暑さが和らぎ、朝晩肌寒くなってきた今日このごろ。秋になると寂しさを感じてしまう人も多いが、それはこの人も同じ。
ダイエットどころではないオバ記者が自身のロンリーな気持ちを筆に込めます。連載161回目となる今回は、アラ還ライター・オバ記者が綴る秋の日々です。
* * *
体がベッドに沈み込んだまま動かない
秋。あ~あ、とうとう来ちゃったよ。台風、澄んだ空、きんもくせいの香り、虫の声。みんなダメ。日本人が愛でてきた花鳥風月にケチをつける気はないけど、秋風が吹くと心身共にダウンするのは毎年のことなんだわ。
いちばんの原因は秋特有の気圧のアップダウンだね。テレビの天気予報でアナウンサーが「西から天気は下り坂」なんて言う一日前から、体はベッドに沈み込んだまま動かなくなるの。
この夏の無茶もマズかった。7月末に19年生活を共にしてきた愛猫が亡くなり、どうにもならない気持ちにムチを入れようと、8月は7日間、無理やり体をこき使うアルバイトを入れた私。「ふふふ。この体、まだまだ動けるんだって!」と人に自慢しつつ、グラスをクイクイ開けていたツケで、今週は、とうとう撃沈しちゃった。
家の隣のコンビニとスーパーに食料を買いあさりに行くだけで、あとはひたすら寝ているか、YouTubeを見ているか。
「気分が沈み込んでいたら、食欲もなんでしょ?」と人は言うけれど、とんでもない。気圧が下がるとヘンな食欲が湧くのよ。“ヘンな食欲”をひと言でいえば、あっと言う間に食べられる丼飯ラブだね。
それぞれの食感の違いを舌で愛でながら、時間をかけて食事を楽しみたい、なんていうのは心とお財布にゆとりがあるときに思うこと。そうでない私の頭に浮かぶのは、親子丼、かつ丼、鉄火丼、または立ちそばやのかき揚げそば。家でなら納豆かけご飯。しかも夜、寝しなに食べたくて仕方なくなる。こんな食生活を一週間したら体重は、うなぎのぼりよ。
と、こう書いてただけで、頭の中はうな丼でいっぱい。あの香ばしい匂い、甘いたれ。ふわふわの食感。キャ~ッ、たまんないわッ。
食欲はおさまらず、「箸が止まらなくなった」
それはともかく、太る理屈がわかると、痩せる理屈もわかる。要するに一週間、夜だけ、ご飯を抜いただけで1kgは減るのよ。昼のご飯を半分にしたらさらに1kg減。これを1か月続けたら3kg減。2か月続けてたら4~5kg減。百も承知! でもできない。
先日も小学生を国会議事堂に案内する議員秘書のアルバイトが昼前にひと段落したので、参議院の議員食堂に行ってみたの。いままで衆議院の議員食堂には何度も行ったけど、TBSラジオ『玉袋筋太郎の金曜たまむすび』で、国会担当の記者が「何でも参議院の食堂の方が美味しい」と言っていて、気になって仕方がなかったの。それでいちばん安い三種類の寿司の定食850円を注文。
前ならあらかじめ「シャリ小で」と言うか、言いそびれてしまったときは、ご飯を半分残していたのに、この日はとうとう箸が止まらなかった。それだけ参議院の食堂が美味しかったということだけど、店の人にそれを言うと、「おほほ。仕入れが同じだから、一緒ですよ」ですって。ということは、気のせい?
「芸術の秋」に落ちていた気分が…
と、“早飯”でいっぱいの私に、秋らしいアートなお便りも。実は布バッグづくりという妙な趣味をもつ私がちまちまと手作りしていたとき、縫製の腕のいい元サラリ―マンのWさん(76歳・男性)と出会って、いちばん気に入っている形を発注。
そのバッグが仲良しのユミちゃんの手に渡り、名古屋で独創的な衣服を作って売っている権田明成さん(71歳)の目に止まり、絵づけされて二子玉川の高島屋のアートサロンで展示会。今後は横浜、名古屋の高島屋でもおひろめするそう。
私、Wさん、ユミちゃん、権田さん。4人で作ったバッグをお買い上げした誰かの腕に下げられると思うと、なんかロマンを感じちゃう。落ちていた気分が急にアップしてきちゃった。
そんな私に、「ちょっと、これ着てみて」と、権田さん。ご自身が絵づけした毛皮のコートを手渡され、つい調子に乗ってはい、ポーズ。これが冒頭の写真。
ああ、痩せたい! いま、写真を見て本気でそう思ったよ。毛皮は太った中年女が着ると、ふけた欲深タヌキになるけど、シェイプされた体にまとうとゴージャスなマダム。こんなに体形で印象が違うものってほかにあるかしら。
オバ記者(野原広子)
1957年生まれ、茨城県出身。『女性セブン』での体当たり取材が人気のライター。同誌で、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年、”月曜断食”で7か月で11kgの減量を達成。
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