カサカサするものから、ジュクジュクしたものまでさまざまなタイプがある湿疹。
そんな湿疹に悩んでいる人も、タイプに応じた漢方薬を用いることで、湿疹の予防や緩和が期待できます。湿疹が起こる原因と自分の湿疹タイプのチェック方法を、薬剤師の道川佳苗さんが教えてくれました。
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湿疹の症状と原因
湿疹とは、外的・内的刺激により主に皮膚の一番表面である表皮に起こる炎症です。皮膚が赤く腫れたり、小さなブツブツができたり、カサカサしたり、ただれたりといった、かゆみを伴うさまざまな皮疹(ひしん)のことをいいます。アトピー性皮膚炎などは、代表的な疾患です。
湿疹の原因
湿疹の原因は、大きく分けて内的なものと外的なものの2種類があります。
<外的な原因>
・紫外線
・ほこり
・細菌やウイルス
・汗
などによる刺激
<内的な原因>
・アレルギー
・皮脂分泌異常
・発汗異常
など、もともと持っている個人の体質によるもの
外的な原因は、刺激となる紫外線やほこりなどを防ぐことで対処できます。一方、内的な原因を改善するためには、生活習慣を整えることが大切です。いずれも、漢方薬を用いることで体質改善につなげられます。
漢方医学的にみる湿疹の原因
<漢方的にみる湿疹の原因>
・血虚(けっきょ)…全身に栄養や潤いを運ぶ「血(けつ)」の不足によるもの
・血熱(けつねつ)…「血」が熱をもった状態で、炎症を起こすもの
・湿熱(しつねつ)…体の中に湿気が停滞することにより、熱が生まれて炎症を起こすもの
漢方薬は、原因がわからない不調や繰り返す症状を根本から改善することを得意としています。そのため、「血」の不足や体の中に湿気や熱が余分にたまることによって起こる湿疹にも、医薬品の漢方薬なら体の内側からアプローチが可能です。
湿疹タイプのチェックリスト
漢方薬は症状のタイプに合ったものを服用することで、より効果が現れやすくなります。これから紹介するチェックリストで、あなたの湿疹タイプを確認してみましょう。
血虚タイプ
以下のチェック項目に当てはまる人は、肌の栄養や潤いが低下した「血虚タイプ」の可能性があります。
・皮膚が乾燥してカサカサする
・かゆみが強い
・湿疹の分泌物は少ない
・皮膚が厚くなってゴワゴワしている
「血」には、全身に栄養分や水分を運ぶ役割があります。「血」が不足した「血虚」状態になると栄養や水分が少なくなり、肌が乾燥しやすくなります。それに伴い、バリア機能も低下するため、少ない刺激でも湿疹が起こることがあります。
血熱タイプ
以下のチェック項目に当てはまる人は、「血熱タイプ」の可能性があります。
・湿疹が痛がゆい
・皮膚が赤く、かゆみが強い
・口が渇き、尿の色も濃い
・不眠、イライラ、目の充血などがある
「血熱」とは、「血」が熱を持った状態のことです。これは、強いストレスから生じる場合と、「陰虚(いんきょ)」という水分の足りない状態によって、体を適当に冷やせないことから生じる場合があります。皮膚にこもった熱が湿疹となって現れます。
血熱と湿熱混合タイプ
以下のチェック項目に当てはまる人は、「血熱と湿熱混合タイプ」の可能性があります。
・湿疹がジュクジュクしている
・湿疹が熱を持っている
・夏に症状が悪化する
・胃もたれしやすく、軟便や下痢がある
・喉が渇く
血が熱を持った「血熱」の状態と、湿気が体の中に停滞することにより熱が生まれる「湿熱」の状態が混合した状態で、ジュクジュクとした湿疹が出やすくなります。
タイプ別、湿疹の改善に役立つ漢方薬3つ
湿疹に対する漢方の治療では、皮膚症状と体力や体質、全身の病態などに応じて漢方薬が選ばれます。カサカサしているか、分泌物が多くてジュクジュクしているか、化膿しているかなど、皮膚の状態に着目します。
血虚タイプにおすすめの漢方薬「当帰飲子」
当帰飲子(とうきいんし)は、「血」を補う漢方薬です。補血作用により潤いが与えられるため、乾燥やかゆみ、カサカサした慢性湿疹の改善に役立ちます。
血熱タイプにおすすめの漢方薬「黄連解毒湯」
黄連解毒湯(おうれんげどくとう)は、体にこもった余分な熱を冷まし、解毒する漢方薬です。そのため、皮膚に熱がこもって起こる血熱タイプの湿疹や皮膚炎、かゆみの改善が期待できます。
血熱と湿熱混合タイプにおすすめの漢方薬「消風散」
消風散(しょうふうさん)は、皮膚表面の熱を冷まし、水分の停滞を解消する漢方薬です。そのため、体に停滞した湿気が原因となっているジュクジュクして熱を持つ湿疹の改善に役立ちます。
タイプを見極めて漢方薬を湿疹改善の助けに
湿疹の原因には、外部からの刺激以外にも、全身を巡る血の栄養状態や、熱や湿気をうまく体外に発散できていない場合があります。湿疹に対する西洋医学での治療ではステロイド外用薬や保湿剤などで外側からアプローチしますが、体質改善も期待できる漢方薬による内側からのケアも取り入れることで、慢性化した湿疹の解消を目指すこともできます。
漢方薬は自分の体質やタイプに合ったものを選ぶことにより効果が発揮されやすくなるので、専門家に相談することをおすすめします。
教えてくれたのは:薬剤師・道川佳苗さん
みちかわ・かなえ。漢方薬・生薬認定薬剤師。調理師。薬膳アドバイザー。大学卒業後、薬局にて従事し服薬指導をする中、病気の予防、健康維持には食育が大切であると感じ、服部栄養専門学校に入学し卒業する。現在は、AI(人工知能)を活用した「オンライン個別相談」で、自宅まで個人にあった漢方を手頃な価格で届けてくれるサービスが好評の「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)などで、今までの経験を活かし、健康相談や薬膳や漢方に関する情報発信をしている。