《最新研究が明かすインフルエンザワクチンの効果》心筋梗塞や脳卒中などのリスク低減か、認知症予防に関する研究も 60才以上が対象の「新ワクチン」は来年以降の導入へ
心筋梗塞や脳卒中などの重大な心血管疾患リスク低減に効果
さらに、近年ではインフルエンザワクチンの驚くべき効果を示す研究結果も出てきている。
「2022年4月にカナダのトロント大学を中心とする研究チームが発表した解析データによると、インフルエンザワクチンを打った人たちは、心筋梗塞や脳卒中などの重大な心血管疾患が、打たなかった人たちに比べて34%も少なかったという結果が出ました。
また、心筋梗塞や不安定狭心症などの急性冠症候群を起こした患者がワクチンを接種した場合では、しなかった患者に比べ心血管死などのリスクが45%少なかったことも示されました。
ワクチンには、それらの病気を防ぐ効果が期待できると言っていいでしょう」(上さん・以下同)

この解析は、心臓病の患者など約9000人が参加した臨床試験をまとめたもので、このような結果が得られた要因について、上さんが続ける。
「心筋梗塞や脳卒中は慢性的な炎症によって引き起こされます。つまりインフルエンザによる強い炎症によって発症リスクが高まる。また、高熱による脱水で血液が濃縮され、血栓ができやすくなることもあります。
ワクチン接種によって強い炎症や高熱を抑えることが、脳や心臓の血管疾患リスク低減につながると考えられます」
それだけではない。インフルエンザワクチンで「認知症リスクが低下する」可能性もあるという。
「インフルエンザによる炎症は脳にも及び、認知症リスクを高めることが指摘されています。まだ確定的な因果関係を証明する段階には至っていませんが、“インフルエンザワクチンによって認知症リスクが低下する”という仮説に沿った、いくつかの研究が進められています」(伊藤さん)
実際、2022年にアメリカのテキサス大学健康科学センター・ヒューストン校の研究チームが発表した研究報告によれば、65才以上、約93万組を対象にインフルエンザワクチンを接種しなかった人は4年間でアルツハイマー病の発症率が8.5%だったのに対し、接種した人では5.1%と、約4割低い結果となったのだ。
「中国でも同様の研究報告がされていますが、まだエビデンスとしての強さはありません。ただし、ワクチンによって、心筋梗塞や脳卒中を減らし、脳への直接的な負担や血流の滞りによる脳機能への影響を減らせば減らすほど、炎症リスクが下がり認知症予防につながると考えられているのです」(上さん・以下同)
60才以上が対象の「新ワクチン」が承認
さまざまな効果が期待されるインフルエンザワクチンをめぐって、新たな動きもある。2024年12月には、60才以上を対象にした「エフルエルダ」というワクチンが国内で承認された。
「注射する抗原(ウイルス成分)の量が従来の4倍と多いのが特徴。高齢者は免疫反応が弱いため、若い人よりも抗原量を多くした方が高い効果を得られるのではないかということで開発されたワクチンです。アメリカではすでに効果が認められており、高齢者にはこちらを接種することが一般化してきました。
日本でも今年度から接種開始の予定でしたが、製造元が国内の製造工程の確立に時間がかかっているため、来年以降の導入になりそうです」
厚労省が65才以上を対象に、年に1回の定期接種を制度化するなど、インフルエンザワクチンが推奨される一方、副反応があることも忘れてはいけない。赤みや痛み、発熱やだるさなどが生じることもあるため、接種後に気になることがあれば病院を受診しよう。
自分の体だけでなく、家族や友人など周囲の人たちの健康を守るため、正しい接種を心がけたい。
※女性セブン2026年11月12・19日号