
新年を迎え「今年こそは!」と目標を掲げる人は多いだろう。しかし「5㎏やせる」「英語が話せるようになる」と希望を持っても、数か月後に「やっぱり続かなかった」と挫折してしまうまでが“ルーティン”という人も。お金・ダイエット・人間関係・ネガティブ思考・習い事…頑張っているのにうまくいかない─―それ、頑張り方が間違っているのかも!? お金・ダイエットに着目。科学的に正しく、無理なく幸せになれる習慣をポジティブ心理学者が解説します。
「いい習慣」ができると物事がうまくいく
「自分が立てた目標が長続きする人としない人の違いは『気持ちの切り替えができるかできないか』にある」とポジティブ心理学者の松村亜里さんは説明する。
「脳は、生存本能として『ネガティブなこと』に注目するようにできているため、つらいことが起こると誰もが傷つきます。しかし、目標や習慣が長続きする人はそれを受け入れ『次に進むには何をしよう』という思考を持つことができます。
一方、長続きしない人は『私はダメだ』『努力が足りない』と自分を責め、そこにとどまってしまうのです」(松村さん・以下同)
困難を乗り越えて目標を達成するためには「意志の力」が必要といわれるが、研究(※社会心理学者のロイ・バウマイスターが提唱し、2011年(日本では2013年『WILLPOWER 意志力の科学』(共著)を出版。以降多くの科学者が研究している)からは「気合を入れれば入れるほど意志の力が強くなるわけではない」ことがわかっている。
「意志の力は、一日の中で限りがあるといわれています。充分な休息を取り、心も幸せな状態だと意志の力のエネルギータンクは満たされます。ところががまんや無理をすると意志の力が消耗して、効率もやる気も落ちてくる。特に、『自分を責める』行為はかなりのエネルギーを使うため、タンクの容量がぐんと減り、挫折を招くのです」
つまり、根性でエネルギーをすり減らすより、幸せでいることの方が、意志の力が持続するのだ。

「意志の力を強化する(タンクを満たしておく)方法は、心身にいい習慣を身につけること。常にエネルギーが満ちた状態になると、周りの状況や環境も好転していきます」
「幸せかどうか」を基準に目標や習慣を設定
では、どのように意志の力は強化できるのか?
「心理学で用いられる『セルフコンパッション(自分への思いやり)』が有効です。これは困難なことが起きたとき、心の持ちようを段階別に処理する方法です」
それが、以下の段階だ。
【第一段階】負の感情をそのまま受け止める。
【第二段階】負の感情を「私だけでなく、誰もが感じるもの」と捉える。
【第三段階】いまの自分が幸せになること(好きな音楽を聴く、眠るなど)を行う。
「『努力とはつらいもの』は過去の話。自分自身が幸せな状態で、初めて目指す自分に近づけます。今年からは、『幸せかどうか』を基準に、目標に取り組んでみましょう」

お金に恵まれる習慣→お金の前に「時間」を大事にする
貯め込むばかりではお金は回らない
老後の資金問題や物価高などで、「貯蓄をしなければ」と焦る中高年は多い。
「生活に困らない程度の収入があるにもかかわらず不安だからと貯め込むばかりでは、お金は回りません。そんなかたは、貯金より先に、自分の時間を大事にすることから始めましょう」
目指すべきは、お金と同じくらい「時間もある程度豊かな状態」だと、松村さんは言う。
「ハーバード大学の研究では、時間を優先する人の方が、お金を優先する人よりずっと幸せだという結果があります(※ハーバード・ビジネススクールで教鞭を執る心理学者のアシュリー・ウィランズが数千人の人々を調査した結果に基づく。内容は著書『TIME SMART(タイム・スマート):お金と時間の科学』に詳しい)。このように、時間は有限で価値があるのですから、できるだけ自分の時間を好きなことや学びに使うことをおすすめします。
たとえば、掃除が苦手な人なら、外注して自分の時間を捻出する。『お金がもったいない』と嫌なことに時間を使うことこそもったいない!と考えましょう」

時給ではない収入源をつくる
趣味や学びで得たスキルは、やがて収入源となる可能性がある。
「なぜなら、好きなことは無理なく続き、どんどん上手になるので、それが新たな仕事につながる機会になるのです。何より、好きなことでお金を稼ぎ、好きなことに使っていると、お金が回るようになる。かつての私は節約一筋でしたが、自分の好きなこと、大事な人たちに投資をすることで、節約時代よりお金が増える経験をしたので、それを強く実感しています」
本業とは別に、価値を提供することで得られる収入を持っておくのも、安心材料の1つとなる。
「ものづくりが好きな人なら、フリマサイトなどで自分の作品を売ることもできますよね。お金を生み出す手段は『誰かに雇われる』だけではありません。
もし、お金のために嫌いな仕事をしているのであれば、『お金はがまんして得るもの』という思い込みを捨ててみると、自分の特技を発揮できる仕事が見つかるかもしれません」
ダイエットに成功する習慣→自分をいたわる
「食べたらダメ!」と思うと脳は食べることに執着する
「女性はウエストまわりがきつくなると自分を批判する傾向があるといわれていますが、ダイエットに失敗するのは、自分に甘いからではなく、実は厳しいからなんです」
先述の「意志の力タンク」の話のように、「食べたらダメ!」と思うほど意志の力が消耗してしまい、さらに食べてしまうという結果に。

「たとえば『ピンクの象を考えないでください』と言われて、あなたは考えずにいられますか?
脳は否定形を理解できないので、否定的なことを考えると、そのことで頭がいっぱいになってしまう。『お菓子を食べたらダメ』と思うほど食べたくなるのは、脳の仕組みなのです。
考えないようにするのではなく『食べたい』という欲求はそのまま受け止め、食べ物以外のことで自分の心を満たすのがおすすめです。または、『りんごにしようかな』などと、置き換えるのも効果があります」
自分をいたわると食の傾向も変わる
成功のコツは「自分をいたわること」だけだ。
「たとえば、好きな香りのバスソルトを入れてゆっくり入浴し、全身にクリームをたっぷり塗る、疲れていたら休む、嫌なことはしないなど、自分を徹底的にいたわってあげるんです。
自分を大切にしようと思うと、自然と体に悪いものを口にしたくなくなります。私もそれで減量できました」
カリフォルニア大学の研究例(※カリフォルニア大学バークレー校が2007年に行った研究。お菓子を食べた量を調べたところ、いたわりの言葉があった人々の平均は28g、言葉がなかった人々の平均は70gだった)がある。
複数の女性にドーナツを食べてもらい、半分の女性には「食べすぎることは誰にでもあるから、自分を責めないで」と伝え、残りの女性には何も言わなかった。その後、お菓子が山積みになった場所でアンケートを行ったところ「自分を責めないで」と言われた女性たちの方が、お菓子に手を伸ばす数が少なかったという。いたわりの言葉で、自制することができるのだ。
「また、『ダイエット後の理想の姿』を思い描くのも重要。あくまで『○kgやせたらこの服を着て○○に行きたい』と自分主体の目標を立てること。他人にどう思われるかを基準にすると、長続きしません」
◆医学博士・ポジティブ心理学者・松村亜里さん
ニューヨークライフバランス研究所代表。各国で心理学講座を開催。最新のエビデンスを日常に取り入れやすい形で提供し、好評を博す。新著に『ハーバード・コロンビア大が証明する 幸せが増える習慣』(すばる舎)。
取材・文/佐藤有栄
※女性セブン2026年1月22日号