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「5年前に発行された新500円硬貨がコンビニの複合機で使えなかった」…そんな体験をきっかけに現金派に回帰するオバ記者 いま一度見直す“現金の価値”

現金派に回帰するオバ記者(写真/イメージマート)
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 どんどん進むキャッシュレス化。現金を使う機会が激減している人も多いだろう。女性セブンの名物ライター“オバ記者”こと野原広子氏もまた、現金を使う頻度が下がっていたが、500円硬貨に関する出来事をきっかけに、考えが変わってきたという。オバ記者がつづる。

新硬貨の発行に5年も気づかなかった

「やだ、私、いよいよボケた?」とパニックを起こしそうになったわよ。

 先日、東京駅付近のコンビニで書類をプリントアウトしようとして小銭を入れたところ、《新硬貨は使えません》とな。いつもは10円玉1、2枚で済むのだけど、このときは大量に印刷をするので500円玉を入れた。リセットしてもう一度、複合機の操作をしたら、やっぱり《新硬貨は使えません》と表示される。ギャーッ、新硬貨って何!?と焦りつつ、戻ってきた500円玉をあらためて見たら、やたらギラついている。

 レジで訳を話したら、黙って100円玉を5枚渡されたわよ。首を傾げながら家に帰って調べたらなんと、新500円玉が発行されたのは令和3年の10月って、もう5年も前じゃない!

 そういえばここ数年、現金に注意を払っていなかった気がする。たいがいの支払いはクレジットカードかSuicaか、何かの拍子に登録したau PAYか。あ、最近は現金をチャージしてスマホやカードからピッと払うとかね。

ここ数年、キャッシュレス決済をする人は多い(写真/イメージマート)
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 ピッの瞬間、「むむ、これ買わなくてもいいんじゃね?」と思うときもあるけれど、すぐに「ポイントがつく」という甘言がよぎって、お買い上げ。とまぁ、いつの間にかすっかりキャッシュレスに毒されていた私。

 それで新硬貨の発行に5年も気づかなかったわけだけど、落ちついて考えたらおかしな話よ。時代の最先端の都心のコンビニで5年も前の新硬貨が使えないってどういうことだ。それだけ現金の価値がなくなってきたってこと? そう思うと、北里柴三郎の1000円札も渋沢栄一の1万円札も、なんか軽いって言うかさ。津田梅子の5000円札に至っては顔が浮かばないもんね。

ゲンナマだから感情を揺さぶられた

 ほんとにこれでいいのか?という思いが、昭和ど真ん中生まれの私にはある。

 思えば、現金は日々の喜怒哀楽のカナメだった。たとえば、18才で上京して靴店の住み込み店員になった私は、給料日が嫌いだった。銀行振り込みが普及する前だったから、給料は朝礼のときに社長から茶封筒で手渡しされるんだけど、すんなりとはよこさない。くどくどと説教された後に、「はい、ご苦労さん」と言われる屈辱といったらない。

 だけど、その現金も量が多くなると意味が変わるんだね。

「レンガって言うんだよ」

 と言ったのは、知り合いの建築業界のおじさんだ。100万円の束を10個重ねるとほぼピッタリ、レンガと同じ大きさになるというの。

 それを思いがけず手にした人もいる。鍵屋さんから聞いた話だ。いかにもパシリといった風貌の60代の男性が、「実家の金庫に家の登記簿が入っているから取りに行ってこい」と兄たちに言われたそうだ。

 彼の案内で実家に入ると、長い間、空き家だったらしくカビ臭い。カチャリと金庫が開くと、それまで兄たちのグチをこぼしていた彼の口から「あ、あ」と短い驚きの声が漏れた。なんと、金庫には登記簿と一緒に3つの札束が収まっていたという。

「あの様子だと、彼は独り占めしたでしょうね」と鍵屋さんはなんとも複雑な笑みを浮かべた。

 そうそう。最後までキャッシュレスにはならないだろうという類いのお金もある。香典だ。私の70代の友人は大きなお葬式の帳場に立ったときに、「いままで嗅いだことのない臭いがしたの。お札ってまとまると強烈な臭いがするのよ」と言って、鼻にシワを寄せていたっけ。

 どちらの話も、ゲンナマだから私は感情を揺さぶられ、身を乗り出して聞いたんだよね。円周率のような長い数字ばかりが並んだところで、血が騒いだりしないと思う。

 そんなこんなで私は、新500円玉の一件から、なるべく現金払いに切り替えたのだけど、ネットニュースによると最近、現金主義の人が増えてきたんだってね。全国でもキャッシュレスの普及率に差があるらしく、率が最も高かったのは東京都で44.3%だけど、宮崎県は23.3%、鹿児島県が24.4%だとか。そういえば私がよく足を運ぶ栃木の温泉地の商店街も、現金を持っていないとお話にならない。

 いずれにしても、お金が入って急に元気になることを「現金だね」と言う、なんてことが通用するのは50才までかもね。

【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。

※女性セブン2026年9月10日号

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