人生を添い遂げようと誓った相手でも、ともに暮らしていくうちに関係性が変わることは珍しくない。不貞行為やDV(ドメスティックバイオレンス)など確固たる原因がなくとも、「性格の不一致」で離婚を考え、踏み切る人も多い。近年では結婚生活20年以上を経て50代以降で離婚する熟年離婚の数も増加(厚労省「人口動態調査」より)。一方で、「離婚したい!」と思ってもなかなか実現できない人が多いのも現実だ。知っているようで知らない、離婚のアレコレを弁護士に聞いてみた!

知らないと損!「年金分割制度」「財産分与」「婚姻費用」が妻の生活を保障
【相談】
「今年62才になる母が、父との離婚を考えているようです。老い先も短いし、ここまで耐えたのだから最後まで添い遂げればとも思いますが、“看取りたくないし、看取られたくない”の一点張り。ただ、これまでずっと専業主婦だった母が離婚してもちゃんと暮らしていけるのか心配です」(28才・女性)
【回答】
「法制度が女性に有利になってきている」と話すのは、全国に74拠点(2025年8月現在)を持つベリーベスト法律事務所の太田佳佑弁護士だ。
「ここ数十年くらいで年金分割制度や財産分与などお金に関する法的な制度が男女平等を実現する方向で動いていて、女性もしっかりと財産を得られるようになってきています。離婚を考えているなら、視野に入れておいてほしい制度が『婚姻費用』です。籍を抜く前に別居をすると、夫婦のうち収入が多い方が少ない方に対し生活費などを負担する義務が生じるものです。衣食住に関する費用や、医療費などが対象になります」(太田弁護士・以下同)
離婚した場合にどのくらいの財産が分与されるかは、事前に夫の貯金や保険などを確認する必要がある。そのうえで弁護士など専門家に相談するのが確実だ。
「離婚後に隠し財産が発覚して損してしまうケースや、思ったよりも年金分割の額が少なく離婚後の生活が困窮してしまう場合もあります。また、持ち家がある場合や親が残した家や土地があるなど、不動産が絡む場合は専門性の高い話になるので、早い段階で相談した方が失敗は防げるでしょう」

モラハラ夫はモンスター「弁護士を通さないと話にならない」
【相談】
「結婚して2年、5才年上の夫の言動に違和感を覚えることが増え離婚を考えるようになりました。毎月夫から渡される少ない金額で家計をやりくりしたり、献立や家事の出来不出来を“評価”されるような発言を受けることでメンタルが不安定になってしまったんです。夫には離婚の意思も伝え、両親を交えて話し合うことも提案しましたが、まったく聞き入れてもらえず途方に暮れています」(36才・女性)
【回答】
かつてほど離婚に対する後ろ向きなイメージはなくなっているものの、あくまでも“当事者同士で”解決すべき問題だという考えはいまだ根強い。しかし、太田弁護士は「弁護士を頼らないと離婚が成立しないこともある」と話す。
「一般的に揉めている度合いが高ければ高いほど、弁護士に依頼するかたが多い。一方で、DVやモラハラといった事案は、はっきり言って当人同士では話にならないケースがほとんどです。妻の方から『性格を直してほしい』『話し合いたい』『離婚したい』など何を言っても、モラハラ夫は聞き入れません。DVを伴えば身の危険がありますし、モラハラで精神を病んでしまうことだってあります。離婚をするということ以前に、心身を守るために弁護士に相談することをおすすめします」
【プロフィール】
太田佳佑(おおた・けいすけ)/2009年早稲田大学法学部卒業、2012年慶應義塾大学法科大学院卒業。2016年ベリーベスト法律事務所入所。離婚・男女問題から遺産相続、労働問題まで幅広く対応。