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スパルタすぎる父の教え《戦い続けている限り、負けじゃない》【第3話後編】『YES!逆張り人生~高須克弥物語~』

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すべて想像の逆を行く男、高須克弥の破天荒な人生を描く連載『YES!逆張り人生~高須克弥物語~』!  読めば悩みが全て吹き飛ぶ、そんなパワフルすぎる人生を、どうぞご堪能あれ。

第3話:いじめられる原因と父の話【後編】

女ばかりの高須家に婿養子として入った、父の省吾(右から克弥、省吾、妹、祖母のイマ)。(本人提供)
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 克弥の父、省吾は隣町の貧乏医の5男で、その家も省吾を含め全員が医者だった。娘の結婚相手として「こいつでいいや」と義母、イマに選ばれたのが運の尽き。省吾はイマが圧倒的権力を持つ高須家に、婿養子という最弱の立場で存在していた。

「登代子は高須病院の本院、省吾は離れた分院でもやっておれ」

「女は男の3歩後ろを歩くもの」という時代に、この扱いは省吾からしたらたまったものではない。しかしイマの決定には誰も逆らえない。ちなみにイマの夫、克弥の祖父も医者だったが、浮気がバレて家を叩き出された。その際にイマは日本刀を持って、逃げる夫を隣町まで追いかけたというから、まあそりゃ逆らえるはずがない。

 高須家にはそのイマ、母の登代子、克弥の妹、お手伝いさん、家庭教師がいて、その全てが女性だった。不思議なことにこの女性たちは何をするにしても意見がピッタリと一致して、連合軍として攻め込んでくるので男の省吾は逆らえない。それでも克弥を100年ぶりの男子として甘やかす女たちの中で唯一、スパルタ教育を実践したのが省吾だった。克弥が泳げないと聞けば川に放り込み、いじめっ子に仕返ししたいと相談されれば「殺してこい」とバットを渡した。克弥が「無理だ」と泣きつくと、省吾は真顔で言う。

「殺してくるか、今ここで俺に死ぬほど殴られるか、選べ」

──なんで、そうなるの?

 克弥が理不尽すぎる選択肢に固まる。

「行ってこい、克弥。もしやられても戦い続けろ。戦い続けとる限り負けとらん」

* * *

 小学5年生の時の担任は40代の男性だった。当然克弥は目の敵にされ、体罰三昧の日々を送っていたが、その教師は一向に態度を改めない小太りな少年を見て一計を案じ、廊下に立たせて孤立させるという陰湿な作戦に切り替えた。これでは克弥も担任を小バカにしようがない。

 “嫌み”という唯一の武器を取り上げられ、落ち込む克弥は父親に相談した。すると省吾は引き出しから短刀を出して言う。

「これは肥後守という名刀だ。殺してこい」

 何かあれば解決策は「殺してこい」なのだから、最早スパルタでもなんでもない。

「ほ、本当にやるの?」

「やれ。責任は取ってやる」

 これで克弥の退路は完全に断たれた。

 その日も担任は克弥を朝からずっと無視し続けた。我慢の限界に達した克弥はついに肥後守を手にする。殺気を感じた担任が叫ぶ。

「なんだ、それは! 刺すつもりか?」

 克弥は黙って立ち上がる。担任は一瞬怯んだが、よく見れば相手は白ブタと呼ばれる少年である。脅せばどうにかなるはずだ。

「よし! 刺せるもんなら刺してみろ!」

 大人の怒号に、少年は静かな声で応える。

「‥‥いいんですね?」

 担任はゾッとした。その刹那、短刀を前に突き出し、少年が大声を出して自分に向かって走ってくる。

「うおおおおおお〜」

 しかし一向に近づいて来ない。デブ故に恐ろしく足が遅いのだ。

「やる気あんのか! このヤロー!」

 恐怖が怒りに変わった担任は、克弥の短刀を叩き落とし、横っ面をぶん殴った。そして倒れた克弥に馬乗りになってボコボコにした。

 家に帰ると、冗談のように腫れ上がった克弥の顔を見た省吾が聞いた。

「負けたんか?」

「ううん。負けてない。降参してないからまだ負けじゃない」

 腫れた口でモゴモゴと話す息子を見て、省吾は満足そうに笑った。

* * *

 そんな父は克弥が12歳の時に41歳で亡くなった。母はより忙しくなり、隠居していた祖母、イマが父親として克弥に接する時代が幕を開ける。高須クリニック開業の19年前の出来事である。(第4話につづく)

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【プロフィール】
家守鷹主(いえす・たかす)/テレビ局プロデューサーとして高須克弥氏と出会い、十数年来の友人。今回、その人生を小説として描きたいと依頼したところ、高須氏は一言“YES”と快諾し、ペンネームも命名。かくして、希代の人生物語が幕を開けた。

高須克弥(たかす・かつや)/1945年、愛知県生まれ。医師(美容外科、整形外科、形成外科。学位は医学博士)。2018年に自身の全身がんを公表(発病は2014年)。

※女性セブン2026年6月18日号