当たりがいいです。安いものの多くは高温殺菌されているため、カルシウムやたんぱく質が熱で変性してしまい、それが原因で腸が炎症を起こしお腹を壊してしまうこともあります。消費期限は短いですが、低温殺菌牛乳がおすすめです」

バター517円とマーガリン247円はバターに軍配が上がると思いきや、その常識が覆りつつある。ファイナンシャルプランナーで管理栄養士の風呂内亜矢さんが説明する。

最近はトランス脂肪酸が少ないマーガリンが増えてきている(写真/PIXTA)
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「“マーガリンはトランス脂肪酸を多く含むのでバターの方が体にいい”というのがこれまでの常識でした。しかし最近では企業努力によって、トランス脂肪酸が少ないマーガリンが増えてきています。バターは動脈硬化を招くとされる飽和脂肪酸を多く含んでいるので、ものによってはマーガリンが優勢とも言えます」

値段に差こそあれ、安全性には差がなく、安いものを買った方が圧倒的にお得な食品も少なくない。

生餃子10個入り269円と生餃子10個入り96円、ワンタン10個入り247円とワンタン10個入り118円は「安いものでもいいケースがある」食品だ。食養生アドバイザーのあるとむさんが説明する。

「どちらも安くても肉・野菜の産地がきちんと明記されており、かつ国産のものをよく目にします。添加物をほとんど使っていないものもある。“安いからダメ”と決めつけず、成分表示を確認してください」

国産大豆ひきわり納豆3パック172円と国産大豆粒納豆3パック161円は、好みに合わせて選ぶのが賢い。管理栄養士の麻生れいみさんは、こう話す、

「ひきわり納豆はビタミンKを、粒納豆は食物繊維を多く含みます。好みや用途で買い分けましょう」

ひきわり納豆は、あらかじめ大豆をくだいてから蒸すため納豆菌が増えビタミンKが多くなるという。価格の差は国産大豆を使用しているかという点にもある。アメリカ産の大豆は遺伝子組み換えであることが多いものの、日本では2023年から遺伝子組み換えの混入率が5%以下の場合は「分別生産流通管理済み」となり、あたかも分別されているかのように表記されているため注意しよう。

卵で大切なのは色より環境

納豆と同じく発酵食品のヨーグルト400g172円とヨーグルト400g150円は「この程度の価格の差であれば品質や安全性に違いはほぼない」と中戸川さんは話す。

「むしろ『高いから安心』と過信せず、人工甘味料の使用をチェックしてください。それから、ヨーグルトには原材料が生乳100%のものとそのほかの乳製品を含むものとがありますが、同じ価格なら栄養価の高い生乳100%がお得です」

赤卵334円と白卵258円は赤卵の方が高級な印象があるが、こちらも品質に差はない。

「殻の色は鶏の品種が異なるだけで、飼育されている鶏の飼料や栄養価の違いが表れているわけではありません」(風呂内さん)

飼育している鶏の飼料に農薬を使用している可能性がある(写真/PIXTA)
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大事なのは、殻の色より飼育環境だという。

「安い卵は、鶏の飼料に遺伝子組み換えの農作物を使っている可能性があります。遺伝子組み換え作物の栽培には多くの農薬を使うので、残留農薬のリスクが高まります」(中戸川さん・以下同)

手軽なたんぱく源、練り物もさまざまな価格帯のものが店頭に並んでいる。

「ちくわ3本247円とちくわ3本139円、かに風味かまぼこ10本215円とかに風味かまぼこ10本96円、これらの食品のチェックポイントは、保存料としてソルビン酸が使われているかどうか。スーパーに並んでいる大手のものはほぼ、安くても含んでいません。これは工場の衛生管理がしっかりしているから。保存料が使用されていなければ安いもので充分です」

国産大豆使用みそ431円と国産大豆使用みそ215円も添加物の有無を確認すれば安全面に差はない。

「時間をかけて天然醸造しているのか、人工的に温度を調節して短期間で作り上げる速醸法といわれる製法なのかの違いです。ただ、㎏単位100円台のような極端に安いみそは添加物表示を確認してください」(あるとむさん・以下同)

安くて安心なものもあれば、高くても安心できないものもあるのがいまの日本の食事情だ。価格は品質を見定めるひとつの指標ではあるが、絶対ではない。

「過度なパッケージや宣伝に惑わされず、原材料がシンプルでわかりやすいものを選びましょう。成分表示や産地、生産方法なども確認するのがいいでしょう」

賢い選択で健康も家計も守りたい。

「安いから危険」とは限らない食品
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低価格でも安心して食べれる食品
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(前編を読む)

※女性セブン2025年6月26日号

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