
現在、日本国内で承認されている漢方薬は、医療用が148種類、一般用が294種類に及ぶ。その中で、もっとも親しまれ重宝されているのが葛根湯だ。しかし、その真価は“風邪のひき始め”だけではない。長く家庭の常備薬として親しまれてきた葛根湯の、知られざる実力を大解剖。
2月下旬に訪れた季節外れの暖かさとともに、花粉の飛散が一気に本格化した。今後さらに飛散量が増加し、3月上旬にはピークを迎える見通しだ。止まらない鼻水や目のかゆみ、のどの痛みといった症状に悩まされ、春めく陽気に反して、憂鬱な気持ちで過ごす人も多いだろう。
実は、こうしたつらい花粉症の症状に有効な漢方薬がある。「風邪のひき始め」に重宝される葛根湯だ。漢方薬剤師の樫出恒代さんが話す。
「葛根湯は体を温め、血行をよくして免疫力を高めます。発汗作用もあり、風邪の初期症状に効くのはそのためです。免疫細胞が活性化することで細菌やウイルスを排出し、花粉症はもちろんさまざまな病気にかかりにくくする効果や、悪化を防ぐ働きが期待されます。また、炎症を抑える、痛みを鎮めるなどの効能もあり、頭痛や肩こりにも効くとされます」
つらい症状も30分ですっきり改善
そもそも葛根湯とは、「葛根」「麻黄」「桂皮(シナモン)」「芍薬」「甘草」「大棗(なつめ)」「生姜」の7種類の生薬を配合した漢方薬のこと。これらの生薬がバランスよく組み合わさることで諸症状に効果を発揮する。その歴史は古く、中国では約2000年前から最古の生薬として用いられており、日本でも「万能薬」として普及した。

「古典落語には、江戸時代、頭痛にも肩こりにも、最後には患者の付き添いにまで、誰にでも葛根湯を処方する『葛根湯医者』という演目があります。それほど古くから日本人に親しまれてきたということでしょう。
医療が発達した現代においても葛根湯は万能で、私はよく『首から上の炎症全般に効く』と患者さんに説明しています。風邪に限らず、肩こりや五十肩、じんましん、中耳炎にも即効性が高い。花粉症の目のかゆみや鼻水、のどの痛みも、葛根湯をのむと、体質に合っていれば、30分から1時間で症状がすっきり治まるとされます」(樫出さん・以下同)
さらにほかの生薬をプラスすることで、より幅広く力を発揮するという。
「例えば、慢性鼻炎の人には、葛根湯に血の巡りをよくする川キュウ(キュウは草かんむりに弓)と、鼻の通りをスッキリさせる辛夷(こぶし)を加えた『葛根湯加川キュウ辛夷』を用いることもあります。上手に使えばマルチに効果を発揮するのが葛根湯のいちばんの魅力です」