女性の“おひとりさま”に突きつけられる老後資金問題 待ち受けるのは「遺族年金の大改悪」「基礎年金の底上げによる厚生年金減額」、さらに「第3号被保険者廃止の議論」も

度重なる値上げに増税、医療保険料の負担増、そして年金の“大改悪”と、老後資金への不安はますます募るばかり。老後の暮らしをシミュレーションするうえで忘れてはいけないのが、女性の「おひとりさまリスク」の大きさだ。【全3回の第1回】
昨年末に夫を亡くし、東京都内のマンションでひとり暮らしをしている主婦のAさん(52才)がため息をつく。悩みの種は「老後資金」だ。
「5年後に定年退職を控えていた夫と一緒に老後資金の計画を立てていた矢先、夫が心筋梗塞で亡くなってしまいました。手術や葬儀の出費が大きかったので、貯蓄もかなり減ってしまいました。退職金や年金といった収入が大きく変わり、夫とふたりで立てていた計画はふりだしに。これから自分が死ぬまでの間、生活費が足りるのか、途方に暮れています」
これは決して珍しいケースではない。そもそも、女性87.14才、男性81.09才という平均寿命から見ても、女性と男性の寿命には「6年」の差がある。結婚せず生涯ひとりで生きることを選んだなら老後資金の設計もめどが立つが、Aさんのように突然の病気や事故といった想定外の事態のほか、熟年離婚を経て「おひとりさま」になる女性も少なくない。

夫を失った女性の暮らしを支える1つの柱であるはずの「遺族年金」は、今年5月末に“大改悪”が加わることが決定した。2028年4月の支給分から段階的に実施され、平成元年4月2日以降生まれで夫の死亡時に子供がいない場合、従来は「終身」で受け取れていたのが「5年で打ち切り」になる。
5年後には再び財政検証が行われ、専業主婦を対象とした「第3号被保険者」の廃止に向けた議論がされることも報じられている。プレ定年専門ファイナンシャルプランナーの三原由紀さんが言う。
「第3号が廃止された場合、問題は受け取る年金額ではなく、納める年金保険料です。第3号がなくなると、その分主婦が自分で国民年金保険料を納めなければならなくなる。今年度の基準では月1万7510円なので、20才から60才までの40年分とすると総額約840万円にもなる。家計の負担が増えるのは間違いありません」
さらに、6月13日には「基礎年金の底上げ」を盛り込んだ改革法が成立したが、すでに年金を受給している人や受給が近い世代にとってはむしろ大損。底上げした基礎年金の財源は「厚生年金」のため、女性は現在67才以上、男性は現在63才以上の人は、年金受給額は最大20万円近くも損することになる。
老後ひとりで生きるならいくら必要なのか。貯蓄や年金だけで足りるのか、そして足りなければどうやってそのお金をつくればいいのか──「おひとりさま貧乏」で過ごすことにならないよう、本当の「目標金額」を知っておこう。
(第2回に続く)
※女性セブン2025年7月17日号