100年歩ける骨をつくる「食品」「習慣」を専門家10人がランキングで解説 取り入れたいのはビタミンKを多く含む「納豆」、ビタミンDを生成する「日光浴」など

ちょっとつまずいただけで骨折し、そこから寝たきりの生活が始まってしまう──目には見えない「骨の老化」を放置し続けると思わぬ地獄が待っている。健康長寿に直結する「100年歩ける骨」を手に入れる方法を専門家10人に聞き、ランキングで徹底解説しよう。
【教えてくれた専門家10人】
石原新菜さん(イシハラクリニック副院長)、伊藤薫子さん(かおるこHappyクリニック院長)、金丸絵里加さん(管理栄養士・料理家)、清水加奈子さん(フードコーディネーター・管理栄養士)、戸田佳孝さん(戸田整形外科リウマチ科クリニック院長)、中村光伸さん(光伸メディカルクリニック院長)、浜本千恵さん(管理栄養士)、福田千晶さん(医師・健康科学アドバイザー)、松村圭子さん(成城松村クリニック院長)、望月理恵子さん(健康検定協会理事長・管理栄養士)
※以上の10人の専門家に、おすすめの食品と習慣を挙げてもらい、1位を10点、2位を9点、3位を8点、4位を7点、5位を6点、6位を5点、7位を4点、8位を3点、9位を2点、10位を1点として集計(同位に複数回答あり)。
自分の足で歩けば認知機能の低下予防に
骨密度は50才以上になると徐々に低下していくが、骨の老化は自覚しづらい。いつの間にか骨がもろくなり、骨折をして寝たきりに──そんなことにならないように、いまのうちから予防を心がけたい。
いつまでも自分の足で歩くことは、心肺機能を維持するなどあらゆる健康効果につながる。100年歩ける骨をつくるために、今日から実践できる「最強の食品」と「究極の習慣」を専門家に取材した。
かおるこHappyクリニック院長の伊藤薫子さんは、女性特有の骨密度の変化についてこう説明する。
「古い骨を壊す破骨細胞と新しい骨をつくる骨芽細胞の新陳代謝のバランスによって、丈夫な骨が保たれています。そのバランスを調整する役割をしているのが女性ホルモンのエストロゲンです。しかし閉経後3〜5年の間に、エストロゲンが一気に減少して10分の1くらいになると破骨細胞が増えて、骨密度が低下してしまいます」

更年期を迎えると、骨がもろく折れやすくなる。医師で健康科学アドバイザーの福田千晶さんが指摘する。
「更年期症状がなかった人でも、加齢によって骨が弱くなっている可能性は充分あります。自覚症状がなくても、普段の食生活や生活習慣を見直して、骨密度を維持することが大切です」
強い骨があれば、おのずと健康寿命も延びる。
「骨折しにくい体を維持できるのはもちろん、年齢を重ねても自分の足で歩ける体をキープしていれば外出していろいろな刺激に触れることができるため、認知機能の低下も防げます。
骨を丈夫に維持するための鍵は、必要な栄養素を摂ることと適切な負荷を加える生活習慣。更年期以降でも生活習慣の改善によって骨密度が復活することもあるんです」(福田さん・以下同)
カルシウム+ビタミンKが最強
骨を丈夫にする栄養素といえばカルシウム。多くの専門家が5位の牛乳をはじめとするカルシウムが豊富な食品を上位に挙げた。
「日本人のカルシウム摂取量の平均は、理想とされる摂取量に比べて1日200mgほど不足しています。これは牛乳コップ1杯分に含まれる量なので、追加で毎日1杯飲むといいでしょう。
アレンジが自在なのも牛乳のおすすめポイントです。そのまま飲むのが苦手な人は、カフェオレやシチューにして取り入れましょう」
2位に挙がったしらす干しやちりめんじゃこ、いわしなどの小魚にもカルシウムがたっぷり含まれているが、食べ方には注意したい。
「小魚だけで必要なカルシウムを摂取しようとすると塩分の摂りすぎになる可能性があります。食べるときにはしょうゆを使わないようにし、できるだけ塩味の少ないものを選ぶなどの工夫をしましょう」
骨を強くするには、カルシウムが骨に沈着するのを促す栄養素であるビタミンKも必要だ。戸田整形外科リウマチ科クリニック院長の戸田佳孝さんが解説する。
「ビタミンKを多く摂取している人は、そうでない人と比べて変形性膝関節症の重症化が少ないという報告があります。ビタミンKを多く含む食品といえば納豆。1パックでも効率よくビタミンKが摂取できるうえ、価格も手頃なので日常的に取り入れやすい」

納豆が苦手という人に「心配は無用です」と戸田さんが続ける。
「小松菜やほうれん草などの葉物野菜も、ビタミンKが豊富です。特にほうれん草に含まれる鉄分には痛みを和らげる作用があるため、ひざの痛みにも効果が期待できる。
ただし、血液を固まりにくくする薬(ワーファリン)を服用している人は、薬の効き目が弱まる可能性があるので、必ず医師に相談してください」(戸田さん)
ビタミンDも骨の強化には欠かせない。健康検定協会理事長で管理栄養士の望月理恵子さんが言う。
「ビタミンDは腸内でカルシウムの吸収を高め、骨の石灰化を促して骨密度を高める働きがあります。ビタミンDを多く含むおすすめの食品は鮭。ビタミンDに加えて、骨の代謝改善に役立つとされるアスタキサンチンも豊富です」
6位の鮭も含めて上位の食品に共通しているのは、たんぱく質が豊富なこと。骨の3〜4割はたんぱく質の一種であるコラーゲンでできているからだ。
光伸メディカルクリニック院長の中村光伸さんは、たんぱく質の重要性についてこう話す。
「骨の強度は骨塩量(骨密度)と骨内コラーゲン量で決まります。骨粗しょう症と診断される人の多くがコラーゲンのもとになるたんぱく質不足です。肉でも魚でも大豆製品でも構わないので、自分が摂取しやすい食品からたんぱく質を意識的に摂取しましょう」
骨と筋肉は互いに刺激し合っているため、たんぱく質をたくさん摂って筋肉を強くすることは、骨にもいい影響を与えるという。
「たんぱく質は筋肉の回復に必要なアミノ酸が豊富なので、特に運動後に摂ると筋肉の維持に効果的です」(福田さん)