
暑い日が続くと、ついつい冷たい食べ物を選んでしまう。そこで、体を温め、夏の冷えに負けないためには何を食べればいいのか。管理栄養士の菊池真由子さんが解説する。
体温+1℃を目指す食材選び
「まずおすすめは、カレーやキムチなど、唐辛子を使った料理です。
唐辛子は末端の血行をよくしてくれるスパイス。辛いものを食べると汗をかくのは、一時的に体温が上がり、末端まで温かさが行き渡るためなんですね。
だからといって、辛ければ辛いほどいいわけではなく、“いつもよりちょっと辛い”くらいが、体が温まりやすい。甘口のカレーを中辛にするなど、一段階レベルを上げる程度でOKです」(菊池さん・以下同)
薄着になることで、ダイエットを始める人もいるかもしれないが、夏のダイエットは要注意。
「ダイエットで低カロリーのものばかりを食べると、体温は上がりにくいため、やせたい人も栄養価の高いものを摂りましょう」
おすすめは、たんぱく質が豊富な「卵」だ。
「たんぱく質は、糖質や脂質よりも熱産生の割合が高い。卵には糖質や脂質を分解するビタミンB1やB2をはじめとするビタミンB群も豊富です。
暑いとそうめんやざるそばだけで済ませるかたも多いですが、糖質だけだとそのまま余分なカロリーとなってお腹まわりについてしまいます。外食時に麺類を頼むときは卵を追加して月見にするなど工夫すれば、カロリーが発散されます。治療を受けているかたを除き、卵は1日1個程度ならコレステロールの心配もありません」
肉類も積極的に摂ることが大切だ。
「面倒なら、市販のサラダチキンや、ちくわ、かまぼこでもたんぱく質が摂れます」
すでに夏バテ気味という人には甘酒がおすすめだ。
「温活に最適の発酵食品で、疲労回復にもいい。市販の甘酒におろししょうがを混ぜれば、保温効果も上がります。甘酒は夏の季語ですから、本来は夏の飲み物。冷たいまま飲んでも大丈夫ですよ」
体を冷やす夏食材の中でも、モロヘイヤは安心と、菊池さんは太鼓判を押す。
「末端の血行を促すビタミンEが豊富で、食物繊維も多い。ヌルヌルの正体である『コンドロイチン硫酸』は、髪に潤いを与える成分。紫外線や冷房の風でパサつきが気になるかたにおすすめです。料理のアレンジが少ないのが難点ですが、桜えびや玉ねぎを混ぜてかき揚げにしてもおいしいですよ。桜えびに含まれるアスタキサンチンは、アンチエイジング効果も期待できるので中高年にはおすすめ」
ビタミン、ミネラルが豊富な果物も、“冷え”の観点では要注意食品だが、例外もある。
「果物の中では、ビタミンEが豊富なアボカドは安心です。ただ、良質ですが脂肪分が多いので、やはり食べすぎは厳禁。2週間に1個くらいが適正でしょう」
服装、運動、入浴、食事の「四輪」で、厳しい夏を“温かく”乗り切ろう。
菊池さんのおすすめ食材
体を温め、ダイエットにも最適な夏の最強食材。
唐辛子系のピリ辛料理
カレー、キムチなど、唐辛子を使ったエスニック料理は体温を上げ、手足を温めてくれる。ただし、激辛は胃に負担をかけるのでNG。ピリ辛が基本だ。
卵
筋肉のもととなるたんぱく質、脂質や糖質を分解するビタミンB群を豊富に含む卵は“冷え”対策の優秀食材。コレステロール値が高い人は医師の指示に従おう。

甘酒
「飲む点滴」ともいわれ、昔は夏に飲まれてきた。糖分やアミノ酸、ビタミンB群が豊富で血行促進や美肌効果も。おろししょうがを加えれば、温活効果もプラスになる。

モロヘイヤ
エジプト原産で、ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富。お浸しで食べるのがポピュラーだが、細かく刻んで納豆と混ぜたり、豚肉と炒めてもおいしい。

アボカド
ビタミンEや食物繊維が豊富で栄養価が高いことから「森のバター」とも呼ばれる。気になる脂肪分も、ヘルシーな不飽和脂肪酸。あまり恐れず、適量を楽しもう。

◆教えてくれたのは:管理栄養士・菊池真由子さん
食べても太らないダイエットや免疫力を上げる食生活、生活習慣病予防など、1万人以上の栄養指導に携わる。『1週間で勝手に-10歳若返る体になるすごい方法』(日本文芸社)ほか著書多数。www.diet-class.com
取材・文/佐藤有栄
※女性セブン2025年7月31日・8月7日号