健康・医療

《医師が選んだ本当に頼れる病院 狭心症・心筋梗塞編》症状が出たら一刻も早い治療が必要 “カテーテル治療”“バルーン治療”のメリット・デメリットを解説 

本当に頼れる病院の見極め方とは(写真/PIXTA)
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 日本人の死因第2位は「心疾患」。ひとたび心臓が動くのをやめてしまえば、待っているのは死だ。しかし、心臓の声に耳を傾け、わずかな異変を見逃さない病院との出会いが、運命を大きく変える。あなたの“生涯のパートナー”を守る病院は、こうして見つけられる。ジャーナリスト・鳥集徹氏と本誌・女性セブン編集部が、心血管疾患について“本当に頼れる病院”の見極め方を取材した。【全3回の第1回】

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 あなたが眠っている間も力強く拍動し、体の隅々まで血液を送り届けているのが心臓だ。心肺停止にならない限り、命が尽きる瞬間まで一秒たりとも休むことなく働き続ける。

 だが、こんなにタフな心臓も、加齢とともに働きは衰えていく。時にそれを〝修復〟しなくては、命にかかわることも少なくない。特に注意が必要なのが、冬のこの時期。寒暖差による血圧の乱高下や、普段と異なるリズムで過ごす年末年始のストレスで、心血管疾患のリスクが上昇する。動悸、息切れ、呼吸困難、胸の痛み・圧迫感、むくみ、倦怠感・疲労感、めまい、失神などの症状が現れた場合には、一度心血管疾患を疑って医療機関を受診してほしい。

 薬だけでコントロールできる場合もあるが、病状が重い場合にはカテーテルや手術による治療が避けられない。だが、がんや脳疾患と同様に、その技術力には病院によって差があるのが実情だ。治療に失敗すれば命に直結するだけに、安全性を重視して、医療機関を選ぶ必要がある。

 そこで心血管疾患の専門医である「心臓血管外科医」と「循環器内科医」にアンケートを実施。「あなたや家族がその病気なったときにかかりたい病院、あるいはかかりたくない病院」について尋ねるとともに、頼れる病院の見極め方を取材した。

 心血管疾患には「虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)」「心臓弁膜症」「大動脈疾患」「不整脈」「心不全」などがある。これらのうち今回は、大がかりな治療を要することが多い虚血性心疾患、心臓弁膜症、大動脈疾患を中心に解説した。後悔のない病院選びの参考にしてほしい。

【狭心症・心筋梗塞】治療時間の短縮が合併症リスクを減らす

 心臓の表面には、心臓を動かす心筋に酸素と栄養を供給する非常に重要な血管が走っている。大動脈から伸びる3本の太い血管と、そこから枝分かれした細い血管からなり、心臓の表面を冠のように覆っている「冠動脈」だ。

 この冠動脈が一時的に狭くなって心筋が酸素不足に陥り、運動したときなどに胸痛や圧迫感が出るのが「狭心症」。一方、動脈硬化のために「プラーク」と呼ばれる瘤が血管内にできて血液が流れにくくなり、その先の心筋が壊死してしまうのが「心筋梗塞」だ。後者は、放置すると心筋の壊死部分が広がり、心臓発作で突然死してしまうこともある。したがって症状が出た場合には、一刻も早い治療が必要だ。

 狭心症の発作や心筋梗塞の進行を抑えるためには、血管を拡張させるニトログリセリンや血圧と心拍数を抑えるβ遮断薬などによる薬物療法が行われる。だが、血流量が一定以下になっている場合(FFR:冠血流予備量比で0.8以下)や、急性心筋梗塞を起こして命にかかわる場合には、物理的に血流を再開させる治療が行われる。

 その方法は2つ。1つが「経皮的冠動脈インターベンション(PCI)」と呼ばれる心臓カテーテル治療。もう1つが「冠動脈バイパス手術」と呼ばれる心臓手術(開心術)だ。心臓カテーテル治療を専門とする、わかまつインターベンションクリニック院長の阿部亘医師が解説する。

わかまつインターベンションクリニック院長の阿部亘医師
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「PCIは、X線画像を見ながらカテーテル(細い管)を手首や足の付け根の動脈から挿入して冠動脈まで到達させ、血流を再開させる治療法です。カテーテルの中に通したガイドワイヤーを操作しながらバルーン(風船)を膨らませて血管を広げたり、石灰化して硬くなったプラークを特殊なドリル(ロータブレーター、ダイヤモンドバックなど)やレーザーで砕いたりします。

 血流を再開させた後は、多くのケースで『ステント』と呼ばれる網状の金属の筒を血管内に留置し、治療した部分を補強します。かつてはステントの内部で細胞が増殖して再び血管が狭まる『再狭窄(さいきょうさく)』が発生することも多かったのですが、それを防ぐ薬を塗った『薬剤溶出ステント(DES)』が開発され、再狭窄率は5%以下に減少しました」

 一方、胸の裏側にある「内胸動脈」をはじめ、腕、足などの動静脈血管を冠動脈に移植し、詰まった部分を迂回して血が流れるようにするのが「冠動脈バイパス手術」だ。

 PCIとバイパス手術のどちらを選ぶべきか。日本循環器学会と日本心臓血管外科学会が作成した診療ガイドラインによると、複雑な病変が複数ある場合や、糖尿病などの合併症がある場合などは、バイパス手術が推奨される。ただ、PCIの技術の発展もあって、現在はカテーテルで治療されるケースが圧倒的に多い。阿部医師が続ける。

「カテーテルのいいところは、なんといっても回復の早さ。治療後はすぐ歩いて病室へ戻れます。治療時間も1時間〜1時間半と、なるべく早く終わらせるようにしています。カテーテルを入れている時間が長くなると血栓ができやすくなり、脳梗塞や虚血に影響される術後心不全、不整脈といった合併症のリスクが上がる。そうしたトラブルを減らすためにも、治療時間を短くすることが重要です」