健康・医療

【医師が選ぶ“本当に頼れる病院”】「大腸がん」では“根治性の高い手術”の技術が高い医師選びが重要「直腸がん手術を年間50件以上手掛ける病院は治療レベルが高い」 

大腸がんは技術が高い医師を選ぶのが重要になる(写真/PIXTA)
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 高齢化に伴いがんは他人事でなくなり、治療すれば完治が見込めるようになった。しかし、病院選びを誤れば、術後に生活を揺るがす支障が残ることがある。数ある医療環境の中で、不安に寄り添い一緒に「根治」を目指してくれる病院と出合うために、私たちが知っておくべきことを◦ジャーナリスト・鳥集徹氏と本誌・女性セブン取材班が徹底取材した。【第1回】

 日本人の2人に1人が罹患する「がん」。だがいざ自分や家族が患者になったとき、どの病院を選ぶべきか、明確な判断基準を持つ人はどれだけいるだろう。

 全国どこでも質の高いがん医療を受けられるよう、国はいくつかの基準を満たした464か所を「がん診療連携拠点病院」に指定している。ここであれば一定以上の治療が受けられるはずだ。ただし、どこでも「同じ」ではない。治療成績の差や、得意・不得意分野があるのは事実だ。

 その実態をいちばん知っているのは、その分野に詳しい専門医たち。そこで今回、本誌に過去に登場した名医を中心に、「もし自分や家族がその病気になったら、どの病院で治療を受けたいか」についてアンケートを実施。信頼できる全国の病院を疾患別にリスト化した。加えて、診療方針や最新医療について取材し、「どんな病院なら信頼できるか、信頼できないか」も尋ねた。

 ここでは、「大腸がん」を取り上げる。最初の病院選びを間違えると、大きな後悔をしてしまう。ぜひ記事を熟読して、「病院選び」の知識を身につけてほしい。

【大腸がん】肛門温存率が高いロボット手術

 現在、女性のがん死亡数で最も多いのが大腸がんだ。食生活の欧米化や女性ホルモンの影響だといわれるが、便秘との関係はよくわかっていない。ただし、家族に大腸がんになった人がいるとリスクが高まることはいくつもの研究で明らかになっているので、気になる人は定期的に内視鏡検査を受けるといいだろう。粘膜に留まる早期がんであれば内視鏡で取り除くことが可能だ。

 現在では、大腸の切除が必要となった場合でも大きな傷が残る「開腹手術」ではなく、大半がお腹に開けた数か所の小さな穴から細長い手術器具とカメラを挿入し、術者がお腹の中の様子をモニターで見ながら操作する「腹腔鏡手術」で行われるようになった。

 それに加え近年は、「ロボット手術」も普及。執刀医が手術台とは別の専用の操作台に座り、体内に挿入したカメラの立体画像を見ながらロボットアームを遠隔操作して行う方法だ。東京科学大学(旧東京医科歯科大学)病院では、大腸がん手術のほぼすべてをロボットで行っている。大腸・肛門外科長で教授の絹笠祐介医師が話す。

「大腸がんには小腸からつながる結腸のがんと、肛門に近い直腸のがんがありますが、ロボット手術のメリットを特に生かせるのが直腸がんです。腹腔鏡よりも自由度が高く微細な操作ができるので、狭い骨盤の中でも手術しやすい。そのおかげで、肛門を完全に温存できる割合が増えました。

 私自身、2011年からロボット手術に取り組んでおり、1000例を超える経験があります。当院では腹腔鏡より手術時間が短く済み、合併症も改善しているデータが出ています」

名医が選んだ、「大腸がん」で頼れる病院
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 直腸がん手術は難易度が高いため、腫瘍を取り切れないケースもある。その際には術前に放射線や抗がん剤治療が行われるが、肛門に放射線が当たると排泄機能が低下し、便失禁を起こしやすくなる。これを防ぐためにも、できるだけ腫瘍を取り残さない根治性の高い手術を行う技術を持つ医師を選ぶことが重要と絹笠医師は話す。そんな直腸がんの骨盤内局所再発手術に取り組んでいるのが、兵庫医科大学病院だ。下部消化管外科診療科長で主任教授の池田正孝医師が話す。

「直腸骨盤内に局所再発したがんは、再び取り切れば根治を期待できます。ただし直腸だけでなく膀胱、生殖器、骨盤の骨の一部まで切除する大がかりな手術が必要となる場合がある。さらに、本来臓器があった空間をそのままにしておくと、腹水がたまって感染を起こし、命に危険が及ぶこともあるので、これを防ぐために筋肉を残った空間に埋めるための形成外科医や、尿路変向をする泌尿器科医などの協力が不可欠です。

 私はこの手術に約25年前から取り組んできました。2012年からは腹腔鏡手術も導入。それによって出血量も合併症も再々発も減りました。人工肛門と人工膀胱の『ダブルストーマ』になりますが、それでも10年、15年と元気に過ごしているかたがたがいます」

 同院では直腸がん再発の手術を年間10~20例実施。ほかに局所再発の治療経験が多くあるのは、国立がん研究センター東病院、がん研有明病院、日本医科大学付属病院、名古屋大学医学部附属病院、大阪大学医学部附属病院などに限られている。

「大腸がんの中でも直腸がん手術を年間50例以上、さらに再発の手術を多く手がけている病院は、大腸がんの治療レベルが高いと言える。局所再発した場合には諦めず、こうした病院の専門医に相談してみるのがいいでしょう」(池田医師)

(第2回に続く)

女性セブン20251225日・202611日号