外出を控えた生活の中では、食事の量は増えてしまいがち。自粛期間中に体重が増えてしまった人もいるのでは?
そんな人は、ソーシャルディスタンスに気をつけながら運動不足解消のために外に出てみるのもいいかも。激しい運動をしたくないという人でも、散歩感覚でできるウォーキングなら無理なく続けることができるはず。
ウォーキングプロデューサーの園原健弘さんによると、歩き方や時間など、ウォーキングで効率的にカロリー消費をするコツがあるのだとか。
「2週間動かないでいると血液循環が悪くなり、若い人でも骨や筋肉が衰え、人間本来の機能が低下する可能性があります。自粛期間中は通勤やレジャーがなく、普段行っている活動量をはるかに下回ります。まずは気軽にお散歩感覚から始めて歩く習慣をつけ、より効率よく運動効果を上げたいのであれば、ウォーキングに挑戦しましょう。体の動かし方を意識すれば、短時間でも脂肪や糖質を効率よく燃焼させることができます」(園原さん・以下同)
また、日光に当たることで免疫力を高めるビタミンDが体内で合成され、気道で感染するウイルスや細菌の増殖を抑制する効果も期待できるのだとか。
散歩からウォーキングにレベルアップするコツ
散歩からウォーキングへの第一歩は、大股歩きをすることなのだそう。
「ウォーキングを効果的にするには、まず歩く姿勢に意識を向けましょう。大股で歩くとよく言われますが、大股とは、例えば横断歩道で白いラインだけを踏んで歩くくらいの歩幅です」
大股歩きは、上半身と下半身をつなぐ「大腰筋(だいでんきん)」を動かして歩くため、運動効果アップにつながるという。
◆ウォーキングに適したシューズの選び方
また、服装は普段着でOKだけれど、シューズは足を痛めないためにウォーキングに適したものを。シューズメーカーのfitfitによると、足のトラブルにならないためにも、かかとの骨が内側に傾く(回内)、外側に傾く(回外)ようなことが起こりにくい、かかと部分に芯があってきちんと足をホールドしてくれるスニーカーを選ぶのがポイントなのだそう。
さらに、靴ひもをしっかり結ぶことで安定感がアップ。軽いスニーカーなら脚が疲れにくく、屈曲性があり歩くときの衝撃を吸収しやすい厚めのソールのものは、しっかり地面を蹴り出すことができるのでウォーキングにも適しているとか。
減量目的のウォーキングは「エネルギー収支」を意識
「減量はエネルギー収支を頭に入れて歩く必要があります。自分で歩いたときのエネルギー量を把握できるようになるといいですね」と園原さん。
厳密な数値ではないけれど、「体重×歩いた距離」で簡易的な消費エネルギーを出すことができるそう。例えば、50kgの人が6km歩いた場合、50(kg)×6(km)=300kcalになる。これは歩数にすると1万歩で、食品に換算するとご飯1.2杯ほど、ホットケーキ1枚分にあたるそう。
「基本はよく動いてよく食べる。減量目的の場合は、エネルギー消費>エネルギー摂取という“意識”を頭に入れて歩いてください。頑張って1万歩歩いても、『ご褒美にホットケーキ食べよう』と2枚食べてしまうとカロリーオーバー。高いレベルで収支を合わせられるような生活になるのが理想的です」
◆「1万歩分の食べ物」種類と量は?
参考として園原さんが教えてくれた、300kcal相当の食べ物の種類と量は以下。
白米 | 約1.2膳(180g) |
食パン(6枚切り) | 約2枚 |
もち | 約2.5個(1個約50g) |
チーズバーガー | 約1個 |
お好み焼き | 約1/2枚 |
ピザ(マルゲリータ) | 約1/2枚 |
かけうどん | 約1杯分 |
ざるそば | 約1杯分 |
そうめん | 約2/3人分 |
しょうゆラーメン | 約2/3人分 |
豚骨ラーメン | 約1/2人分 |
ビーフカレー | 約1/2人分 |
ミートソースパスタ | 約1/2人分 |
ソースやきそば | 約1/2人分 |
親子丼 | 約1/2人分 |
カツ丼 | 約1/3人分 |
うな丼 | 約1/3人分 |
牛丼 | 約1/3人分 |
握り寿司マグロ(赤身) | 約6貫 |
握り寿司マグロ(大トロ) | 約4貫 |
握り寿司ヒラメ | 約7貫 |
握り寿司ホタテ | 約7貫 |
例えばどんぶり物は、1杯食べたら2万歩歩くのが理想なのだそう。
ウォーキングで痩せ体質になる方法
「結局、食事管理が必要なの?」という疑問をもつ人のために教えてもらった、ウォーキングでエネルギーをマイナス収支にするためのもう1つの方法は、歩くことで「痩せ体質に変える」ということ。
ウォーキングによって、歩いているときのエネルギー消費だけでなく、日常生活時の基礎代謝を上げる、日常生活で脂肪を燃やしやすい体に変えることができるという。
「体質(生理学的変化)を変える負荷が必要なので、『少しだけきつい』と思える強度で歩いてみてください。少し息が上がって、話をするときに途切れるくらいのスピード感です」
◆ギリギリ会話できるくらいの強度で1日10分
体内がやや酸素不足の状態になると、体はその不足状況や不全状況を解消するために機能を改善・向上するように働き、それが代謝アップにつながるという。
「例えば酸素を細胞に送り届けようとして血流がよくなったり、ヘモグロビンが増えたり、ミトコンドリアが活性化したりと体が変化してくれます。脂肪をエネルギーに変えるために必須の酸素を細胞へ供給する能力を強化できれば、日常生活の歩いていない時間も脂肪を消費し続けることができます」
具体的には、ギリギリ会話ができるくらいの強度で1日10分。できれば1週間に合計で60分程度歩くのが理想。減量や体脂肪減少のためには、だらだらと1万歩ウォーキングするよりも、ギリギリ会話ができる強度のウォーキング10分の方が効果的な可能性が高いという。
ウォーキングのダイエット効果をアップさせるコツ
さらに効率的に痩せるためのウォーキングのコツが2つ。痩せる歩き方にプラスして、タイミングや飲み物にも気を配ることができれば、最小限の努力で減量することができるかも。
【1】あえて空腹時に10分ウォーキング
運動するときのエネルギーは糖質と脂質。脂質をエネルギーとしてたくさん使うには、体に糖質が少ないときが狙い目。つまり空腹時に歩くことで脂肪が燃焼しやすくなる。
「ただし、強度が高い運動で使われる糖質が不足している状態でウォーキングすることになるので、無理は禁物です。しゃべれなくなるほどのスピードや、60分以上歩くのは控えましょう。会話ができる強度で10分程度を目安に」
逆に長時間しっかりと歩きたいときは糖質を摂ったあとの方がいいため、消化吸収が完了する食後2時間半後くらいがベストなのだそう。
【2】水分は必須。糖濃度低めのドリンクを
熱中症対策などのために水分補給はマスト。まず、歩き出す前にしっかり給水を。ダイエット目的で、ギリギリ会話できるくらいの強度をしっかり管理できて、60分以内のウォーキングならミネラルウォーターで十分。スポーツドリンクなど飲む場合、脂質代謝が高めるには糖濃度が高いものはNG。市販のスポーツドリンクなら、2倍に薄めるくらいを目安に。
「歩きながらの給水も大切ですが、汗をしっかり処理することが大切です。湿度が高くなると皮膚表面から汗が蒸発しにくくなるので、ハンカチで拭くなり、吸汗速乾性のあるウエアを着るなりしてください。汗が蒸発する時に熱も逃がすので、体内温度の上昇を防ぐことができ、健康的にウォーキングを継続できます」
ウォーキング後の食べすぎに注意
ウォーキングで減量や脂肪減少の結果を出したいのなら、ウォーキング後の食欲増進には特に気をつけて。長時間歩いて頑張ったという実感があるほど、間食をしたり、食事量が増えたり、自分に甘くなってしまう人もいるのでは? それならば、特別感のないルーティンとして、毎日10分を生活に組み込むのがいいかも。
◆血糖値が上昇しづらい食べ方の実践を
「効果的なウォーキングをしたあとは脂質代謝機能が高まっています。この状態を24時間続けるために、糖質の多いものなどインスリンが大量に分泌されるような飲食は避けましょう。また、野菜やたんぱく質を先に食べてから、炭水化物を食べるという血糖値が急上昇しづらい食べ方を実践するのも理想的です。このように、ウォーキングを通じて、食事、体のメカニズムについて考えるだけでもダイエットが成功しやすくなると思います」
教えてくれた人:園原健弘さん
そのはら・たけひろ。ウォーキングプロデューサー。1992年バルセロナ五輪50Km競歩代表。世界陸上3回連続出場、箱根駅伝2回出場など競技者としての経験をベースに、健康づくり・ダイエット指導など幅広い分野で活躍。著書に『楽しい健康ウォーキング入門』(技術評論社)、『股関節ウォーキングでメタボリックシンドローム解消! 』(学研)、『正しく〝歩いて″東京マラソン完走』(小学館)など。
【データ】
fitfit
https://fitfit.jp/shop/contents/200220sneakers/
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