健康・医療

【医師が選ぶ“本当に頼れる病院”】『胃がん』では「術後の生活の質を落とさない治療法の提案」も重要 “総合力”が試される『食道がん』では「サルベージ手術の経験」が病院選びの目安に

【食道がん】がん細胞をレーザーで焼き切る

 数あるがんの中でも、食道がんの手術ほど大がかりなものはない。肺をよけて食道を切除した後、胃の一部や腸を使って食道を再建し、食べ物の通り道を作る。そのため、胸部、腹部、頸部の3か所を切開する必要がある。食道がん手術数で日本トップ5に入る大阪国際がんセンター消化器外科・食道外科長で副院長の宮田博志医師が話す。

「患者さんの負担を軽くするため、食道がんでも胸腔鏡手術が普及しています。さらに当院はロボット手術にも取り組んでいる。食道がんは術後に肺炎や声がれが起こりやすいのですが、胸腔鏡やロボットなど負担の少ない低侵襲手術の方が、こうした合併症を減らせるとの報告があります。

 また、手術数の多い『ハイボリューム・センター』の方が治療成績はいいというデータもあります。当院の食道がん手術数は年間150例前後です。そこまで多くなくても、安全に手術を受けたいなら、ある程度症例数の多い病院を選んだ方がいいでしょう」

名医が選んだ、「胃・食道がん」で頼れる病院
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 食道がんは、特に病院の総合力が試される病気の1つと言える。東北大学病院総合外科上部消化管・血管グループ教授の亀井尚医師はこう話す。

「食道がんの治療は手術が中心ですが、ほかの治療も組み合わせた集学的治療が行われます。粘膜に留まる早期がんの場合は、内視鏡の先端から電気メスを出し、腫瘍のある部分だけを削り取る『ESD(内視鏡的粘膜下層剝離術)』ができます。放射線と抗がん剤治療でも根治を目指せますし、その後に再発した場合には『PDT(光線力学的療法)』といって、がん細胞にレーザーを当てて焼き切る治療もある。当院では、放射線科、腫瘍内科、消化器内科と協力しながら、あらゆる治療ができるように備え、常に食道を温存できないかと模索しています」

 同院がもう1つ取り組んできたのが、「サルベージ手術」だ。放射線で治療して再発した場合に、あらためて食道を切除する手術のことを指す。

「一度放射線を照射すると組織が硬くなり癒着もするので、手術が非常に難しくなり、術後合併症も多くなる。そのためサルベージ手術が、一般病院で行われることは少ないのが現状です。当院は’00年代からトータルで150例ほど手がけており、日本で一、二を争う実績です。近年はPDTの登場で減りましたが、総力戦といえるサルベージ手術の経験が豊富かどうかも、食道がんの病院選びのひとつの目安になるでしょう」

執刀医の本音を聞く

 ロボット手術をする医師が増えているが、最先端だから優れているとは限らない。東京科学大学(旧東京医科歯科大学)病院の大腸・肛門外科長で教授の絹笠祐介医師が語る。

「本当に得意であればロボット手術の実施率は100%近くになるはず。腹腔鏡や胸腔鏡の方が多いのはロボットを自由に使える環境にないか、医師が慣れていないからでしょう。そうであればロボットにこだわる必要はなく、その医師が得意とする方法で手術してもらうのがいちばんです。すすめられるまま手術を受けるのではなく、腹腔鏡とロボットとどちらが得意なのか、執刀医に本音を聞いてみるといいでしょう」

 病院選びでもう1つ大事なのが「チーム医療」だ。同じく宮田医師が話す。

「術後の肺炎を減らすには術前に口腔内の状態をよくしておくことが重要で、当院には歯科医師、歯科衛生士が在籍。また、術後も体重と体力の低下を防ぐため、嚥下(飲み込み)リハビリをする理学療法士や栄養士もいる。この多職種のチームがあるからこそ、当院は成績がよく、平均2週間という早期退院が可能となっているのです」

 術後の社会復帰までサポートしてくれるかどうかも、がんの病院選びの大きなポイントだ。

女性セブン20251225日・202611日号