
古今東西さまざまなダイエット法が現れては消えていった。私たちの頭を片時も離れないダイエットという大問題に正解はあるのか? ここに10人の女医が、自身で行っている「太らない習慣」をシェアする。美を健康に保つダイエット法で、真のスリムボディーを手に入れよう。
ダイエットの正解がわからない
例年以上の酷暑日が続く今夏、危険な暑さで外出を控える日が続き、体重増加や冷房によるむくみが気になる人も多いだろう。Tシャツやノースリーブなど薄着になって、自分の体形にがくぜんとしている人もいるかもしれない。
女性にとってダイエットは永遠のテーマであるがゆえに、世にあふれる無数のダイエット法を前に、どれが自分に合っているのか、何から手をつければよいのか途方に暮れてしまう。
都内在住の主婦・Aさん(51才)もそんな悩みを抱え、毎年夏に向けてのダイエットに苦労している。
「夏に向けて食事制限にエクササイズと頑張るんですが、思ったようには体重が落ちなかったり、少し効果があったかなと思えばすぐにリバウンドしたり。りんごダイエット、ゆで卵ダイエット、ラップ巻きダイエットのような流行りものも試しましたが、思ったようにやせられたことはありません。この年になってもダイエットの正解がわからないです」
しかも、加齢とともに過度な食事制限や運動は、かえって体に悪影響を与えて健康を害することもある。そこで10人の女性名医に、自身が実践している「太らないためのルーティン」を紹介してもらった。食事の内容やとり方、運動の頻度など年を重ねても自然体で、美しくいるための秘密が明らかに。
空腹をがまんするとかえって太る
食事に関する習慣で、最も多かったのが糖質制限だ。塩之谷整形外科院長の塩之谷香さんも実践するひとり。

「玄米や雑穀米、雑穀パンなどは噛み応えもありますし、食物繊維やミネラルも豊富です。無理に全部玄米にしなくても、雑穀を白米に少しずつ混ぜるといいかもしれません。ご家族がいて難しければ、パックの玄米ご飯や雑穀ご飯もありますよ。1食当たりの糖質を減らすことを意識してみてください」(塩之谷さん)
魚や肉などのたんぱく質は満腹感を得られやすく、おかずとして野菜を多めに食べることで、満足感を減らさずに自然と炭水化物の量を減らすことができる。
また炭水化物は食べる順番でも太りやすさが変わる。SAWAKO CLINIC x YS統括院長の日比野佐和子さんが言う。

「糖質を最初に食べると血糖値が上がりやすくなります。するとインスリンの働きにより血糖値を下げるために脂肪細胞が積極的に糖を取り込むようになり、より太りやすくなる。
食べる順番を最初はたんぱく質、次に野菜などの食物繊維、最後に糖質というように心がけるだけでも太りにくくなるのです」(日比野さん・以下同)
友人との外食などのイベントでは高カロリーなメニューになることもあるが、1食の内容にそれほど目くじらを立てる必要はない。
「1食ではなく数日間のトータルで栄養を考えた方が管理はうまくいきます。外食で食べすぎたと思ったら、翌日の朝食を抜いてお茶やコーヒーなどの飲み物だけにする、16時間ほどのプチ断食を行うなど調整することで栄養バランスを整えやすいです」
空腹時間を少なくとも10時間以上おくことで、体は脂肪やたんぱく質をエネルギーに変換するケトン代謝に切り替わり、脂肪の燃焼が促されていることが報告されている。
だが食事の合間にどうしてもお腹がすいた場合は、どうしたらいいだろうか。
「空腹をがまんするとストレスによって結果的に食べすぎる可能性が高くなります。ちょっとしたクッキーやチョコレートひとかけなどをつまんで満足感を得た方が、結果的にはやせやすいです」(塩之谷さん)
そしてアルコールも肥満への影響がある。銀座ケイスキンクリニック院長の慶田朋子さんが指摘する。

「アルコールは前頭葉の働きを抑制するので、飲酒量が増えてしまったり、食欲ががまんできず食べすぎてしまうリスクがあります。
日本酒など糖質が多いアルコール飲料だと、どうしても糖質過多になりやすいです。飲酒は適量に抑えるコントロールが非常に難しいため、飲まない方が楽かもしれません」(慶田さん)
一方で同じ飲み物でも、コーヒーは上手に飲めば肥満解消につながる。
「起床後1~2時間の間にカフェインを飲むと、2型糖尿病や心疾患のリスクが減ることがわかっています。つまり朝のコーヒーは血糖値のコントロールがよくなるのでダイエットにもプラスです。ただし空腹にコーヒーは胃を荒らすため、朝食後に飲むのがおすすめです」(日比野さん)

ダイエットの語源はギリシャ語の「食事療法」。食べ方を上手に工夫すれば肥満解消の第一歩となる。
“走ればやせる”は正しい
太らないために重要なのは食べる以上に消費することで、カロリーの消費に最も有効なのが運動だ。その証拠に10人全員が何かしらの運動習慣がある。その中でも行っている人が多いのは走ることだ。
「ジョギングを始める前も、習慣的に1時間ほどのウオーキングをしていましたが、やせないという話を知人の医師にしたところ、ジョギングに変えればやせると言われたのです。
運動経験がまったくなかったので走るなんて想像もできませんでしたが、スクールに入って徐々に走れる距離を伸ばしたところフルマラソンまで達成でき、走り始めて1年で体重は10㎏減りました。“走ればやせる”は本当ですよ」(塩之谷さん)
運動のモチベーションの維持には、スクールのように人と一緒に行うのも有効だ。米ボストン在住の内科医、大西睦子さんも言う。

「毎週日曜日は近所の人と一緒にランニングをしています。ご近所の親睦も深められるし、お互いに励まし合ってポジティブにモチベーションを上げられるので続けられます」
運動の代表格であるウオーキングを行うことでいままで太ることとは無縁だったというのは、丸の内の森レディースクリニック理事長の宋美玄さんだ。

「歩くことを習慣づけるためにスマホの歩数計はいつも見ています。勤務時間以外は常に歩くことを意識して、週の平均が1万歩は超えるようにしています。そのおかげか肥満に悩んだことはありません」
パーソナルトレーニングを受けている医師も多い。
「単価は高いのですが、正しい筋肉の使い方や姿勢をマンツーマンで集中的に矯正してもらえるので、グループレッスンより運動による脂肪燃焼の効率が確実によくなります。
私はピラティスの指導を受けていますが、日常で姿勢を正しくすることで、体幹の筋肉をしっかり使って脂肪の燃焼がよくなっていると感じます」(慶田さん)

プールを活用する人が多いのは、水の浮力で関節への負担が減り、関節が痛い人でも続けやすいからだろう。イーク表参道副院長の高尾美穂さんが解説する。

「水泳は全身運動としても優秀ですが、同時に水着になることでいまの体形を確認することができることもメリットです。
私は毎朝体重計に乗っていますが、現状を意識することでサボる気が起きにくくなります」
そして運動を続けるなら、自分が楽しいと思えることを選ぶのがいちばんだ。
「楽しくないと続けることに努力が必要になるので、自分が楽しいと思える運動を探すのが結果的にダイエットのいちばんの近道です。
楽しければ長く続けられますし、運動をしている限りはずっと体形維持ができるのでおすすめです」(慶田さん)
プロでも失敗した食事制限
ダイエットを成功させるためには、“避けるべきダイエット“を知っておくことも大切だ。
すべての医師が口を揃えるのが「無理をしないこと」。shuko clinic院長の住吉周子さんは自身の経験を話す。

「私はダイエット食ではやせられませんでした。食事が大好きなこともあり、鶏もも肉をささ身にするなど健康的に置き換える程度は普段していますが、食事を制限したり、特定のものだけを食べ続けるようなダイエットは、ストレスによってすべて失敗しています。
自分が嫌なことや無理をしないといけないダイエット法は長続きしないので選ばない方がいいです」
無理なダイエットを続けるとストレスホルモンのコルチゾールの分泌量が増加。コルチゾールは食欲を増進させ、脂肪の蓄積を促進する作用もありダイエットの天敵だ。
さまざまなエステに通ってダイエット、体形維持を試みた結果、「他人にしてもらうダイエットはすべてやせない」と断じるのは、塩之谷さんだ。
「かなりのお金を使っていくつものエステに通いましたが、本質的にはやせませんでした。リンパが流れてむくみが取れて、一時的にスッキリ見えたりしますが、生活を変えない限り、すぐに元の体形に戻ります。エステの美容効果や心地よさは否定しませんが、ダイエットにはなりません」
そして数字に一喜一憂する人は“思い切って体重計に乗るのをやめる“のも手だと指摘するのは、日比野さんだ。

「摂取カロリーや体重の数字を追いかけてダイエットをしていたときは、300g体重が増えただけでカロリーのないこんにゃくばかり食べ、代謝が落ちて余計に体重が減らなくなったり、栄養不足で肌艶が悪く老け込んだりしました。やせたとしてもすぐにリバウンドを起こして太ってしまい、ひとつもいいことがありませんでした。
その経験から理想の体形を目指すときには、細かい体重管理は重要ではないと気がついたのです」
体形が維持できているか参考になるのが服のサイズだ。体にフィットしたパンツが窮屈に感じるなら、太り始めの兆し。反対にゆるくなってきたらやせてきている証拠となる。体重が気になってイライラしてしまうなら、測らないのもひとつの方法なのだ。
継続は力なり。目新しいダイエット法に心奪われることなく、無理なく楽しめることを続けながら理想の体形を維持して、体重の悩みから解放されよう。
宋美玄さん(丸の内の森レディースクリニック理事長)
・1週間の歩数は必ず7万歩以上
・腸活を行い、家では野菜中心のメニューを腹八分、飲酒は極力控えている

・食べすぎたら、翌日はカロリーを控えるなど1週間のトータルでカロリーと栄養のバランスを考える
高尾美穂さん(イーク表参道副院長)
・お腹がすいてから食事をとる。メニューは満腹感を得られるたんぱく質を多めに
・毎朝体重計に乗る
・プールに行き水着を着る機会を持つ
石原新菜さん(イシハラクリニック副院長)

・食事は小食を意識して、健康的なメニューにしている
・温活として常に腹巻きを身につけている
・仕事上がりは、ジムで5、6㎞のランニングを行い、銭湯でサウナに入る
本間良子さん(スクエアクリニック院長)

・起床後15分の骨盤ストレッチ
・週1回トレーナーの指導で、自重トレーニングを90分行う
・食生活はグルテンフリーやカゼインフリーを意識、週末にはプチ断食を取り入れている
田中亜希子さん(あきこクリニック院長)

・朝食をとらないことで食べすぎを防止
・滑りにくい加工がされたバランスボールを日常的に愛用している
・歩いたり、エレベーターを使わず階段の上り下りをして運動の機会を確保
慶田朋子さん(銀座ケイスキンクリニック院長)
・基本的に食事は3食とも自炊で、おかずを中心に炭水化物は少量にして、お酒は飲まない
・外食時も1日のトータルカロリーを考えてメニューを選ぶ
・月に3回、1回2時間半のジャズダンスを30年、1回1時間のピラティスのパーソナルトレーニングを10年続けている
住吉周子さん(医療法人美周会shuko clinic院長)
・週2回30分のスイミング、その後はサウナで血行をよくする

・週1回1時間ほどパーソナルトレーニングでヒップアップトレーニングをしている
・食事制限はしていないが、外食したときは必ず1~2駅分程度は歩く
日比野佐和子さん(SAWAKO CLINIC x YS統括院長)
・食べすぎたと思ったら16時間ほどのプチ断食を行う
・食べる順番は炭水化物を最後に。白米やパンなどの白い炭水化物は極力食べない
・朝にコーヒーを飲む
・ストレッチを1日30分は行う。音楽のライブ動画のダンスを真似て30分ほど体を動かす
大西睦子さん(内科医・米ボストン在住)
・週に3回はランニングを行う。毎週日曜日は近所の人と一緒に走ってモチベーションアップ
・炭水化物は摂りすぎないように、食物繊維の豊富な野菜や果物、良質なたんぱく質の魚や鶏肉、大豆製品を意識して食べている
・毎日7時間睡眠を確保するように努めている
塩之谷香さん(塩之谷整形外科院長)
・月40〜50kmをゆるい目標にランニングを週3回行う
・糖質制限を心がけ白米やパンなどの炭水化物は摂らない。玄米なども1食につき茶碗に半分程度に抑える
・小腹が減ったときはキャンディーやチョコレートをひとかけ口に入れてがまんしない
※女性セブン2025年9月4日号