
ピースワンコ広報の渡辺佳乃子さんによると、環境省の最新データでは動物愛護センターに収容される犬の1割が飼い主に連れて来られた犬で、残る9割が飼い主不明の犬、つまり野犬や“捨てられてしまった子”なのだそうだ。伍代が憤る。
「癒しとして犬がほしいからと、自分本位に飼うことに口は挟みません。だけど興味がなくなったらほったらかして、ワンちゃんを裏切ることだけは本当にやめてほしい。飼い主が突然死を迎えてしまった以外の放棄は、絶対にあってはいけません。安易に買えない規制も検討が必要でしょうし、ペットを迎えるならば、その子と“一生家族”の覚悟で添い遂げてほしいです」
この日のイベントには腸内細菌の重要性を熟知した消化器外科医が作ったヨーグルト『神グルト』(神楽坂乳業)のブースもあり、犬用も販売されていた。開発者の林和彦さんも保護犬を飼っているという。
「子犬を息子が歌舞伎町から保護してきました。たまたま訪れた店に灰皿に水を入れて飲まされている子犬がいて、聞けば、放置された子犬をどうすることもできず、とりあえず店においていると。最初はガリガリで落ちているものは何でも食べた。でも、水はなかなか飲もうとしない。おそらく灰皿で水を飲まされていたからでしょう。今でもあまり飲まない子なので、ヨーグルトを水に入れて、あげるようにしています」(林さん)
飼い主が手放すには、経済的以外にもどんな理由があるのか。ピースワンコで活動して5年目の上廣元基さんは、「病気や高齢で医療費がかさむケースや、気難しくて手に負えないからと手放すケースもあります。触ろうとすると噛みついてきたりして、虐待されて気性が荒くなったのだろうなと推測されます」と明かす。
虐待は心身への暴力だけでなく、ネグレクト(飼育放棄)も含まれる。神石高原シェルターを担当する芦塚望美さんは、“無意識の虐待”の怖さを挙げた。
「飼い主を噛んでしまって捨てられた子もシェルターへ来ますが、しっかり運動と食事をさせてあげるだけでも 、たいていの子は全然噛まなくなる。本来は噛まない子たちなんです。例えば、運動がたくさん必要な犬種なのに室内でずっと過ごさせていることを“ネグレクト”だと認識していない飼い主は、意外といると思います」