健康・医療

新型コロナ急拡大!岡田晴恵さんが緊急解説|自分や家族が感染したら…「自宅療養マニュアル」

全国の1日の感染者数が連日、1万人を超え、政府は東京都をはじめ感染急増地域での入院について、重症患者、中等症患者などで重症化リスクのある人を対象とする新たな方針を示しました。これで、重症患者やそのリスクのある人以外は基本的に自宅療養をすることになります。

岡田晴恵さん
「自宅療養」について解説した岡田晴恵さん(Ph/五十嵐美弥)
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白鴎大学教授の岡田晴恵さんはこう語ります。

「これまでは、保健所が肺の状態を示す血中酸素濃度が96%未満、38度以上の発熱などの症状がある中等症以上の場合、年齢も加味した上で保健所が入院などの可否を決めていましたが、それが感染者の急増で医療が足りなくなり、さらに入院が難しくなったといえます。

今後、さらに医療が逼迫すれば、入院が本来なら必要な人でも入院できず、自宅で療養しなければならないケースがますます増えてくることが予想されます。

新型コロナウイルス感染症は家庭内感染のリスクも高いため、自宅療養では家族に感染させない対策が重要です。看護のやり方も、より徹底した感染予防策が必要です」

自分や家族が感染したとき、具体的に自宅でどのように対策や看護をすればいいのでしょうか。岡田さんの著書『新型コロナ自宅療養完全マニュアル』(実業之日本社)から今、必要な情報を一部抜粋しながら紹介します。

* * *

初期対応こそウイルス対策の一番の肝

今、デルタ株という感染力の強いウイルスが主流となりつつあります。従来の新型コロナウイルスは1人の感染者から平均1.4〜3.5人くらいにうつしていました。しかし、デルタ株ウイルスは平均5〜9人に感染する。ですから、まずは換気です。換気が不十分だと飛沫から水分が蒸発してマイクロ飛沫となって空気中を漂います。その飛沫を吸い込むとエアゾロ感染もあります。空気を完全に入れ替えることが大切です。

消毒作業をする女性
初期対応が何より大事だという(Ph/Getty Images)
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ウイルスの消毒は、最初の対処が不十分だと家中に広がってしまいます。「初期対応こそが家庭内感染防止に大きくつながる」ということを意識し、丁寧な対処が必要です。ウイルスが付着した手指を介して、椅子・ソファ・リモコンなど家庭内のあらゆる場所に知らない間に触ることで広がっていきます。

そのため、感染者が出た時点で感染者が触れた場所やものはすべて消毒や洗濯を行います。また、家中の換気も励行しましょう。見落としがちなのが、リモコンやクッション、水道の蛇口、トイレの流水レバーや便器のフタ、冷蔵庫の取っ手、ガスのつまみ、電気のスイッチ、椅子の背もたれやひじ置きなどの「日常生活で無意識に手にする場所」です。

日常生活の動線を思い浮かべて、消毒漏れがないように気を付けましょう。

市販薬で対症療法も

自宅療養中、緊急な事態(症状の急変や悪化など・症状の緊急性や病気によっては救急車を呼ぶことも)でないときは、ひとまず対症療法を行ってみてください。症状がつらい場合には、市販の風邪薬を飲むのも症状を和らげられます。そして、安静を保って静養します。

海外では一時期避けたい薬として、「イブプロフェン」(消炎鎮痛剤)が取り上げられましたが、現在の日本ではそのようなことは言われていません。インフルエンザでは注意が必要で、サルチル酸系医薬品などは日本で小児に使用しないこととなっています。インフルエンザの流行時期では、アセトアミノフェン(解熱鎮痛剤)が配合されている風邪薬を選ぶなど、薬剤師に相談してください。

薬局に薬が並んでいる
市販の風邪薬で症状を和らげる方法も(Ph/AFLO)
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薬の飲み合わせにも注意が必要です。風邪薬は抗ウイルス薬ではなく、風邪の症状を抑えて、体力の消耗を和らげて睡眠を確保して回復につなげるものです。葛根湯や麻黄湯などの漢方薬も症状緩和の作用が期待できます。しかし、新型コロナウイルス感染症では、2割の方が発症後7~10日くらいに肺炎が憎悪します。

また、血栓ができることで脳梗塞や心筋梗塞、また肺塞栓症などでの急変も報告されています。油断してはいけない感染症です。ですので、宿泊・自宅療養の患者の病状悪化や急変に対して、入院ベッドが速やかに確保できるのか否かが、非常に重要な問題となります。

かかりつけ医が探せるのか? 保健所であるのか? その責任の所在が明確になっている必要があります。居住地の自治体では自宅療養について、急変・悪化の事態に対してどのような医療確保の流れかを確認しておくことが必要です。入院の基準が2021年8月2日、政府の方針で厳格化されています。

看病をする際には服装にも注意が必要!

家庭内感染を防ぐためにも、看病をする人は感染に気を付けた服装をする必要があります。新型コロナウイルス感染症は、接触感染・飛沫感染・エアゾル感染で感染すると考えられているので、それぞれに対応した準備をします。

まずは、接触感染を防ぐための手袋をはめます。これはビニール製のもので、使い捨てできるタイプがいいでしょう。続いて、飛沫・エアゾル感染を防ぐために、マスク・ゴーグルを着用し、ビニールのカッパのような全身を覆うようなものを着ます。

ゴーグルはメガネで代用も。部屋での看病後にも、接触した手袋やビニールのカッパ、ゴーグルなどの取り扱いには注意。マスクや手袋はきちんと処理し、ゴーグルやビニールのカッパは消毒、または洗浄して、手は必ず洗いましょう。もしカッパがなければビニール袋を切って使用し、その後捨てましょう。

自宅療養で必要なものとは?

もし感染してしまったら、買い物に出ることはできません。ここでは、自宅療養をしなければならない場合に、どのようなものが必要になるのかについて考えます。

まず、食料品です。食欲がなくても食べられて、必要なカロリーが摂取できるものが必要です。レトルトのスープやおかゆ、ゼリー飲料、チョコレートなどもあったらよいでしょう。スポーツ飲料も必要です。また、少し食欲が回復したときのために、インスタント食品や缶詰なども用意します。

マスク
マスク以外にも必要なものが多い(Ph/Getty Images)
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次に、二次感染防止のためのマスクやゴーグル、ビニール袋。また、軽症で自宅療養するには、体温計はもちろん症状の重症度を分ける酸素飽和度を測る、パルスオキシメーターを要しいておいた方がよいでしょう。

その他は、普段使用している風邪薬、1日に1人最低2リットルを推定した飲料水、ティッシュペーパー、トイレットペーパーなどが必要です。普段より消費量が多いことも考えておきましょう。また、地震対策の延長としても用意しておくと便利です。

自宅療養備蓄品リスト

【日用品】
ティッシュペーパー、トイレットペーパー、生理用品、石鹸、アルコール除菌スプレー、塩素系漂白剤、使い捨てマスク、使い捨て手袋、レインコート、ビニール袋(ゴミ袋サイズも)、体温計、ゴーグル(もしくはメガネ)

【食料品】
主食(お米やうどん、シリアルなど食べやすいもの)、菓子類(特にチョコレート)、ゼリー状栄養補助食品、レトルト食品・インスタント食品、缶詰(果物など)、冷凍食品(火にかけるだけのうどんなど便利です)、経口補水液、スポーツ飲料

【薬剤】
総合感冒薬、医薬、解熱剤、消毒剤、水まくら、冷却ジェルシート、うがい薬、おくすり手帳、常用薬(もしあれば)

【その他】
下着、パジャマ、タオル、シーツ、飲料水、多少の現金、パルスオキシメーター

ケース別看護方法の具体例

感染者が増加してくると、すべての感染者を入院させることはできません。重症で入院による治療が必要な人、または重症化するリスクの高い人のための病床確保が必要になります。特に政府の方針が転換され、入院の基準が厳しくなっています。

感染者が急増する地域では重症患者や重症化リスクの高い患者以外は自宅療養を基本とするとなりました。そのため、政府の基準による「軽症」はもちろん「中等症」でも酸素投与が必要な方や重症化リスクのある方、以外は自宅で療養ということになってしまいました。

ひとり暮らしのケース

ひとり暮らしのサラリーマンが自宅療養をする場合について考えてみます。

【例1】
・29歳男性
・新型コロナウイルス感染症「陽性」
・ひとり暮らし、かつ軽症のため自宅療養対象者
・熱は38℃程度が出ている。発症して2日目

『新型コロナ自宅療養完全マニュアル』
『新型コロナ自宅療養完全マニュアル』(実業之日本社)より
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《ポイント1》
窓は少し開けて、換気をしましょう。数分程度の換気を1時間に2回程度、完全に空気を入れ替えます。2方向に窓があれば両方開けます。

《ポイント2》
高熱のときには、両脇の下など太い血管のところにタオルでくるんだ保冷剤などで冷やしましょう。首の後や足の付け根なども効果的です。

《ポイント3》
空気が感染しないように加湿をします。加湿器がなければバスタオルを濡らして干しておきましょう。

《ポイント4》
寒気がして、これから熱が上がるかもしれないため、服を着込んでいます。熱が上がり切ったらまた服を脱いで体温調整します。

《ポイント5》
自分自身で看病をしなければならないため、枕もとに必要なものはすべて置いておきます。飲料水や体温計、パルスオキシメーター、ゼリー飲料、チョコレート、タオルなどです。取りやすい位置に置きましょう。

家庭と同居しているケース

家族と同居している場合は、まず、看病はひとりで行いましょう。看病者は感染しやすいため、重症化リスクが高い妊婦や高齢者、基礎疾患のある人は避けます。また、看病の後は着ていたものを必ず洗濯をして、手も石鹸でよく洗うようにします。

感染者は基本的に個室で過ごし、他の家族との接触はできる限り控えるようにします。お風呂やトイレなどを共用する場合は清掃と換気を充分に行い、お風呂は感染者が最後に入るようにしましょう。また、感染者が触れたものは必ず消毒をしてください。

【例2】
・陽性者は5歳男児
・看病者は母(妊娠可能性・基礎疾患ともになし)のみ
・その他には父、長女(3歳)が同居している
・熱37.5℃程度出ており、咳がひどい。発症して4日目

『新型コロナ自宅療養完全マニュアル』
『新型コロナ自宅療養完全マニュアル』(実業之日本社)
写真6枚

《ポイント1》
窓の換気は忘れずに行います。1時間に2回以上、数分間行います。看病者がいる場合には特に気を遣って換気してください。

《ポイント2》
水分補給はこまめに取らせましょう。高い熱が続く場合は脱水症状にならないように、咳がひどい場合は喉を潤すことが大事です。

《ポイント3》
看病者は必ずビニールのカッパ、マスクをしてください。飛沫感染を防ぐためにも、できればメガネ、もしくはゴーグルも着けてください。

《ポイント4》
看病者が出入りした後のドアの取っ手は消毒しましょう。近くに消毒用アルコールを置いておくのも手です。

《ポイント5》
看病者以外の家族は感染者の居室には入らないでください。感染が広がってしまう可能性があります。

《ポイント6》
もい加湿器があれば加湿器をつけましょう。湿度は50~60%くらいの間で調節してください。

→『新型コロナ自宅療養完全マニュアル』(全文無料公開中)

◆教えてくれたのは:白鴎大学教育学部教授・岡田晴恵さん

医学博士。専門は、感染免疫学、公衆衛生学。共立薬科大学(現慶應義塾大学薬学部)大学院修士課程修了。順天堂大学大学院医学研究科博士課程中退。アレクサンダー・フォン・フンボルト奨励研究員としてドイツ・マールブルク大学医学部ウイルス学研究所に留学、国立感染症研究所研究員、日本経団連21世紀政策研究所シニア・アソシエイトなどを経て、現職。主な著書に『知っておきたい感染症』(ちくま新書)などがある。https://hakuoh.jp/pedagogy/119

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