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《デジタル地域通貨活用ガイド》知ってお得な自治体主導のキャッシュレス決済システムを徹底解説

バーコード決済をしている
自治体が実施しているデジタル地域通貨に注目(写真/Photo AC)
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物価高が止まらないいま、少しでもお得に買い物をしたい。そんななか、注目されているのが自治体主導のキャッシュレス決済サービス「デジタル地域通貨」(通称・地域ペイ)だ。還元率が30%の地域もあり、消費者にうれしいサービスだがどういう仕組みなのか。よりお得に使いこなす方法とともに、徹底解説する!

東京都渋谷区「ハチペイ」

2022年11月、サービス開始。消費者、加盟店ともにほとんどの手数料が無料という、全国的にも珍しい試みで急速に普及。定期的に大規模なポイント還元キャンペーンを展開。渋谷区民以外も利用できる。

独自のシステムで普及率は全国屈指!

地域ペイのなかでも、東京都渋谷区が実施する「ハチペイ」は、利用者数、加盟店数、決済額が右肩上がりだと話題になっている。2024年度の決済流通額は110億円を超えた。

「ハチペイ導入以前は、ソフトバンクのPayPayを利用してキャンペーンを展開したこともあります。しかし、PayPayを使うとなると、渋谷区の加盟店が高額の手数料を支払わなければなりません。さらに、還元されたポイントはあくまでPayPayのポイントですから、渋谷区以外で使われてしまい、二次使用による経済効果を区が享受できない問題がありました。これらの課題を解消すべく、独自の地域ペイを2022年に立ち上げました」(渋谷区産業観光文化部長の加藤博是さん)

その後、「30%還元」などインパクトのあるキャンペーンを打ち出し、区民以外も利用できるようにして登録者数を増やした。

「ハチペイ」アプリトップ画面
「ハチペイ」アプリトップ画面。専用アプリをダウンロードし、アカウント登録。チャージはクレジットカードやセブン銀行ATM、区役所など渋谷区内の施設に設置してあるハチペイ専用チャージ機から可能
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区民は8%、区民以外でも4%還元

「通常のポイント還元率が区民は8%、区民以外も4%と高還元率に設定。加盟店のハチペイ導入の初期費用をはじめ、決済や換金にかかる手数料はゼロにしました」(加藤さん)

加盟店の決済手数料無料は全国的にも珍しく、行政機関だからこそ可能な試みだ。民間のキャッシュレス決済では、店舗が支払う手数料は3~7%が相場。これがゼロになるのは、小規模店舗ほどありがたく、加盟店を増やす大きな理由となった。

ハチペイの加盟店目印
加盟店には上記目印が。加盟店数は2025年12月時点でおよそ5000店
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さらに、ユニクロや一部のモスバーガー、ドトールコーヒーショップ、タリーズコーヒーなど、小規模店舗だけでなく大手チェーン店でも使えるのが大きな魅力だ。渋谷区内で飲食、買い物をする人は、利用登録しておきたい。

「地域ペイ」リスト
代表的&お得度の高い「地域ペイ」の一部を紹介!自分の地元にあるのか要チェック
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岐阜県高山市・飛騨市・白川村「さるぼぼコイン」

2017年12月よりサービス開始。地元金融機関の飛騨信用組合が発行する国内初の地域ペイ。飛騨地域の20~70代のおよそ3人に1人が利用しているという高い普及率を誇り、地域住民以外も使える。

地域ペイの“元祖”として地域に定着

岐阜県高山市・飛騨市・白川村で普及する地域ペイ「さるぼぼコイン」。その決済時に流れる「あんと~」という音声は、飛騨地方の方言で「ありがとう」の意味。この3地域では大手決済サービスの「PayPay」などよりも「あんと~」の決済音が浸透。多くの店舗から聞こえてくるという。

「さるぼぼコイン」アプリ画面
「さるぼぼコイン」アプリ画面。決済は店舗のレジにあるQRコードを専用アプリで読み取り、支払い金額を入力。「ポイントを使用する」をONにしておくと保有ポイントが優先的に支払われる。加盟店はアプリ内の「探す」機能で地図から検索できる
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そもそも、さるぼぼコインはPayPayが誕生した’18年より早い2017年に運用を開始した。地域ペイの先駆け的存在で、昨年末の時点でユーザー数は3万5000人超。これは飛騨地域の20~70代人口の約34%に相当する。いまでは月の平均決済額は約2億円、累計決済額は約150億円にのぼる。運営を手掛けるのは、地元金融機関の飛騨信用組合だ。

「導入の背景には、人口減少や地域経済の縮小への危機感がありました。地域の中でお金を循環させ、外に流出させない仕組みを作ることが目標でした」

とは、飛騨信用組合経営企画部の高原信人さんだ。地域経済の活性化に主眼を置き、「お金の地産地消」を実現するため、店舗や住民へ丁寧なサポートを重ねて普及に努めたという。

「初期費用無料など、小規模店舗も導入しやすい仕組みで加盟店を増やしました。高還元キャンペーンのほか普段のチャージでも1%還元など消費者にとって魅力のあるサービスも行っています」(高原さん・以下同)

専用チャージ機
飛騨信用組合口座、セブン銀行ATMほか、専用チャージ機からチャージできる
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飛騨地域は国内有数の観光地だが、以前はキャッシュレス決済に対応していない店舗が多く、観光客から「不便」という声も上がっていた。しかし、さるぼぼコインの導入により、この課題も解決に向け進展した。

「スマホひとつで決済でき、観光客の利便性も向上。地域内の消費拡大にもつながっています。観光客の再来訪を促すため、利用するごとにコインの有効期限が延長する仕様としています」

行政との連携も進み、子育て世帯への給付金や各種支援策をコイン(デジタル通貨)で支給する取り組みも行われている。

さるぼぼコインのポップ
さるぼぼコインを導入している店舗
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いつ終わるかわからないからいま使うべき

神奈川県寒川町ではいま、提携店での支払いを「さむかわPay」で行うと、20%ポイントが還元される。クレジットカードの基本還元率が0.5%前後なのと比較すると破格の還元率だ。

「こうした地域ペイはいま、税金を原資に全国で展開されています」

とは、ポイ活に詳しい菊地崇仁さんだ。地域ペイは、コロナ禍に誕生したケースが多いという。

「新型コロナウイルスの感染拡大で影響を受けた地域経済や住民生活を支援するため、’20年に国が新たに創設した交付金に『地方創生臨時交付金』があります。これは、都道府県や市区町村が地域の実情に応じて比較的自由に活用できる財源。そこで消費喚起や事業者支援の一環として、地域ペイやプレミアム商品券などを導入する自治体が増加したわけです」(菊地さん・以下同)

地域ペイは、利用できる場所を「地域内の加盟店」に限定することで、地元の店舗で消費が循環するようにしたシステムだ。高還元キャンペーンやクーポンなどで来店を促し、地域経済の活性化と中小事業者の売り上げ向上を支援している。

「コロナ収束後は『物価高騰対応』へと名目が変わったものの、いまも国からの交付金は続いています。しかし交付金があくまで臨時のものである以上、地域ペイはいつ終わってもおかしくありません。だからこそ恩恵が受けられるいま、活用しておくべきです」

「地域ペイ」リスト
掲載されていない自治体でもやっているので、この機会に調べてみて!
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既存決済アプリのキャンペーンの場合も

地域ペイは、上記「ハチペイ」や「さるぼぼコイン」、「さむかわPay」のように、自治体等が独自にシステムを作っているケースもあるが、PayPay、auPAY、d払いなど大手通信会社のプラットフォームを利用し「地域キャンペーン」という形で打ち出していることも多い。

「後者の場合、居住する自治体がキャンペーンをやっているかは、各キャッシュレス決済アプリの『おトク情報』『キャンペーン』などのページに掲載されているので確認してみましょう」

店舗も消費者もお得なサービス。使わない手はない。

◆「ポイ探」代表取締役・菊地崇仁さん

クレジットカードを約100枚保有し、ポイントをお得に貯めるための情報を研究・発信するポイ活の達人。著書に『新かんたんポイント&カード生活』(自由国民社)など。

※掲載情報は2026年3月26日時点。

取材・文/植木淳子

※女性セブン2026年4月16・23日号