《元気に長生きするために》加齢で心身が衰えた状態『フレイル』の予防と対策 高齢者が陥りやすい孤立による“社会的フレイル” 人との交流を積極的に持つことで回避を

“人生100年”と言われる時代が到来。ますます長くなる人生だからこそ、元気に楽しく年を重ねたい。では、健康寿命を伸ばすためのは、どんな生活習慣が好ましいのか。そこで、長寿を研究する専門家に、日々の習慣を聞いた。【全3回の第2回。第1回を読む】
近年、健康長寿における「腸」の役割が大きく注目されている。体の免疫細胞の7割が存在する腸の環境を整えることは長生きに直結するため、日々の腸活こそ“最強の長生き習慣”ともいえるだろう。お茶の水健康長寿クリニック院長の白澤卓二さんが説明する。
「添加物や加工食品は腸内細菌のバランスを乱し、悪玉菌を増加させて、腸壁を傷つけることが指摘されています。日本人の体に合うといわれる発酵食品を毎日の食事に取り入れ、腸内を整えましょう。特に納豆などの植物性発酵食品は腸との相性が抜群。私もサラダに入れて毎日食べるようにしています」
食事について気をつけるべきは食べ物の種類だけではない。量もまた、寿命を左右する。慶應義塾大学医学部百寿総合研究センターでセンター長を務める新井康通さんは、こう話す。
「肥満は寿命を縮める大きな要因となるため、太らないことは健康長寿につながります。過去に行われた百寿者の研究では、40~60代で腹八分目を意識していた人が多いことが報告されています。
ただし、それも65才以降は少し考え方を見直すことが重要です。70才以降は、むしろやせすぎに気をつけなければいけません。フレイルなどに直結するほか、免疫力が低下してさまざまな病気にかかりやすくなってしまいます。
65才を過ぎたら、体格や健康状態に応じて、適切な栄養をしっかり摂ることを意識してください」
また、食事の際はよく噛むことを心がけたい。
「咀嚼によって脳に刺激が入り、唾液が分泌されます。唾液の中には健康を維持するための重要なホルモンや酵素が含まれるため、唾液をしっかり出す必要がある。年を重ねると唾液量が減少するため、充分な咀嚼や水分をしっかり摂ることが重要になります」(白澤さん)
長生きか早死にか、寿命をわけるうえで、よく噛むために口腔環境を整えることも必須となる。歯周病や噛み合わせの悪さを放置することは、咀嚼を妨げ、栄養素の吸収や腸内環境を悪化させるばかりか、血液を通して歯周病菌が脳に達し、認知症の原因になることも明らかになっている。
社会的フレイルで身体機能が低下する
元気で長生きするためには、加齢によって心身が衰えた状態を指す「フレイル」の予防と対策が重要だ。フレイルには「身体的」「心理的」「社会的」の3種類があり、それぞれが連鎖していくことで老いが急速に進み、自立度を低下させる。
「育児や仕事を終えた高齢者が陥りやすいのが、社会的孤立による社会的フレイルです。家にこもって社会とのつながりが希薄になると、気が滅入り落ち込みやすくなり老人性うつのリスクが上がってしまう。そうすると身体活動も低下し、ますますフレイルが加速します。
年を重ねれば重ねるほど、人との交流を積極的に持つことが心身の健康のためにとても大切なのです」(新井さん・以下同)
人と交わることや外出を楽しむことには、生活に張りを生む効果もある。
「刺激が少ない生活を続けていると生活リズムが乱れ、メンタルも不安定になりやすい。元気なシニアはみんな生活リズムがしっかりしています」
規則正しい生活をすることで体内時計が整い、睡眠の質が高まる。朝もスッキリ目覚め、活動的な一日を過ごせるという好循環が生まれる。睡眠時間について医師たちは、「充分な睡眠」が寿命を延ばし、「睡眠不足」が健康リスクを高めると口を揃える。
「仕事で遅くなることが多いものの、だんだん無理がきかなくなってきたので、6時間は寝るようにしています。昔は朝方まで起きていましたが、翌日のパフォーマンスも落ちるので眠くなったらしっかり寝るようにしています」
90才にして現役で医療現場に立ち、帯津三敬病院の名誉院長を務める帯津良一さんも言い添える。
「私は毎日21時を過ぎたら寝るようにしていて、午前3時半に起きます。結果的に早寝早起きですが、自分のリズムに合っていれば、そこまで神経質にならなくてもいい。昼寝をしてもいいので、睡眠時間をきちんととることを重要視しましょう」

(第3回につづく。第1回を読む)
※女性セブン2026年4月30日号