4月9日より公開中の映画『バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~』。田口トモロヲ(63才)、松重豊(58才)、光石研(59才)、遠藤憲一(59才)ら日本のエンタメ界を支える4人が主役を務める作品で、彼らを筆頭に、若手からベテランまで数々の名優が大集結しています。
暗くなりがちなコロナ禍のなか、たくさんの元気を与えてくれる作品です。映画や演劇に詳しいライターの折田侑駿さんが、映画の見どころを解説します。
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【見どころ1】人気ドラマシリーズが満を持して映画化
本作は、映画やテレビドラマを脇から支え、作品のクオリティを底上げする“バイプレイヤー(=脇役)”の存在にフォーカスしたもの。
主演の4人をはじめ、数多くの俳優たちが“本人役”で登場します。2017年にドラマ『バイプレイヤーズ 〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜』(テレビ東京系)が放送されると、俳優たちの“素顔”のような一面が垣間見える瞬間や、各話に登場する若手からベテランまでのゲスト俳優たちの組み合わせの妙が話題となり、たちまち人気作となりました。
その後、2018年にテレビシリーズ第2弾『バイプレイヤーズ 〜もしも名脇役がテレ東朝ドラで無人島生活したら〜』が、この2021年に第3弾『バイプレイヤーズ 〜名脇役の森の100日間〜』が放送され、ついに映画化。スクリーンでバイプレイヤーたちの奮闘ぶりを見られる日が来たのです。監督は、テレビシリーズでもお馴染みの松居大悟監督(35才)が務めています。
◆若手からベテランまで個性豊かな俳優陣の思惑が交錯
舞台は富士山の麓にある撮影所「バイプレウッド」。ここでは、民放各局の連続ドラマや映画など、いくつもの作品の座組が日々撮影をしており、常に100人を越える俳優で賑わっています。そんな中、自主制作映画の撮影に取り組んでいる濱田岳(32才)、柄本時生(31才)、菜々緒(32才)、高杉真宙(24才)、芳根京子(24才)ら若手俳優たち。
彼らが手がけるのは犬が主人公の『月のない夜の銀河鉄道』というもので、ラストに100人の俳優がSL(蒸気機関車)で祝杯をあげるという壮大な作品です。
ところが、肝心の犬がいなくなり、SLでの撮影ができない事態に。途方に暮れる彼らに、田口ら先輩俳優たちが救いの手を差し伸べます。一方、「バイプレウッド」に買収話が上がっていることが発覚。この場に集う個性豊かな俳優陣の、それぞれの思いと人間模様が交錯していくことになります。
このあらすじから分かるとおり、本作ではいくつものエピソードが交差して描かれます。そこから見えてくるのは、若手からベテランまで、「バイプレウッド」に集う人々の思惑。こう記してみると、複雑そうな、あるいはとっ散らかった物語が展開するものと思ってしまう方もいるのではないかと思います。
しかし、いつも作品や、作品を生み出す撮影所「バイプレウッド」のことを考えているバイプレイヤーたち。彼らの思いは一つなのであり、それが“まさか”の大団円へと繋がっていくことになるのです。
【見どころ2】100人を超える名優が“本人役”で登場する
本作から得られる喜びの一つが、若手からベテランまで、やはり日本が誇る名優たちを一度に見られるということです。タイトルから分かるように、本作には総勢100人にも及ぶ俳優たちが出演しています。それもそのほとんどが、本人役としてです。
田口、松重、光石、遠藤ら4人は、有村架純(28才)が主演のネット配信連続ドラマの撮影に参加しており、菜々緒が敬愛する天海祐希(53才)は「バイプレウッド」のみんなのために炊き出しをしながら、買収問題に気を揉んでいます。そして、濱田たちが手がける映画で重要な役どころを担う存在として役所広司(65才)が配されています。
◆「後世に残る一風変わった作品」
もちろん、本作に顔を見せるのは先に挙げた俳優たちだけではありません。何せ、100人にも及ぶ役者が「バイプレウッド」に集結しているのです。劇中で描かれる、地方銀行の合併をめぐるドラマ『大合併』には、向井理(39才)や大倉孝二(46才)が参加し、観月ありさ(44才)主演の『ドクターZ』には滝藤賢一(44才)らが出演。
学園モノ『CTO~COOL TEACHER ONI to TSUKA~』は長谷川京子(42才)とりょう(48才)のダブル主演作で、サスペンスドラマ『わたしの番です』には佐々木希(33才)や田中要次(57才)が登場します。さらに、教育番組『しばいであそぼ』では高畑淳子(66才)と本田博太郎(70才)が子役相手に厳しい演技指導をし、大河ドラマ『宮本武蔵』の撮影では北村一輝(51才)が声を張り上げています。
こんなにも大勢の俳優を一度にスクリーンで見られる機会は、そうないでしょう。一瞬しか出てこなかったり、セリフというセリフが無かったりもするので、大好きな俳優が登場する瞬間を見逃さないよう注意が必要です。個人的には、エンドロールになってようやく出演していることに気付いた俳優がいました。
本作は、後世に残る一風変わった作品だと思います。筆者は“俳優ファン”を自認しており、30年前、50年前の映画に出演していた俳優を名画座で見ることが楽しみの一つなのですが、この作品が30年後、50年後、名画座で上映されること日が来ることが今から楽しみでなりません。