
すべて想像の逆を行く男、高須克弥の破天荒な人生を描く連載『YES!逆張り人生~高須克弥物語~』! 読めば悩みが全て吹き飛ぶ、そんなパワフルすぎる人生を、どうぞご堪能あれ。
第6話:初めて男の部屋に招かれた女の悲劇の話【中編】
シヅが慌てて追うと、外は暗くなっていた。克弥はアパートの前の畑にずんずん入っていく。そしておもむろにしゃがみこむ。見るとその手にはキャベツの葉が1枚握られていた。事態を把握できずに呆気にとられるシヅに克弥が言う。
「1個のキャベツから1枚だけとるんだよ。1個まるまる盗ると大家にバレるからね」
大家は世田谷の農家で、アパートは野菜畑に囲まれていた。その畑のキャベツから1個につき1枚を剝がして、10枚程度拝借するという。
──初めて部屋で過ごす夜のディナーが「泥棒キャベツで作る手作りチャーハン」なんてことある? この人、私のことどう思っているのかしら?

シヅはこの時、初めて克弥の行動を疑問に思った。ロマンチックな夜を期待していた女と、そんな気遣いを全くしないキャベツ泥棒。自分が置かれている状況を客観視すると、シヅはおかしくなって腹を抱えて笑い出した。
「しーっ! 大家に見つかっちゃうよ」
慌てる克弥の顔をライトが照らした。
「おい! 誰だ!? そこで何してる!?」
「シヅさん逃げて!」
走り出したシヅの後ろで克弥が派手に転ぶ音がした。そしてそのすぐ後から「捕まえたぞ!」という声が聞こえた。
それでもシヅは振り向かずに走った。そのうちに「なぜか逃げている自分」が、無性におかしくなって笑みが溢れた。
──こんなの、生まれて初めて男性の部屋に来た日に起こることじゃなくない?
捕まったキャベツ泥棒こと、高須克弥の顔を想像するとおかしくてどうしようもなく、声を出して笑った。妙に幸せな気分で、これが続くならこのままずっと走っていたいと思った。実際に克弥のアパートを通り過ぎて、行く当てもなく走った。夜の住宅街を爆笑しながら走り回る女。シヅは自分のことをヤバいとは思ったが、止められなかった。
* * *
どのくらい走っただろうか? もう息が続かなくなったので克弥のアパートに戻った。ドアを開けると、ひと間しかない学生アパートのキッチンに克弥が立っていた。
「おかえり」
まるで先ほどの事件などなかったかのような口調である。しかしその顔も服装も正面だけが泥で真っ黒だった。
──うつ伏せにねじ伏せられたんだ。
シヅは捕まった時の状況を明確に想像できてまた噴き出した。すると克弥が言った。
「もうすぐキャベツチャーハンできるよ」(後編につづく)
最新話は発売中の女性セブン本誌に掲載!
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【プロフィール】
家守鷹主(いえす・たかす)/テレビ局プロデューサーとして高須克弥氏と出会い、十数年来の友人。今回、その人生を小説として描きたいと依頼したところ、高須氏は一言“YES”と快諾し、ペンネームも命名。かくして、希代の人生物語が幕を開けた。
高須克弥(たかす・かつや)/1945年、愛知県生まれ。医師(美容外科、整形外科、形成外科。学位は医学博士)。2018年に自身の全身がんを公表(発病は2014年)。
※女性セブン2026年7月9・16日号