
便秘の症状を訴える人の割合は、65才を超えると、全年代に比べて約2倍に増加。大腸がんの発見率は、35〜39才と40〜44才では後者が約2倍多いという。糖尿病などの生活習慣病や認知症、果ては大腸がんの罹患リスクにつながる腸の老化。医師が教える、腸を若返らせるルーティーンを実践しよう。
就寝直前の食事で肌荒れ、冷え、肥満も
食べるものの種類に気を配るだけでなく、食事や水分を体に入れるタイミングにも注意するべきポイントがある。まず朝起きてすぐにやるべきこととはなにか。消化器病専門医で犀星の杜クリニック六本木院長の川本徹さんが、患者にすすめると同時に自分自身も続けているというルーティンを教えてくれた。
「朝起きた後に水や炭酸水をコップ1杯飲むことにしています。寝ている間に空腹になったところへ水分が入ってくると、腸が大きく動き出して便を排出しようとするのです。こうしてぜん動運動を促して排便をよくする生活リズムをつくるとよりいいですね。私の場合は習慣化されているので、朝食を食べずとも排便できるリズムができています」
水を飲む代わりに、温かいオリーブオイルココアを飲むとさらに効果が期待できるというのが消化器内科専門医で、松生クリニック院長の松生恒夫さんだ。
「温かいココアにエクストラバージンオリーブオイルを加えると、豊富な食物繊維とポリフェノールの効果で、排便効果と整腸効果が期待できる。300mlほど飲めばお腹がいっぱいになり、昼食まで満足感を維持できます」(松生さん・以下同)
炭酸水やココアを飲んだ後には、朝食をしっかりとるのも忘れてはいけない。仕事や家事、趣味に追われて朝食を抜いてしまう人もいるだろうが、腸の若返りだけでなく、アンチエイジングや美容にも朝食はしっかりとるべきだという。
「私のクリニックで便秘を訴えるかたのうち、1日の食事回数が2回以下だというかたが40%以上でした。朝食はぜん動運動を起こして排便のスイッチを入れる大事な要素です。朝食を食べることで胃から腸へと信号が送られ、直腸への反射を促して排便につながる。
朝食はパンやご飯など固形物をしっかりかんで食べて、昼は野菜が豊富なバランスのいい定食を選ぶ。夕食は少し控えめにするくらいがちょうどいいと思います」
夕食をとる時間も、睡眠中の体の調子に大きな影響がある。就寝の3時間前までにはすませておかないと、睡眠の質が下がるばかりか、さまざまな体調不良を引き起こしてしまう。
「睡眠中には、腸管を動かして消化活動を促すモチリンというホルモンが分泌されています。これは空腹時にしか分泌されないため、寝る直前に食べ物を体に入れることで、腸内の掃除が不充分になってしまう。老廃物や便が排出されずに残り続けると、肌荒れや体臭、冷え、肥満にもつながってしまいます」
毎日の食事ルーティンのほかに、週単位で食べるものを調整する若返り方法もある。近年ではソーセージなどの加工品はもちろんのこと、牛や豚などの肉食が胃や腸を消耗させたり、動脈硬化を促進するともいわれる。しかし、肉から摂れる栄養素もあるうえに、急に食べるのをやめるのもよくない。そこで松生さんが提唱するのが、“プチ菜食主義”である。
「曜日を決めて、たとえば週に2日だけ肉を食べず菜食主義になることをおすすめしています。脂肪やコレステロール値のコントロールがしやすくなり、心筋梗塞などの心疾患、脳血管疾患、がんなどのリスクを無理なく減らすことにつながります」

お風呂や温泉でも腸内細菌が変化
体に入れる食品やタイミングの改善に加えて、簡単な運動をすることでさらなる若返りを目指すことができる。加齢で衰えた筋肉を「へそ見エクササイズ」で鍛えることで、腸だけでなく足腰の不調も予防できるという。
「『へそ見エクササイズ』はあお向けに寝て、両ひざを立て、へそが見えるところまでゆっくり上半身を起こす動きです。10秒キープしてゆっくり頭を戻す。これを10回行うのが目標です。
排便時に力を入れる腹直筋が鍛えられることで、腸のぜん動運動を起こしやすくして、排便のしやすさもアップできます。朝起きて布団やベッドから出る前に行うと習慣化しやすいでしょう」
運動不足でこの動きが難しい場合は、うつ伏せで寝るだけでも似た効果が得られるという。
「朝起きたら寝ころんだまま、10分間うつ伏せの姿勢になって、腸を圧迫します。この状態は副交感神経が刺激されますが、腸が圧迫されているのでぜん動運動が起きにくい。10分経ったらぱっとあお向けになると、腸が解放されて一気にぜん動運動が始まるのです」(川本さん)

お腹の張りや便秘を改善するためには、体を温めて血流をよくすることも大切だ。エッセンシャルオイルを使ったアロマテラピーも効果的だ。
「お腹にガスがたまる腹部膨満感にはペパーミントのエッセンシャルオイルを1滴垂らしたお湯にタオルをつけた温湿布が有効です。メンソールと温熱の相乗効果で腸の働きがよくなる」(松生さん・以下同)
同様に、入浴も血流を促すが、さらに腸を活発にしてリラックス効果を高める方法が「腸もみ入浴」だ。
「ぬるめのお湯でゆっくり半身浴をして体を温めると、腸の運動が活発になりガスの排出がよくなり、腹部膨満感が軽減します。加えて週に1〜2回、湯船のなかで腸もみマッサージ(上表参照)をすると、腸の動きがさらによくなります」
家での入浴に加えて、良質な温泉につかることで腸内環境がよくなる可能性もあるという。内藤さんがある研究について語る。
「別府温泉にて、泉質が異なる5種類の温泉の入浴前後で、腸内細菌叢の変化を分析した研究があります。毎日20分以上、7日間連続で温泉に入浴したところ、泉質によって腸内細菌叢に変化があったそうです。炭酸水素塩泉でビフィズス菌の一種が増えたり、単純泉や硫黄泉で複数の菌が増えたと報告されています」
専門医たちが解説してくれたルーティンを今日から始めて腸寿を目指そう。
(前編はこちらから)
※女性セブン2026年4月16・23日号