鏡をふと見たときに、なんだか髪が薄くなったかもと思ったこと、ありませんか?
薄毛は見た目の印象も老けてしまうもの。できれば若い頃のように、イキイキとした髪を取り戻したいですよね。「頭皮と肌の専門店~希翠(きっすい)~」の店舗責任者で、毛髪診断士の田邊未奈美さんに薄毛や抜け毛、細毛のケアの方法を聞いてみました。知ってそうで知らない意外な“常識”がけっこうありました。
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薄毛を防ぐためのシャンプーのやり方とコツ
薄毛の原因は主に遺伝やストレスといわれ、他にも病気や生活習慣など脱毛の原因はさまざまです。円形脱毛症などメカニズムが解明されていないものもあり、最近はAGA(男性型脱毛症)の治療の研究が進んできましたが、まだ完全な治療薬はできていません。
つまり、症例として少しずつ出てきただけで、すべての薄毛や脱毛のはっきりとした原因はまだ明かされていないんです。けれど、ヘアケアやシャンプーの方法、選び方によって、薄毛につながっている可能性があります。
まずはシャンプーの仕方から見直しを
ヘアケアは、自己流になりがちなものです。その理由としては、人が髪をケアしているところを見る機会が少ないことがあげられます。子供の頃からなんとなくやっていることを、なんとなく続けている人が実は多いんです。
人によっては、ケアをすればするほど我流になっていて、自分の髪の毛にはこれがいいと思いこんでしまっていることもあります。そこで、まずはシャンプーの方法の根本から見直してみましょう。
シャンプーは髪の毛を洗うものと思っている人が多いですが、本当は地肌を洗うものです。洗うときに髪にフィーチャーしてしまうと、求めている効果を得られないんです。
正しいシャンプーの方法は?
まず、髪は摩擦に弱いので、摩擦をかけすぎないように洗うのがコツです。それと、大前提として、爪を使うのはNG。指の腹を使って、髪ではなく地肌を洗ってくださいね。
摩擦を減らすために、泡立ちをよくしてからシャンプーをスタートしましょう。そうすれば、泡がクッションになって、洗うときも摩擦がかかりにくくなります。同じシャンプーでも洗い方を変えるだけで、髪がきしまなくなることもありますよ。
髪に優しいシャンプーの選び方Q&A
さらに、シャンプーの仕方だけでなく、シャンプーの選び方も見直してみましょう。
ノンシリコンシャンプーは本当にいい?
薄毛の人は髪の毛自体がナイーブになっていることが多いのですが、そんなかたには、健康的な頭皮に導いてくれる効果があるアミノ酸を配合しているノンシリコンシャンプーがおすすめです。洗いあがりもしっとりとして、頭皮にやさしいですよ。
とはいえ、ちゃんとした成分でできているシャンプーは値がはりますし、慣れているシャンプーをいきなり変えるのは抵抗があるという場合は、例えば今使っているものを使用しながら、ちょっと高価なアミノ酸入りのノンシリコンシャンプーを週に2~3回取り入れてみるのがおすすめです。「今日はご褒美に高いシャンプーを」と、いいものをプラスしてみる感覚で始めてみるといいですよ。
シャンプー選びで気をつけるべきことは、洗っていて髪が引っかかったり、洗い心地がよくないと感じたりするものは、避けた方がいいということです。髪にいい成分で作られているノンシリコンシャンプーとはいえ、洗い上がりに個人差はあります。
手触りが悪かったり、パサつきや髪の広がりが気になったりすると、いくら成分がよくても気持ち的にストレスが溜まってしまいますよね。そういったものを無理して使うよりも、自分に合うものを探して続けるのがいいでしょう。
シャンプーは美容室の専売品を買うべき?
美容室の専売品や専門店で扱っているシャンプーと市販のものとでは、1回の使用での違いはそこまでありませんが、長期的に使っていると歴然とした差が出てくると感じています。
美容室の専売品や専門店で扱うものは、髪の毛への摩擦のかかりかたが違いますし、使っているうちに頭皮環境が変わり、髪も生え変わりながら質がよくなることが多いです。10年も使うとカラーやパーマの持ち、ハリ・コシ感などに大きな差が出るでしょう。
市販のシャンプーを長期的に使い続けることが、細毛やうねりなどの原因になる場合があります。未来のことを考えるならば、少し高価でも、美容室の専売品や専門店の商品を検討してみてはいかがでしょうか。
「エイジング向け」シャンプーに効果はある?
市販のシャンプーの「エイジング向け」のものは、一般的なものと比べて、そこまで大きな差がないものが多いです。美容液成分の配合率は上がっているかもしれませんが、根本的なベースは差がないように思います。少しでも配合されていれば、「〇〇成分配合」と表記ができてしまう点も落とし穴です!
選ぶときはシャンプーの成分表に“加水分解”と書いてある商品をおすすめします。これは、たんぱく質が髪に入りやすいように細かく分解されているものです。「加水分解コラーゲン」や「加水分解ケラチン」「加水分解シルク」といった成分がはいったシャンプーやトリートメントを使えば使うほど髪を強くし、髪のハリ、コシが保ちやすくなりますよ。
成分表は多い順に表記されているので、上の方に書いてあるものだとより効果的。また、植物成分も配合されていると頭皮環境を整えてくれる効果も期待できますので、植物成分が配合されているものもおすすめです。
髪をよく結んでいる人は頭皮ダメージに注意
日頃の習慣も、薄毛や細毛、抜け毛につながることがあります。頻繁に髪を結ぶ人、髪を結んでいる時間が長い人は、要注意です。
実際に、夜会巻きをずっとしているかたは、前側から髪が退行してしまったり、かんざしがずっとあたっている場所だけ抜けてしまったりしている人もいます。頭皮に過度なストレスを与えることで、悪い影響を及ぼすことがあります。
なぜ髪を結ぶとダメージがある?
頭皮はもともと筋肉が少ない場所です。前頭筋という額の筋肉と、後頭筋という後部側、さらに耳の上に側頭筋がありますが、そのほかの頭皮の主な部分は筋肉ではなく筋膜なので、やわらかさが保ちにくいんです。
加齢やストレス、重力などによって、まわりの筋肉が引っ張られることで頭皮が硬くなると血流が悪化します。また、筋肉が圧迫されることで、顔のたるみやくすみにもつながります。
ケアの方法はある?
髪を結ぶことが多いかたは、シャンプーをするときに指を使って頭皮のマッサージを行うと、負担が軽減されますよ。
マッサージは、指で頭皮を上下に揺らし、緩めるように行います。力を入れると、首や肩を痛めてしまうことがあるので、地肌に指を密着させ優しく動かすようにするのがコツです。
◆教えてくれたのは:毛髪診断士・田邊未奈美さん
美容師、介護福祉士、美容福祉士、毛髪診断士の資格を所持。美容福祉士の資格を取れる学校を卒業し、福祉施設や介護の仕事をした後、美容の世界へ。そこでシャンプーやマッサージで喜んでもらえることに一番の幸せを感じ、その技術を追求したいとエステやヘッドスパ専門店での経験を積む。その後、さらに専門性を求めて「希翠」(https://kissui.tokyo/)へ入店。現在は店舗責任者を務める。女性誌やWEBメディアで頭皮ケアの記事の監修などを数多く手がける。