
令和の時代になっても、まだまだ“昭和の価値観”を引きずるような騒動が発生している。女性セブンの名物ライター“オバ記者”こと野原広子氏が、福岡県議会で発覚した問題についてつづる。
昭和のオジサンの“やらかし”
ドン。この2文字を聞くと昭和世代は「コルレオーネ」と続けたくならない? 1972年に公開された映画『ゴッドファーザー』のイタリア系マフィアのボスの名前で、マーロン・ブランドのブルドッグ顔がいかにもだったっけ。
で、この夏、久々に「ドン」の称号で呼ばれている人が福岡に現れた。いや、現れたっていうのは違うよね。私が知らなかっただけで、福岡県議会議員の藏内勇夫氏(72才)は福岡県はもちろん、日本一剛腕な県議会議員として名をはせていたそうだもの。
まぁね。日本中、どこでもその地方ならではのローカルルールがあるから、そこの人が納得しているならいいんじゃないの?と言いたいところだけどさ。県議会議員は海外視察に1年半で約1億4500万円を使って、ハワイ視察のときは1泊11万円超えのリゾートホテルに泊まってるって。しかも税金を使うだけ使って、研修の報告書はほとんどナシって、そりゃあ、福岡県民は怒るでしょ。
と、このニュースから目が離せない私。それはなぜか。つらつら考えるに、ことの善しあしは横に置いといて、いかにもな昭和のオジサンの“やらかし”にノスタルジーを感じるのよ。お金の飛び交いぶりもそう。ハワイ研修で毎回大金を払って添乗員だの通訳だのを連れて行くのもそう。

旅行業者にドンは「じゃ、次も頼むわ」と意味ありげに言い、「はいっ、手前どもにお任せください!」と揉み手するところを想像するだけで興奮する。若い議員には「きみもそろそろ見聞を広めた方がいいな」とドンが肩を叩き、「はいっ、勉強させていただきます!」と体をふたつに折る、なんてやり取りをYouTubeでニュースを見ながら毎晩、妄想が止まらないの。
そういえば権力ごっこをしているおじさんって言葉遣いも独特よね。たとえば福岡では「汗をかく」=後輩が先輩の分の飲み代、ゴルフ代を払う。「荷物」=現金を指すらしい。
そういえば、しばらく前に東海地方の有力者から「手弁当」という言葉を聞いたことがある。ゴルフ付きの出張というか研修のときに「あいつは手弁当持ちだから」って言うらしいのよ。てっきり食物アレルギーでもあるのかと思って聞き返したら、手弁当とは、出張だか研修に彼女を連れて行くことなんだって。本来は、仕事や活動をするときに自費で協力することなんだけどね。その人物は「おれはもう、そんなことしないけどね」って言うんだけど、てことは、それまではしていたんだ! てかさ、女性をなんだと思ってるの⁉と、イヤ〜な気分になったけれど、目の前のおじさんは怒る気にもならないくらい無邪気そのものだったのよ。
義祖母にカツアゲされた福岡の女性
話を福岡県議会のドンに戻すと、昭和28年生まれってことは私より4才年上だ。てことはまだ海外に憧れがある世代なんだよね。だからドンは県議会の議長の椅子をネタにカツアゲされたという告発と、高額な海外視察が明るみに出たとき、「おれが海外から帰ってくるまでに片付けておけ」という言葉を残してアメリカに旅立っている。このカッコつけがもうね、恥ずかしいったらないんだって。
話は違うけれど、福岡といえば、記憶から消えない人がいるの。私より10才年下のライター志望のヨシコさんは福岡出身で、当時、30才前後。子供が保育園に通うようになったから仕事をしたいと、当時私が経営していた編集プロダクションにやってきたの。嫁姑の恨みつらみの原稿を書いていた私は、彼女から聞いた福岡での嫁姑話が強烈だったのよね。彼女はある企業が募集した夫婦に関する小文の懸賞の最優秀賞に選ばれて、30万円の賞金を得た。それを喜んで同郷の夫に報告したら、「そのお金はそっくり、ばあちゃんに渡せ」って言うんだって。「お前がその賞を取ったのはおれのおかげだ。おれのおかげということはウチのおかげだ。長老のおばあちゃんのおかげだ」って。つまりヨシコさんにとってのドンがおばあちゃんだったんだわね。
「で、どうしたの?」と聞いたら、「納得はいかなかったけど30万円渡しましたよ」と言うので、もう一度驚いたわよ。一時期、日本全国の姑の悪口を聞き回っていた私だけど、義祖母にカツアゲされた人は福岡のヨシコさんただひとりだ。もちろん、偶然そんな大姑がいた、というだけかもしれないけれど、それにしてもなぁ……目下の人間から堂々とお金を取るって、できなくないか?
【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。
※女性セブン2026年9月3日号