
──そうだったんですね。ただ、もともと表情や体の動きなどで表現されていた演技から、声に特化するお仕事では苦労しませんでしたか?
白石「いや〜、ものすごく苦労しました(苦笑)。最初のうちは台本の読み方すらわからなかったですし、『もうちょっとアニメに合ったお芝居をできるようになろうね』って言われていました。でも途中から『もっとナチュラルな演技を』っていう時代が来たんですよ。私が声優になってからも流行り廃りがあって、いまはどんなお芝居が求められているのかというのを現場で先輩方の芝居を見て学んだり、滑舌が追いつかないときはボイストレーニングに行ってみたり、研究しながら徐々に声優という仕事を続けてきた感じです」
──でも、そうして転身した声優業界で、すでに14年間活躍されています。どんなところが評価されていると思いますか?
白石「私は今回のラコのように結構たくましく、精神的に自立していて、守られるより守るタイプのキャラクターを演じさせていただくことが多いのですが、だいたいそういうキャラクターは戦闘シーンで“うおーっ”と野太く叫ぶ声が必要になってくるんですけど、声を枯らしたことがほとんどないんです。こんなに叫んでも声が枯れないのはすごいねって先輩がたや監督さんから言っていただけたりすることがあるので、それは自分の強みになっているなと感じます」
──たとえば思いを強く伝えたいというシーンでは、何を意識されるんでしょうか?
白石「大きな声で強く言えば伝わるのかっていうとそうではなくて、悔しい思いを胸に秘めているのか、それとも切ない気持ちなのかなど、シーンの状況によってアプローチは様々です。若干の声の震えだったり語尾の落とし方だったり、”いまこういうふうに表には出している”けれども、”こういう感情を秘めているのかな”といった繊細なところまでを声で表現するのは声優ならではの技術かもしれません。いまも先輩がたのお芝居を見させていただきながら研究している最中ですね」

──ではここから質問を“声”にまつわるライトなものにさせてください。白石さんの“口癖”は?
白石「“というのも”ですかね(笑)。幸い、ラジオや人前でお話しさせていただく機会が多いんですが、しゃべり出しでまず一言言ってから“というのも〜”ってつなげていくことが最近すごく増えていて。自分では無意識だったんですが、自分の話をまとめていただいた記事を読むと、最近多いかもって気づきました(笑)」
──好きな動物の“鳴き声”はありますか?
白石「私、トイプードルを飼っているんですが、ご飯を準備しているときにしゃべる声が好きです。ありがちと思われるかもしれないんですけれど(笑)、なんか“ワゥン……ワン……”みたいな感じじゃなくて “うにゃおうにゃおうぉおおにゃううおううううぉぉわぁあうぅぅう”っていうくらい、すっごく長いんですよ(笑)。私が定位置にごはんを置くまでずっと止まらないので、『早くくれよ、何やってんだよ、こっちはお座りして待ってんだよ』って文句をずっと言っているんだろうなって思います(笑)。飼い主とペットは似るといいますけど、おしゃべりな私と母にそっくりですね」
──白石さん的に“声”に出したい最近の新発見があったら教えてください。
白石「新発見……新発見……あ! 私が好きなゆで卵のゆで加減は7分です(笑)。料理が好きで、卵のゆで加減もいろいろ試してきたんですけど、実はこれあんまりお話ししてないと思うので発表しました(笑)」

──“独り言”はしますか? 言うとしたらどんな言葉?
白石「独り言は常に言っています(笑)。料理しながらなんとなく『いけないけない、マヨネーズ取り忘れちゃった』みたいなのとか、自分がいまやっていた動作に対してぶつぶつ言うこともありますし。日頃の悩みみたいなことも『どうしよっかなー、うーん、あーー』みたいに口に出しながら解決していくタイプです。今日みたいに取材を受けたり、ラジオ前に自分の思いをまとめるときにもなるべく言葉に出しながらやるようにしています」
──では最後に“声”が魅力的だと思う人を教えてください。
白石「まさにこの『アズワン/AS ONE』にも出演されている、声優の日笠陽子さんです。大先輩で、昔からすごく憧れのかたで、業界的にもすごく頼りにされているかた。お声の力強さもそうなんですけど、これまでの経験がすべて声に乗っているような分厚い声をされているんです。日笠さんのお声を聞くたびに、日笠さんのような声がいつか出せるような声優になりたいといつも思っています。そんな日笠さんのお声や、声優初挑戦とは思えない素晴らしいお芝居をされた白岩瑠姫さんのお声も聞ける『アズワン/AS ONE』、ぜひ劇場でご覧いただけるとうれしいです」

映画『アズワン/AS ONE』
8月22日より公開
撮影/山尾野々香 ヘアメイク/大久保沙菜 スタイリスト/当間美友季 取材・文/辻本幸路
撮影協力/BACKGROUNDS FACTORY