電気を使って調理する、電気圧力鍋。火を使わず蒸気の排気も安全設計なため、火事や焦げつき、やけどなどの心配がなく、「時間をかけずおいしい煮込み料理などができる」と注目が高まっています。最近では、レシピのバラエティーが豊富なものや機能面が魅力的な電気圧力鍋が続々登場。その中で、家電ライターの田中真紀子さんが注目しているのが、4月に発売されたティファールの『ラクラ・クッカー プラス コンパクト電気圧力鍋』です。
圧力調理から低温調理、炊飯、発酵などがマルチに使える
『ラクラ・クッカー プラス コンパクト』の容量は3Lで、料理は最大4人分、炊飯は4合まで対応しています。
使い方は、食材を投入し、ディスプレイに表示される8種類の調理モード、4種類の炊飯モード、4種類のレシピモードと、計16種類からボタンを選択。その後、メニューによっては必要に応じてかき混ぜるなどの作業をします。
16種類の内容は、煮込み料理がおいしくなる「圧力調理」の他、野菜の栄養や旨みを逃さない「無水調理」、時間がある時に使いたい「低温調理」、さらにはヨーグルトや味噌などを作れる「発酵」、パン生地作りに役立つ「ベイク」、もち米まで作れる「炊飯」、「蒸す」など料理好きにはうれしいモードがついています。
調理完了後は24時間まで保温機能までついているので、温め直す手間も省けます。
さて、この1台16役の『ラクラ・クッカー プラス コンパクト』は、どんな人に向いているのでしょうか?
料理初心者より、いろんな料理を楽しみたい人におすすめ
「ティファールの電気圧力鍋といえば、全自動に近い『クックフォーミー』シリーズもあり、私も日常的に愛用しています。『クックフォーミー』シリーズは本体やアプリに表示された材料を、手順に従って下ごしらえしたら、あとは圧力をかけるだけでおいしく調理してくれるので、料理初心者向けです。
一方、今回紹介する『ラクラ・クッカー プラス コンパクト』は、自分で調理モードや調理時間を押して使う“マニュアル調理”がメイン。どちらかといえば、レシピのレパートリーが多い人が、1台で多種多様な調理ができるところにメリットを感じるのではないでしょうか。レシピ集もありますが、使い方をマスターしたら、自分なりの使い方に進化させていけます。もちろん、調理中に他の作業を進めたい人にもおすすめです」(田中さん・以下同)
では、使用感など5つの視点からレビューしてもらいましょう。
【使用感】煮込み料理のおいしさは間違いなし!
短時間でおいしい料理ができるのが本製品のウリ。
「例えばビーフストロガノフは材料投入後、予熱を除き調理時間が10分。基本的な煮込み料理でも、圧力をかけるだけで完成するので、時短でおいしくできます。また、表面を炒めてから圧力をかけて加熱、圧力をかけて加熱してから、材料を追加して煮る、といったリレー調理ができるのも特徴。ふたが完全に開くので、炒めたりかき混ぜたりしやすいのは助かります」
予約調理もOK。その時間は最大12時間も!
「ただし、注意点もあります。一部メーカー製品は予約後すぐに調理を始めて腐らない温度帯で保温していくのに対し、本製品は予約時間に調理を始めるため、夏場や生モノには適しません。夏場などは、調理完了後24時間は自動で保温してくれるので、先に作っておいたほうが安心でしょう」
特筆すべきは、従来品にはなかった「発酵」と「ベイク」機能、つまりパンが焼ける機能などが加わった点です。一般的なホームベーカリーとの違いは?
「パン作りの過程で必要な『発酵』と『ベイク』は、本製品では機能が分かれているため、ホームベーカリーのように、“材料投入後は一切ほったらしにしてもパンが焼けている”という期待はできません。生地を手で練ったあと、本製品で一次発酵と二次発酵をさせ、自分の手で成形したら、今度はまた本製品でベイク…といったように、手間はかかります。発酵は時間がかかりますし、いつも失敗してしまう人や、オーブンで焼く手間を省きたい人にはおすすめの機能です」
では、ボタン操作のしやすさはいかがでしょうか。
「液晶の表示自体は大きくて見やすいですが、“1台16役”なだけにボタンが多く、調理モードの文字は小さいので、機械が苦手な人は希望の設定にたどり着くまで、少し戸惑ったり手間がかかったりする印象も。使う調理モードが決まってくればおのずと慣れてくると思いますので、それまで根気よく使いこなす必要があります」
【手軽さ】置き場所に困らないコンパクトさ、お手入れのしやすさは◎
まず、サイズは幅26cm×長さ28.5cm×高さ28.3cmととてもコンパクトで、狭いキッチンでも置く場所に困りません。
調理の手軽さでいえば、次の点に注意。
「料理によっては、自分の手で炒めるなど作業が必要になるため、高価格帯の電気調理鍋のように“材料を切ったらあとはお任せ”をイメージすると、少し面倒に感じることも多いかもしれません。
本製品のメリットは、同じ鍋でさまざまなメニューが作れて、加熱中は少なくとも目を離して他の調理ができる点です。前述のように、料理初心者よりは、料理が好きでいろんなものを作ってみたい人にフィットするかもしれません」
調理後の排気や、お手入れのしやすさは高得点でした。
「ボタンひとつで蒸気を排気できるのはとってもラク。また、ふたが完全に取れ、焦げ付きにくいフッ素樹脂加工の素材なのも洗いやすくて助かります」
【時短】調理時間が短縮され、温め直しの時間はなくなる
白米の炊飯は8分、無水調理のビーフストロガノフは10分(予熱や材料を切る時間、蒸らし時間などは含めず)。「調理時間は確実に時短になる」と、田中さんは断言します。
「調理時間だけでなく、調理前後の予熱と排気時間まで短縮されるのは本製品ならでは。電気圧力鍋の中には、火力が弱いため予熱に時間がかかるものや、圧力調理後、蒸気が自動で排出されるのを待たなければならないものなど、実際は時間がかかるものも少なくありません。一方、本製品は火力が強いため予熱時間が短く、蒸気も排出ボタンを押して排出するので時短になります」
もちろん、電気圧力鍋が調理をしている最中は両手が空くため、汁物や他の副菜を作るなど、他の作業ができます。
また、保温機能がついていることから、温め直す手間もありません。帰宅時間がバラバラなご家庭の場合、帰ってくるたび温め直すという手間がないだけでラクになるでしょう。
【コスパ】煮込み料理からパン焼き、炊飯など多様な機能がある点でコスパ高し
価格は税込で3万250円。最近は1万円台の電気圧力鍋も増えていますが、このお値段は妥当でしょうか?
「1万円台の電気圧力鍋はお安いぶん、加熱力が弱いことも多く、時間がかかってしまうことも。また、これだけしっかり炒めものができる電気圧力鍋は少ないです。その点、本製品は1台16役というだけあって、多機能で高性能だと感じます」
パン焼きや炊飯、ヨーグルトなどの発酵食品が作れる機能もあることを思えば、ヨーグルトメーカーなどを買わずに済むため、お得といえるでしょう。
【意外性】コンパクトながら、発酵などのユニークな機能が付加した多機能さ
意外性は、コンパクトでありながら、これまでの電気圧力鍋にはあまりなかった発酵機能などが加わったことです。
「前述のようにホームベーカリーのような手軽さはないものの、子供がいるご家庭では一緒にパンやピザ生地を作るときに失敗が少なく作れる点で、チャレンジしやすいのではないでしょうか」
【DATA】
ティファール『ラクラ・クッカー プラス コンパクト電気圧力鍋』
販売価格:3万250円(税込)
販売場所:家電量販店、楽天市場やAmazonなどのECサイト、ティファール公式オンラインショップほか
https://www.t-fal.co.jp/sp/products/pressurecookers/epc/manualtype/lakulacooker_plus/
教えてくれたのは:家電ライター・田中真紀子さん
白物家電・美容家電を専門とするライター。雑誌やウェブなどの多くのメディアで、新製品を始めさまざまな家電についてレビューを執筆している。ブログ(https://ameblo.jp/makiko-tanaka89/)
取材・文/桜田容子
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