タイトなトップスを着ると、パンツやスカートなどのウエストの上にのった肉や、ブラジャーのはみ肉ラインがぽっこり…。いまいちなシルエットになってしまう原因は、皮下脂肪にあり。
ぽっこりお腹の原因になる内臓脂肪に対して、腰回りや二の腕の柔らかい部分で指でつまめる位置についている脂肪が皮下脂肪。食事管理などで比較的落としやすい内臓脂肪に比べて、皮下脂肪は落ちにくい脂肪だというからやっかいだ。そこで、糖尿病専門医として日々患者に肥満対策や食事指導を行っている、松本クリニック院長・松本和隆さんに皮下脂肪の落とし方について教えてもらった。
皮下脂肪は特に女性につきやすい
「人間の体の約20%は脂肪組織であると言われ、脂肪分布には大きく2種類あり、皮下脂肪と内臓脂肪に区別されます」と松本さん。
皮下脂肪とは皮膚と筋肉の間に蓄えられる脂肪のことで、全身に存在するという。これは、外からの衝撃に対してクッションの役割として働いて体を保護したり、体の熱を外部に逃さないように保温する役割を果たしているそう。
「女性ホルモンであるエストロゲンに皮下脂肪がつきやすくなる作用があるため、男性と比べて女性の方が皮下脂肪はつきやすいとされています。女性特有の洋ナシ型体型は、お尻や太ももに皮下脂肪が比較的蓄積しやすいことから形成されるもの。妊娠出産で子宮を守るという重要な役割も持っており、内臓脂肪と違って一度体につくと落としにくいとされています」(松本さん・以下同)
お尻、太もも以外にも皮下脂肪がつきやすいのは、下腹部、ウエスト、頰あご、二の腕、背中なのだそう。さらに、皮下脂肪が肥大化し、老廃物がくっついたものがセルライトで、これはとても落としづらいという。
皮下脂肪がつく原因
「皮下脂肪が溜まってしまう原因は、摂取カロリーが消費カロリーを上回っていることです。余ったカロリーはまず内臓脂肪になり、その後皮下脂肪として体に蓄積されます。そのため、皮下脂肪がつく原因には過食や運動不足といった生活習慣が大きく関係しています」
糖質過多、高カロリーの現代的な食生活や朝食抜き、深夜の食事などが続くと、内臓に脂肪がつき、それをエネルギーとして消費しきれなくなりがち。そのため、不規則な生活習慣は皮下脂肪が溜まりやすくなる原因のひとつと言えるそう。
またダイエットを実践して体重は減ったのに、脂肪(体脂肪率)が落ちていないという場合は、食習慣、運動習慣の見直しが必要だという。
「ただし過度な糖質制限によってエネルギーが不足すると体が危機を感じ、エネルギーを温存しようとして脂肪を溜め込みやすい体質に。その結果、逆に脂肪が落ちにくくなります。また、正しくないダイエット法で脂肪より先に筋肉が落ちてしまっている場合は、筋肉が落ちた分、体重そのものは軽くなりますが、基礎代謝も下がるので、脂肪が燃えづらく痩せにくい体になってしまいます」
皮下脂肪を落とす方法
松本さんによると、体脂肪率は男性20%、女性25%程度が目安なのだとか。
「もし体組成計測機能のついた家庭用体重計をお持ちであれば、ぜひ体脂肪率を測ってみてください。そして体脂肪率が目安よりも高い場合は、自分の推定エネルギー必要量を知ることから始めましょう。過度なエネルギー制限は先ほど述べたように、脂肪を落とすためには逆効果です。例えば、身長157cm・体重50kgの29歳女性で、デスクワークなどの活動量低めのかたなら1日に1750kcal程度が推奨されます」
この場合の基礎代謝量は、ハリス・ベネディクト方程式という方法で算出した1270kcalになるという。基礎代謝量に活動係数として1.5を掛け合わせた数値が推奨カロリーとなり、それよりも極端に多かったり、少なかったりする食生活では体脂肪を落とすのが難しいという。
ちなみに、松本さんが糖尿病患者に指導する食事療法では、下記のような計算式で1日の摂取カロリーを求めるという。
【糖尿病の食事療法における1日の摂取エネルギー量の算出方法】
■その人が1日に必要とするエネルギー量(kcal)=身体活動量×標準体重(身長〈m〉×身長〈m〉×22)
・デスクワークが多い人の身体活動量=25~30kcal
・立ち仕事が多い人の身体活動量=30~35kcal
・力仕事が多い人の身体活動量=35以上kcal
皮下脂肪を落とすためには、適正カロリーを守って脂肪をつけないことと、さらに脂肪を燃焼することが必要。その必須条件が、下記の2点となる。
【1】栄養バランスよく、必要なエネルギーをしっかり摂る
→毎食ごとに肉、魚、豆腐、卵などのたんぱく質を摂ることができる食材がはいっているか、野菜(食物繊維)は摂れているかを確認。そのほか積極的に摂りたい栄養素はたんぱく質、ビタミンB6で、肉・魚・豆腐(たんぱく質)やバナナ(ビタミンB6)に豊富に含まれている。
「たんぱく質は脂肪を燃焼させる栄養素。内臓や筋肉など体の大部分はたんぱく質で構成されており、エネルギーを燃やすための酵素やホルモンなどの原材料でもあります。痩せやすく太りにくい体のベースとなる基礎代謝を維持するために、積極的に摂りましょう。そして、ビタミンB6は、一緒に摂取したたんぱく質をアミノ酸に分解して筋肉への合成を助けたり、たんぱく質利用吸収の効率アップに寄与したりします」
また、食事で十分なたんぱく質やビタミンB6を摂るのが難しいときは、プロテインやサプリメントを活用してもOKとか。ただし、食事を抜いてサプリメントばかりを摂取するのは本末転倒なので、あくまでも食事を補助するものという認識を持って取り入れること。
【2】身近な活動量を見直す
→歩数計やスマホアプリなどを利用して実際の活動量を数値化し、1日にどれくらいエネルギーを消費しているかを把握する。基礎代謝基準値は厚生労働省が発表しており、女性は18〜29歳で1110kcal、30〜49歳で1150kcalが基準となる。体組成計などを使うと基礎代謝量を測ることができるので、基準よりも低い場合は特に筋トレに力を入れて基礎代謝量アップを目指すのがオススメ。
「日常生活で運動不足を感じているかたは、まず身近な活動量から見直してみましょう。例えば、体重60kgのかたが同じ時間運動する場合、軽い散歩と比べてウォーキング(速歩)なら消費エネルギーは約12%アップします。さらに、ジョギングに変えた場合の消費エネルギーはウォーキングの2倍以上になります」
そして、皮下脂肪を落とすには、筋肉を増やし基礎代謝を上げる筋トレと脂肪燃焼に効果的な有酸素運動を組み合わせて取り入れるのがおすすめなのだとか。
「筋トレなら空き時間にスクワット、ペットボトルを利用してダンベル運動。有酸素運動は階段を利用した踏み台昇降運動など、簡単に取り入れられるものを毎日継続することが重要です」
皮下脂肪を減らすには継続!長期戦を覚悟して
内臓脂肪の方が増減の変化が大きいため減らしやすいものの、内臓脂肪が落ちるときには、皮下脂肪も一定の割合で落ちるのだという。
「継続的な食事制限、有酸素運動で皮下脂肪は落ちるものの、内臓脂肪を落とす以上に根気よく努力を続ける必要があります」
体重を減らすダイエットと比べて結果が出にくいボディメイクだからこそ、最初から長期戦を覚悟して。なかなか結果を感じることができなくてもあきらめずに、食事習慣や運動習慣を継続することが大切だという。
ちなみに、皮下脂肪を減らすためにマッサージは効果的か尋ねてみると、「肥満症に効果がある場合は学会などから推奨されていると思いますが、マッサージが推奨されている例はないのです。例えばサウナなど、温浴であれば代謝の亢進が期待できるので、多少は脂肪燃焼に寄与するのではないかと考えます」とのことなので、体温を上げて、代謝アップを狙うことの方が重要と言えそうだ。
着たい服を取り出してみたり、理想のボディの芸能人を思い浮かべてみたり、モチベーションがアップする工夫を取り入れて、長期戦に挑んでみて。
教えてくれた人:松本クリニック院長・松本和隆さん
まつもと・かずたか。医療法人松徳会 松本クリニック院長。2000年、藤田保健衛生大学医学部を卒業。三重大学病院で研修後、県内各地の病院の内科に勤務し、2007年に三重大学大学院で代謝内分泌内科学の医学博士を取得。三重大学医学看護学教育センターとMMC卒後臨床研修センター事務局長を歴任し、県内全ての臨床研修病院と連携しながら三重県オリジナルの卒後初期臨床研修システムの構築に尽力した。2016年、三重県松阪市に医療法人松徳会松本クリニックを開院。地域では数少ない糖尿病専門医として毎日多くの患者の診療を行っている。著書に『おいしい糖尿病レシピ』(伊勢新聞社出版)がある。http://www.matumoto-clinic.jp/index.html
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