
高齢化が進む中で、認知症の患者数は年々増加。いまや80代以上の「3人に1人」が認知症、「4人に1人」が軽度認知障害を発症していると推計される。決して他人事ではなく、自分はもちろん家族がいつ認知症になるかは、誰にもわからない。認知症になってから取り返しがつかなくなる前に、元気なうちに知っておくべきこと、対応しすべきこととは。【全5回の第4回。第1回から読む】
認知症になる前の相続対策の第一歩は「財産の棚卸し」
認知症の診断がおりると、預貯金や不動産といった財産を家族の意思で引き出したり、売ったりすることはできなくなる。このため、認知症になる前の相続対策の第一歩として「財産の棚卸し」をしておくべきだ。プレ定年専門ファイナンシャルプランナーの三原由紀さんが言う。
「まずは現金や預貯金、有価証券や不動産などすべての資産を洗い出し、リストにします。このとき、ローンや負債などマイナスの資産も忘れずに書き出してもらいましょう」
認知症になってからでは銀行口座の解約も難しくなるため、多数ある場合は元気なうちに1、2行にまとめておく。
そして、棚卸しが終わったら、亡くなったときにそれらの財産を誰に、どう分けたいかを考え、相続人全員に共有してもらうのが望ましい。司法書士の椎葉基史さんが指摘する。

「相続税がかからなければ本人の意向で決めるのが基本ですが、受け取る側が揉めないように“なぜこの分け方にしたか”の説明が求められます。本人の独断で決めるのではなく、認知症になる前に、家族を交えて相続について話し合うのがもっとも理想的です」(椎葉さん・以下同)
その家族会議は一度で終わらせるのではなく、何度か回を重ねて精査してほしい。財産が複雑だったり、人数が多かったり、感情的になりそうだったりするなら、専門家などの第三者を同席させるのも1つの手だ。
そうして話し合った内容は、認知症になって手続きができなくなる前に、法的効力を持つ遺言書にしておくのがベスト。だが、ほかの手もある。
1つが「任意後見人」を選ぶこと。認知症になった際、財産の管理などを行う後見人を、家族や親族の中から選ぶことができる。
もう1つが「家族信託」の契約だ。
「家族や親族と財産管理の契約を結ぶ制度で、後見人とは違って、本人が元気なうちから信託を受けた人が財産を管理することができます。本人が亡くなった後は、先々の財産の使い道まで指定することができるのも、後見人との違いです」


(第5回に続く。第1回から読む)
※女性セブン2026年3月12日号