料理・レシピ

《キウイが料理に変身!》本場の人気料理家が教える ニュージーランド絶品レシピ 

ニュージーランドきっての人気料理家・ マイケルさんの自宅兼レストランで
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まもなく夏休みの旅行シーズンに突入する。長引く円安で海外旅行には厳しい状況だが、渡航先の1つとしてじわじわと人気を伸ばしているのがニュージーランド。2025年3月の日本からの渡航者数は、前年同月比で約16%も増加しているのだ(ニュージーランド観光局調べ)。物価はアメリカやヨーロッパに比べてさほど高くはなく、自然が豊かで、国を挙げてオーガニック食材を推進している点でも魅力的。日本ではまだあまり知られていないニュージーランドの魅力を、北島に在住の食通に教えてもらった。(前後編の前編)

ラムにも魚にもキウイが好相性 

マイケル・ヴァン・デ・エルゼンさんは、ニュージーランドでトップ視聴率を誇る番組『The Food Truck』のシェフとして知られる、超人気の料理家。ロンドンやアイルランドでレストランを経営していた経験を持つが、「自分たちのファームを持ち、動物や作物を自ら育て、キッチンに直結させる」という思いから、すべてを投げ捨ててニュージーランドに移り住んだと話す。料理の腕前はもちろん、穏やかで楽しい人柄にもファンが多い。

マイケルさん(左)と妻のベリンダさん、愛犬のヘクターと。昨夏、子どもたちと日本を訪れて、東京、大阪、京都、広島を周遊。日本の漬物がとても気に入ったそう
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北島のオークランド近郊にある、その地区で歴史のある牧場付きの建物をリノベーションし、2人の娘たちと妻の4人で暮らしている。ダイニングキッチンから窓越しに羊や牛の放牧が見え、敷地内には野菜や果物を育てる菜園もある。

インダストリアルと木のぬくもりがミックスされた、ハイセンスなキッチン
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ここでは料理教室や農業体験ができるほか、ハイセンスな自宅に隣接するイベントスペースを貸し切って、雄大な牧場と自然を眺めながらマイケルさんの手料理を堪能することもできる。

テーブルには、この日の料理のポイントになるキウイが山盛りに
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敷地内の菜園ではバラエティー豊かな野菜や果物が 

ベリンダさんが菜園を案内してくれた
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「菜園を見に行きますか?」そう気さくに声をかけてくれたのは、マイケルさんの妻・ベリンダさん。案内されて建物に隣接する菜園に向かうと、サルサに使うという日本のほおずきに似たトマティーヨ、ビーツやパッションフルーツ、そしてビールの原料になるホップなど、珍しい野菜や果物が。南半球にあるニュージーランドはこれから冬に向かうが、ビニールハウスでは、多種多様の植物が元気に育っていた。

マイケルさんによると、この日教えてくれた料理の原材料も、キウイ以外の野菜類はすべてこのファームで採れたものだという。

畑に広がるトマティーヨはナス科の野菜。皮をむくとほおずきのよう
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ラムにキウイetc. 地産地消を組み合わせて味わう 

半屋外のおしゃれな調理場で。炙ったマグロに合わせるグリーンキウイをスライス
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「人の数より羊のほうが多い」といわれるだけあって、ニュージーランドはラム肉を多く使う。一方で、日本と同じく海に囲まれた地形から、魚介類の料理も多い。それら肉や魚を食べるとき、活躍するのが同じくニュージーランド、それも北島の特産物・キウイだ。

「キウイの酸味はたんぱく質をやわらかくしてくれる効果があるんですよ」と、マイケルさん。酸だけでなく、グリーンキウイはたんぱく質を分解する酵素の活性も高い。

以下、マイケルさんにとっておきのレシピを教えてもらった。

炙りマグロのグリーンキウイときゅうり和え

直火でマグロを片面1分ずつ焼く。焼きすぎに注意
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「日本でよく食べるマグロと、他の品種より酸味のあるグリーンキウイを組み合わせました。キウイの酸味は魚とよく合うんですよ。マグロはカツオに替えてもOK。
マグロの味をしっかり味わいたいから、味や香りを邪魔しないひまわり油を使うのがおすすめです。マグロは20分ほどキウイのタレに漬け込んでから召し上がれ」(マイケルさん・以下同)

キウイと黒酢の酸味が効いて食欲が進む
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《材料》(6~8人分)

キハダマグロ(他のマグロでも可) …300~400g グリーンキウイ…3個 きゅうり…1/2本 盛り付け用のロメインレタスの葉 (小)6~8枚 ひまわり油…大さじ1 シーソルト (フレーク)…適量

A(パクチーのみじん切り…1/2カップ  炒り白ごま…大さじ2 炒り黒ごま…大さじ2  しょうゆ…大さじ2 黒酢…大さじ1 ごま…大さじ1)

《作り方》

【1】バーベキューグリルまたは鉄板焼きプレートを火にかける。あるいは直火かガスコンロの上に焼き網を置いたり、ガスの魚焼きグリルで調理したり、熱したフライパンで代用してもよい。

【2】キハダマグロに薄くひまわり油を塗り、シーソルトで下味をつける。

【3】マグロを片面各1分ほど焼いたら火からおろして寝かせる。これにより、できるだけレアな状態を保ちながら表面に色を付ける。

【4】キウイの皮を薄くむき、1cmの角切りにする。皮をむいたきゅうりは縦半分に切る。種が大きい場合はスプーンなどで種を取り除いてから、1cmの角切りにする。

【5】【3】のマグロを2cmの角切りにし、ボウルでAと混ぜ合わせる。さらにシーソルト少量で味を調える。

【6】器にロメインレタスの葉1枚を敷き、【5】を大さじ2杯分盛り付ける。

ラム肉とサンゴールドキウイ・シャルムーララソース

「モロッコ料理をアレンジした一品。ニュージーランドではラムを使いますが、鶏むね肉など他の肉を使ってもOK。ベジタリアンなら、なすでも代用できます。ラムはキウイの入ったソースに漬け込むことで、やわらかくなる。そこがポイントです」

また、焼いたラムは、しばらく休ませるべし。「英語では“肉を座らせる”というけれど、日本では“寝かせる”っていうのは面白いね」。

キウイの入ったソースに漬け込んだラム肉
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《材料》(6人分)

ラムのランプ肉(鶏むね肉や豚肉でも可)…2~3枚(約450g。2人分150gを目安に)
キウイのシャルムーラソース〈サンゴールドキウイ…2個 玉ねぎ…1個 にんにく…4片 カレー粉…大さじ2 パプリカ粉…大さじ1 パクチーの葉…1カップ ミントの葉…1/2カップ レモン汁…1個分 フレークソルト…大さじ1〉 ひまわり油…大さじ1

《作り方》

【1】皮をむいたサンゴールドキウイと粗みじん切りにした玉ねぎ、皮をむいてつぶしたにんにく、カレー粉、パプリカ粉、刻んだパクチーの葉、刻んだミントの葉、レモン汁、フレークソルト、ひまわり油をミキサーで全体がなめらかになるまでかくはんし、シャルムーラソースを作る。脂身を取り除いたラムにソースの2/3量を塗り、1時間以上置く。

【2】オーブンを200℃に予熱する。漬け込んだラム肉を液から取り出し、ひまわり油で油通しをしてから温めておいたフライパンに並べる。両面に軽く焼き色がついたら、オーブンで焼く。

【3】ラムの温度が56℃に達したらオーブンから取り出し、軽くふたをして10分休ませる。

【4】1cm厚さに切ったラムを皿に2枚盛り、とっておいたシャルムーラソース1/3量を添える。 焼いたなすを付け合わせてもよい。

ルビーレッドキウイのシナモン風味クロスタータ

食用の花を添えて粉砂糖を振ったパイ。まるでアートのよう
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デザートは、ここ数年、日本でも人気上昇中のルビーレッドキウイを使ったタルト。レモンの約8個分(100g当たり換算)のビタミンCを含有し、抗酸化作用も高いルビーレッドは、まさに食べる美容液。甘酸っぱさが生地を引き立てる。

「例えばりんごや西洋梨でパイを作ると、果物に火を通す時間がかかるけれど、ルビーレッドの加熱時間は30分程度でOK。プラムや桃で作る場合も、同様の時間でやわらかく仕上がります」

クロスタータ生地の端を折り返し、ハケで水を塗っていく
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《材料》(6人分)

小麦粉…11/2カップ グラニュー糖…大さじ3 塩…ひとつまみ 無塩バター…150g バニラエッセンス(ピュアバニラビーンズペーストでも可) …小さじ1/2 アーモンドエキス…小さじ1 水…1/4カップ ルビーレッドキウイ…5個 レーズン…1/2カップ ブランデー…大さじ2 黒砂糖…大さじ1 シナモンパウダー…小さじ1/2 粉砂糖…大さじ1 ヨーグルトまたはマスカルポーネチーズ…お好みで

《作り方》

【1】クロスタータ生地を作る。ボウルに小麦粉、グラニュー糖、塩を入れてよく混ぜ合わせる。細かくカットした無塩バターをゆっくり加え、ひとまとめになるまで混ぜ合わせる。バニラエッセンス、アーモンドエキス、水をゆっくり加え、生地をさらに手で揉み、しっとりとまとまった状態になったら休ませておく。(※市販のパイシートで代用も可)

【2】スパイスキウイミックスを作る。レーズンをブランデーと少量のぬるま湯を混ぜた液に10分浸しておく。キウイは皮をむいてから1/4に切り、黒砂糖とシナモンパウダーで混ぜる。レーズンの水気をよく切り、キウイに混ぜる。

【3】オーブンを180℃に予熱しておく。バットにクッキングペーパーを敷き、クロスタータ生地を5mm厚さで丸く伸ばす。

【4】しっかり汁気を切った【2】をスプーンですくい、生地の縁を5cm程度残して生地の中央にのせたら、生地の端を折り返す。外側にぐるりとハケで水を塗り、粉砂糖を振りかける。オーブンに入れ、こんがりときつね色になるまで30~35分焼き、オーブンから取り出して冷ます。

【5】【4】を6等分に切り分け、粉砂糖を振った器に盛り、好みでヨーグルトやマスカルポーネチーズ適量、あれば食用花などを添える。

壮大な景色を眺めながらの料理は格別 

窓辺から見える羊たちはペット。「名前をつけてしまったので、もう食べられないの」とベリンダさんは笑う
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マイケルさんが次々と手際よく調理していく様子を眼前でしっかり観賞した後、窓の外に広がるマイケルさん所有の牧場と雄大な自然を眺めながら食事を楽しんだ。

赤く染まった楓、緑の絨毯のように眼前に広がる牧草、そしてのんびり草をはむ羊や牛…。レストランウエディングやバースデーパーティーの会場としても人気があるのも納得だ。

大きなダイニングのほか、奥にはかまどのある屋外キッチンも
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後編では、食の安全に取り組むニュージーランドならではの、お土産にも最適なおすすめの食べ物をマイケルさんらが紹介してくれます。

(後編に続く)

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