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《60才からはじめる「生きがい」》ネットを活用しアウトプット、資格や検定で視野を広げるなど達人らが実践しているコト

パソコンを見る女性
人工知能研究者の黒川伊保子さんや資格研究家・鈴木秀明さんが生きがいについて語る(写真/Photo AC)
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子供たちは独立し、仕事もひと段落して人生は新たなステージに。そこで「何か新しいことをはじめよう」と考えている中高年は多い。ひと足先に「はじめた」『女性セブン』読者の声(メールマガジン「女性セブン倶楽部」にてアンケート調査を実施)を紹介。「やりたいことがない」「退職後の夫にも聞かせたい」という人は必読!

達人の声

まずは、人工知能研究者の黒川伊保子さん、資格研究家・鈴木秀明さんがやっている「生きがい」について紹介する。

黒川伊保子さん(65才)「はじめたいことがない人へ。人の目を気にする暮らしから抜け出し、自分の“好き”を取り戻そう」

「やっと自分の時間ができたのに『やりたいことがないわ』という人は、好奇心と直感の『信号』が少し弱っているのかも。長年、人に後ろ指をさされない『正しい生き方』を追求しすぎて、『好き』を感じる信号が抑制されているのです。

この信号を取り戻すには、感じたことを言葉にする習慣をつけること。たとえば、好きなお菓子を食べたとき、『ふわふわ』『ほろ苦さがたまらない』と言ってみる。朝の光を見たら、風を感じたら、何でも言葉にしてみましょう。

口に出す、SNSに書くなど、実際にアウトプットするとより効果的です。共感してくれる人がそばにいると効果は倍増。パートナーや友人に、『これから私が何か言ったら、とりあえず共感してくれる?脳を活性化するためなの』とお願いするのも手。

感じたことを言葉にする癖をつけると、自然と自分の脳が何を喜ぶかがわかってきます。そのうちに、やりたいことが目に飛び込んでくるはず。

人類の子育ては膨大な時間や経験を要するため、単独では不可能。このため、女性は生殖本能の一環として群れから外れることを恐れます。けれど、生殖を終えた60代以降は、仲間外れになることをそう怖がらなくて大丈夫。人の目を気にする暮らしから抜け出し、自分が好きと思うことを楽しみましょう。それに、いまはネットを介して世界に仲間を見つけられる時代です。

ちなみに、やる気が出る生活習慣は『よく寝る、たんぱく質を摂る、体を動かす』の3つ。私は1日に卵を3個以上とプロテインを摂り、社交ダンスを楽しんでいます」

◆黒川伊保子

人工知能研究者、随筆家。感性研究の第一人者であり、「脳の気分」を読み解く感性アナリスト。『妻のトリセツ』(講談社+α新書)をはじめとしたトリセツシリーズ、『前向きに生きるなんてばかばかしい 脳科学で心のコリをほぐす本』(マガジンハウス)ほか著書多数。

鈴木秀明さん(43才)「学ぶ喜びは何才になっても味わえる」

「資格や検定は『仕事のために取るもの』というだけではなく、自分の視野を広げ、人生を豊かに楽しむきっかけとしても活用できるものです。

世界遺産やご当地検定、サウナや食べ物系など、日本には数え切れないほどの資格・検定試験があります。私は年間80ほどの資格・検定試験を受けていますが、その魅力は、知識や教養が深まることだけでなく、これまでまったく知らなかった世界に触れることができる点。毎回、目からウロコのような、斬新な発見があるんです。

先日、『オリジナルTシャツソムリエ検定』なる試験を受けました。ゆるい検定かなと軽く考えていたら、印刷法ごとの特徴・注意点や生地・著作権・取扱法の知識など想像以上に奥深く、その知識を得たことで、店頭に並ぶTシャツの見え方が変わりました。

旅行を兼ねて、見知らぬ地域のご当地検定試験を受けに行くことも。意外な名所や名物の発見もあって、ただの観光より深く楽しめる気がします。

合格者限定の集いを設けている検定もあるため、同好の士と出会うきっかけとなることも。知識が深まり、交友関係も広がれば、人生がますます豊かなものになりますよね。

さっぱりわからなかったことがだんだん理解できていく喜びは代えがたいもの。年だからと自分に制限をかけないでください。学ぶ喜びは、いくつになっても味わえます」

◆鈴木秀明

総合情報サイト「All About」資格ガイド、資格研究家。年間80個ペースで資格・検定試験を受け続け、現在まで取得した資格は1000を超える。メディアやテレビ出演、講演なども多数行う。著書・監修書に『すぐに稼げる!60代からでも働ける!本当に使える資格』(宝島社)など。

整理整頓・終活

年を重ね、終活を意識する中で、「片付け」にハマりミニマリスト化する人も。

「ずっとそのままにしていたピアノや大型家具の処分・買い換えをして気分を一掃しました。気力の問題なので、少しでも若いときにはじめた方がいいと思います」(64才主婦)

「退職後、録りだめた映画のビデオやDVDを見ることで、デジタルデータを整理できました」(65才無職)

「体力があるうちに少しずつ片付けてきて、正解でした。フリマサイトなどで売るもの、捨てるもの、差し上げるものを分ける作業は思った以上に疲れました」(73才主婦)

「モノの整理をすると、「無駄」と「必要」を意識するようになり、大好きなものだけが残っていくように思います。まだ道半ばですが、節約にもつながっています」(71才主婦)

服を袋に入れている
整理整頓や終活を始める人も(イラスト/かたおか朋子)
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「還暦を機に、娘から終活をすすめられましたが、三日坊主でいまに至ります。紙に書き出した方がいいのかな?」(70才パート)

「いままで大切にとってあった洋服を普段使いにしました。死んだらゴミになるのなら、自分で使い尽くしたいから」(66才無職)

「年上のいとこが急逝したことをきっかけに、自分の死を考えるように。子供や夫に迷惑がかからないよう、預貯金や株の詳細、デジタル関連の暗証番号を伝えました」(63才主婦)

自身の終活について、黒川さんが話す。

「私自身は脳が『面白い』と感じたことを優先して生きてきたので、その先の人生プランを立てたことはありませんが、唯一、残した人の労力を最小限にすることは考えています。たとえば、家族1人につき1つずつクローゼットを作り、私物はすべて各自のクローゼットに置く方式にしました。これで夫や私が死んだら、私たちのクローゼットを始末すれば終わり。

そして、私の心臓が止まったら蘇生も、延命措置も一切お断り。この2つは文書にしてあります。

実務的なところで言うと、動画配信やWi-Fiの通信費など、月々の支払いが生じるものはすべてメインのクレジットカードに集約し、『私が死んだらお財布の中のカードを即解約して』と家族に言ってあります。複数の動画配信サービスを利用し、化粧品の定期購入などをしている人は多いはず。亡くなった後もうっかり払い続けることになるので、出どころを1か所にして、家族に伝えておくのが重要です」

健康・美容

「健康がいちばん」という声も多く寄せられたが、ウオーキングやジムで体力増進に努める中、こんな強者…。

「65才でスキーをはじめ、中級コースで滑れるまでに上達しました。リフトにも乗れなかったのに! この年齢でも進歩できたことがうれしかった」(68才主婦)

「テコンドーやフラダンス、ヒップホップダンスなどに挑戦。体も軽くなり、中国やアメリカなど、いろいろな国の友達ができました」(62才その他)

「孫と息子にすすめられ、スケボーをはじめました。筋力アップしたうえに、少し体重が減りました!」(62才主婦)

「のどの筋肉を鍛えるためにカラオケに通っています。食事中にむせることもなく、声もよく出るうえ、ストレスも発散できて最高です」(65才自営業)

「死ぬまでにしたい5つのことを書き出し、いちばんやりたかった富士登山に挑戦。成功したものの体へのダメージは大きかった。若いときに登るべきでした」(66才主婦)

若い頃とはひと味違う“新たな美容”に目覚めた人も。

「加齢とともにまつげが寂しくなってきたので、「マツエク」をはじめました」(68才自営業)

「歯のホワイトニング。お金も時間もかかりますが、終活の一端と考え、少しの変化も楽しんでいます」(64才パート)

「毎日10〜15分、丁寧に歯磨きをしています。歯科医院でも褒められてうれしい!」(70才主婦)

「白髪染めに飽き飽きしてグレイヘアに挑戦したら、気持ちが楽になりました」(61才パート)

生活・心の変化

新しい生活をスタートさせた人、ライフスタイルや心持ちが変わった人の声は参考になることばかり。

「夫のリタイアに伴い、都会から淡路島へ移住。土いじりにはまったく興味がなかったのに、ドクダミやヨモギを採ってお茶にしたり、ハーブを育てるのが趣味に。植物に癒される日が来るとは、50代には想像もしませんでした」(66才自営業)

「住まいを変え、環境が変わって新鮮な気分。近所を散策し、新しいお店を開拓するのが楽しみです」(63才会社員)

「乳がんに罹患後、食事を見直した。体は食べたものでできているということを、60才になって実感。体重10kg減を維持しています」(61才会社員)

「考え方のしがらみを取り払った。上司のウケや近所の目を気にせず、嫌いな人とは距離を置くようにしたら、精神衛生上極めていいことがわかりました」(64才会社員)

右腕をあげる女性
気持ちの変化で生きやすくなった人も(イラスト/かたおか朋子)
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「年だから、家族の予定が…を言い訳にせず、やりたいと思ったら即行動に移すようにした。人生が新たにはじまった感じ」(60才主婦)

「悪口やグチを言わない。人との距離に気をつけてグイグイいかない。自分の機嫌は自分で取る。ひとりご飯、ひとり遊びを楽しむ。因業な顔にならないよう努力…。ひとりをエンジョイできる人は、人と楽しくつきあえるというのを信条に過ごしています」(72才無職)

生きがいを持ち、気負いのない「自分ファースト」で好きなことを楽しむ人生は幸せに違いない。

取材・文/佐藤有栄 イラスト/かたおか朋子

※女性セブン2025年7月3・10日号

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