いくつになっても体形に関する悩みは結論が出ない。若い頃と同じようにダイエットをしても、年を取るほどやせにくくなり、運動も食事制限も厳しくなってくる。さらに、ダイエットに関する常識は年々変化し、太っていてもやせていても安心できない時代に。
「太ってても健康な人」や「やせると病気になる人」など、肥満が病気の原因になるとも限らない。健康に長生きできる、最新の理想の体形について専門家がアドバイス。ずっと元気に過ごすためのヒントがいっぱい!
コロナ太りは病気の引き金になる?
ステイホーム生活を余儀なくされたことをきっかけに体重が増え、「コロナ太り」を自覚している人は少なくないようだ。マーケティングリサーチ会社が首都圏の男女600人を対象にした調査では、4割の人が「1kg以上のコロナ太り」を自覚しており、その傾向は男性より女性に顕著という結果だった。
外出が制限され、人に会う機会は減ったとはいえ、体重や体形の変化は気になるものだ。年齢を重ねてからの体重増加は、見た目だけの問題でなく、病気の引き金にもなる。だが、若い頃のように簡単にやせることができず、ダイエットに苦戦している人も多いだろう。
しかし近年の研究では、必ずしも太っていることが不健康で、ダイエットすることが健康とは限らないことがわかってきた。
◆「デブ」と「やせ」の価値観を変える
医療ジャーナリストの増田美加さんが話す。
「これまで日本の女性たちが抱いてきた“デブ”と“やせ”の価値観については、見直した方がいい時代になっています。もちろん太りすぎは問題がありますが、年齢を重ねるほど、ダイエットの弊害も増えていきます。また、更年期を迎えた女性は、若いときから体重が変わっていなくても、“隠れ肥満”になっていることが少なくありません」
つまり、太っていても健康的な人がいれば、やせていても危険な人がいるということ。パッと見の体形だけではわからない「肥満」と「やせ」の微妙な境界線について、専門家たちに話を聞いた。
社会的、美容的な「肥満」と医学的な「肥満」
多くの女性を一生にわたって振り回す「肥満」という言葉には、2つの意味が含まれている。名古屋市立大学肥満症治療センター副センター長で肥満症専門医の田中智洋さんが話す。
「1つは社会的、美容的な意味において使われる『肥満』です。自己肯定感にかかわるもので、理想の体形を目指してダイエットをしたことがある女性は少なくないでしょう。
もう1つは、医学的な意味を持つ『肥満』ですが、こちらは定義があります。身長と体重から算出される『BMI』という数値で判断し、25以上ならば肥満です。さらに、肥満を原因とする11の健康障害のうち1つでも認められると『肥満症』という病気に該当します」
◆理想的なBMIは22
医療の世界で肥満の指標とされる「BMI」とは「体格指数(ボディー・マス・インデックス)」のことで、《体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)》で計算することができる。最も理想的な数値は「22」で、統計的にいちばん病気になりにくいとされる。
また、肥満症の診断基準となる11の症状には、糖尿病、脂質異常症、高血圧、脳梗塞、脂肪肝、月経異常・不妊、睡眠時無呼吸症候群、痛風、腰痛症などが含まれる。
「BMIが25を超えていても、それらの症状がなければ“いい肥満”ということになり、すぐには医学的な治療の対象にはなりません。ただし、肥満の状態は放置するほど病気になる可能性を高めるため、現状は“いい肥満”だからといって肥満のままでいることを医学的に推奨はできません。
海外の研究では、25才のときに肥満だった人が10~20年後までに肥満状態を脱すれば、死亡率が半減するという結果も出ています」(田中さん)
◆20才のときから10kg以上体重が増えた人は注意を
日本国内でも東京大学や筑波大学の研究チームが、20才時の体重から10㎏以上の増加を経験すると糖尿病発症リスクが大幅にアップするとの研究結果を報告している。さらに、BMIの数値が20才のときより5以上増えた人は、1未満の人と比べ、約4倍も糖尿病リスクが高くなることがわかっている。
健康診断の問診票で「20才の体重から10kg以上増加している」という項目があるのは、こういった可能性を考慮してのことだ。
体重計の数字にとらわれすぎない
前述したように、BMIの数値は身長と体重から導かれる。「肥満」を改善するためには体重を減らすことがカギを握るわけだが、体重計に表示される数字に縛られすぎるのは危険だ。増田さんが話す。
「体重だけを見てダイエットすることはおすすめしません。一般のかたが食事制限などをして体重が減ったとしても、筋肉や骨が減って、脂肪は残っていることが多いからです。最近の若い女性には、体重やBMI値は低いけれど、体脂肪率は高い『隠れ肥満』が増えています。筋肉は脂肪より重いので、きちんと脂肪を減らして筋肉がつけば、見た目はすっきりしても、体重が重くなることもあるんです。
また、BMIは医療の指針として重要な数値ではありますが、身長が縮んだり、筋肉量が減少する高齢者においては、あまり意味を持ちません」
最近は家庭用の体重計でも簡単に体脂肪率やBMIを表示することができるが、体重が1kg変わっただけで「肥満1度」から「普通体重」となることや、市販の体重計は機種によって体脂肪率の測定方法が異なるため、誤差があり得ることを覚えておきたい。
◆体重計は1日2回、1週間単位で体重管理を
田中さんは「体重計は小数点2桁まで測れるデジタルのものを選び、必ず1日2回乗るようにした方がいい」と指摘する。
「朝起きてすぐは水分が失われていて軽かったり、食後は重くなったり、体重は簡単に変動します。きちんと記録して1週間単位で管理すれば、『飲み会の日』とか『便秘だった日』など、数値から行動や体調が読み取れるようになります」
体重計で気まぐれに測った数字を見て一喜一憂するのは逆効果になりかねない。
※女性セブン2020年10月22日号
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