不調改善

がん予防、老化防止にも!ファイトケミカルは野菜スープが◎

以前は体調不良に悩んでいた隣の席の同僚(30代女性)が、最近調子がよさそう。気にしていた肌荒れも改善したみたいで、化粧ノリもいい。そういえば彼女、毎日欠かさず保温ジャーを持参している。もしかして、体調改善の秘密はあれなのかしら?

勇気を振りしぼって、中身を尋ねると、「お手製の野菜スープだよ」って…。えっそれだけで…!?

野菜スープで元気に美しく(写真/アフロ)
写真1枚

「野菜スープ」の健康・美容効果が話題を呼んでいる。昨年10月に、『世界一受けたい授業』(日本テレビ系)で野菜スープが紹介されると、大きな反響を呼んだ。翌11月に発売された『最強の野菜スープ』(マキノ出版)はベストセラーとなり、健康雑誌はもちろん女性ファッション誌でも取り上げられる人気ぶり。

多くの人々を元気に、そして美しくする野菜スープ。その秘密を探ると驚くべき効能が見えてきた──。

万病に効く抗酸化物質

野菜が体にいいことは常識だが、ここまで注視されるのは、“ある成分”の存在がある。前述の『最強の野菜スープ』の著者で、抗がん剤の世界的権威である熊本大学名誉教授の前田浩氏が解説する。

「野菜には、酸化を防ぐ抗酸化物質が多く含まれています。その種類はさまざまありますが、特に『ファイトケミカル』に注目が集まっています。

ファイトとはギリシャ語で“植物”という意味で、ファイトケミカルは植物が紫外線や害虫などから自らを守るために作り出す化学物質の総称のこと。植物の色素や香り、苦味などの成分で、皮や根っこ、種の部分に多く含まれています」(前田氏)

トマトの赤い成分である『リコピン』や、にんじんやかぼちゃの色素となる『カロテノイド』、玉ねぎの皮に豊富に含まれる『ケルセチン』などが代表的なファイトケミカルの一種だ。身近な野菜で手軽に摂ることができるのである。

ファイトケミカルは体にどんな効果をもたらすのか。前田氏が言う。

「動脈硬化や糖尿病、高血圧など多くの生活習慣病に密接にかかわっているのが、有害物質である“活性酸素”です。 活性酸素は、紫外線や放射線のほか、たばこ、食品添加物など、日常のあらゆるものから発生して細胞や遺伝子を酸化させます。これが、さまざまな病気の原因となるのです。

人間は、生きている限り活性酸素の攻撃から逃れることはできません。しかし、ファイトケミカルを摂取すれば、強い抗酸化作用が活性酸素の働きを中和して抑えてくれるのです」

また、病気を予防するだけでなく、老化を遅らせる効果もある。

「活性酸素によって細胞が酸化すると、老化も加速するといわれています。本来、人間の体は抗酸化物質を作りだす働きが備わっていますが、この働きは年齢とともに低下してしまう。ファイトケミカルの力を借りれば、低下した働きを助け、健康で若々しい体を保てます」(前田氏)

さらにファイトケミカルは、“がん予防”に絶大な効果を発揮すると前田氏は強調する。

「体内にもともと、発がん性の細胞があることはごく稀で、がんは外部からの細菌やウイルスによる“炎症”が原因で発生することがほとんどです。その炎症を引き起こす最大の要因が活性酸素による酸化です。酸化によって遺伝子が傷つけられ、細胞が突然変異を起こすことで、がんになるのです」

ファイトケミカルのがんへの効果は、いくつかの実験や研究でも証明されている。

1991年から米国で行われた、1日に緑黄色野菜を5皿食べる実験。野菜の摂取量が増えたニューヨーク州などの東部では大腸・直腸がんの死亡率が明らかに減少したのに対し、野菜の摂取量が横ばいだったミシシッピ州などの南部では、死亡率の減少はわずかだった。

また前田氏も2010年、がんを移植したマウスにファイトケミカルの一種であるフラボノイドを豊富に含んだスープを飲ませて実験を行った。すると、スープを与えなかったマウスのがんは明らかに大きく成長したのに対し、スープを摂取したマウスのがんは小さく、生存率も最も高くなったという。

「ファイトケミカルは、食欲減退や嘔吐、脱毛など抗がん剤のつらい副作用を抑制する効果もあります」(前田氏)

スープで100倍の効果

そのファイトケミカルの効能を最大限引き出す摂取方法が「スープ」なのだ。

「生野菜のままだと、わずかしかファイトケミカルを摂取できません。野菜の細胞は、多くの場合セルロースという頑丈な壁に包まれており、ファイトケミカルもその壁の内側に豊富に含まれています。スープにする際、野菜を加熱することでその壁を壊すことができるのです」(前田氏)

生野菜と比べると、どれほど効果が高くなるのか。

「活性酸素の中でも特に毒性が強い“脂質ラジカル”という活性酸素があります。これに対する抗酸化力を、生野菜とスープの場合に分けて調査したところ、煮出したスープの抗酸化力の方が圧倒的に高くなりました。野菜の種類によってさまざまですが、効果の差は10~100倍にもなります」(前田氏)

野菜スープを作る際は、普段捨てている野菜の皮やへた、種も全てミキサーで細かくしたり、一緒に煮たりして入れるといいという。

家族の健康を守るためにも、毎日おいしく野菜スープを摂ろう。

※女性セブン2018年3月22日号

【関連する記事をチェック!】
『やせおか』著者提案! 糖質オフの“痩せるスープ”でスッキリボディに
食べ過ぎをリセット!【痩せレシピ】便秘改善にも役立つ「大豆のコンソメスープ煮」
【便秘改善レシピ】甘みがうれしい「濃厚パンプキンスープ」
【旬菜】簡単にできる美肌メニュー「ブロッコリーとトマトのたまごスープ」
【オバ記者連載77】ダイエットの強い味方、オニオングラタンスープに目覚めた!