
すべて想像の逆を行く男、高須克弥の破天荒な人生を描く連載『YES!逆張り人生~高須克弥物語~』! 読めば悩みが全て吹き飛ぶ、そんなパワフルすぎる人生を、どうぞご堪能あれ。
第5話:イエスなる出会いの話【後編】
同郷という奇跡に興奮した二人は授業終わりに喫茶店に行くことにした。彼女の名前は星野シヅ。聞けば実家は三河の開業医であるという。ハキハキと話し、よく笑う。初対面の克弥と話すことに緊張はまるでないようだ。
淀みなく流れる会話と時々現れる故郷のイントネーションに、克弥は家族といるかのような心持ちになった。それはこの上なく心地いい。この気持ちを伝えたいと思ったが、克弥は恋などしたことがないのでどう伝えていいのか分からない。迷った挙句、とにかく最大の賛辞を贈ろうと口を開いた。
「君は、愚民ではない気がする」
陽気に動いていたシヅの唇がピタリと止まった。それはそうである。克弥が故郷の人間を全て愚民と見下していたことなんぞ知る由もないシヅからしたら、この発言は喧嘩を売られている以外の何物でもない。それなのに目の前の男はニヤついている。笑いながら喧嘩を売る奴が一番ヤバいと相場は決まっている。
二人の間に流れる空気の重さが極限にまで達した時、風船が弾けたかのようにシヅが笑った。
「プーッ。あはははは。何それ? まさか褒めたの?」
──ああ、この人はやっぱり頭がいい。
克弥は自分の言葉足らずを棚に上げて、真意を理解してくれたシヅに感心した。

その日から授業では隣に座り、放課後は喫茶店で話すのが日課になった。いじめられていたこと、故郷では皆愚民だと思っていたこと、ペンパルクラブ、祖母や母や父のこと。克弥は自分の全てを話した。楽しかった。シヅの聡明さから来るリアクションが克弥を饒舌にさせただけではない。克弥が何よりも「この人は違う」と思ったのは、シヅが克弥の行動を疑問に思わないところだった。
「シヅさんは僕の話を聞いても、『なんでそんなことしたの?』って聞かないね? 大抵の人は僕の行動が理解できなくて、必ずそれを聞くんだけど」
シヅは小首を傾げて真顔になると、すぐに笑った。
「ふふ。だって克弥くんの行動は理解できないから面白いんでしょ。面白い話を聞いて、『なんでそんなこと言うんですか?』って聞く人っているかな? それって漫才とか落語のボケを『なんで?』って聞くのと同じでしょ? バカだよ、それ」
克弥は嬉しさのあまり立ち上がった。
「そそそそそそそう! バカなの! すごくバカなの! 愚民なの!」
克弥の大声が喫茶店に響いた。
──この人は僕を理解してくれてる。
この国に敵しかいなかった克弥は初めて自分の理解者に出会った。高須克弥18歳。高須クリニック開業の13年前の話である。(第6話につづく)
最新話は発売中の女性セブン本誌に掲載!
バックナンバーはWEBにて週2回、木曜・月曜AM8:00に更新中!!
<<エピソード一覧はこちら>>
【プロフィール】
家守鷹主(いえす・たかす)/テレビ局プロデューサーとして高須克弥氏と出会い、十数年来の友人。今回、その人生を小説として描きたいと依頼したところ、高須氏は一言“YES”と快諾し、ペンネームも命名。かくして、希代の人生物語が幕を開けた。
高須克弥(たかす・かつや)/1945年、愛知県生まれ。医師(美容外科、整形外科、形成外科。学位は医学博士)。2018年に自身の全身がんを公表(発病は2014年)。
※女性セブン2026年7月2日号